「アンティーク時計は敷居が高そう」と思っている人に、ぜひ一度足を運んでほしい時計店があります。そのお店とは、川崎駅から徒歩7分の場所にお店を構えるスイートロード。お店のこだわりについて、「昔よく取材にきたことがある」と話す服飾ジャーナリストの倉野さんに解説していただきました。
ストリートファッションと機械式時計
久しぶりに川崎のスイートロードへ行ってきました。1990年代半ばから後半、「Boon」というストリート雑誌でライターとして書いていたとき、このお店には何度も取材に行きました。
当時は1970年代のカラーダイヤルのオメガ・シーマスターが話題だったが、今でも人気あるフライトマスターもこのお店は取り扱いが早かった気がする。あまり注目されていない時計を世に送り出していた感じだ。
当時は古着ブームということもあり、ストリートファッションの一部としての機械式時計という新しい分野を作ったのかもしれない。
店長の平野 拓生さん
川崎駅周辺も雰囲気がずいぶんと変わっていた・・・(笑)。迷いながらも無事に到着。以前の店内はゴチャゴチャした感じでびっくり箱的な印象だったが、照明も明るくなりスッキリとしていた。アンティークのライター(ジッポー、ロンソン、ダンヒル)やカレッジリング、ミリタリーリングは昔のままで、ちょっと嬉しかった。
昔も今も、価格は控えめ
当時から時計の値段は抑えていたが、今でも都内のアンティークショップに比べると安いと思う。値段が笑えるほど高騰してしまったロレックスだが、オイスターパーペチュアルはまだ30万円前後から買えるので有り難い。
世界的に超絶人気のロレックスのスポーツモデルも取り扱っているが、店頭に並ぶとすぐに売れてしまうという。弟分のチュードルのイカサブも人気が高いそうだ。
ロレックスも取り扱っているが、やはりスイートロードは創業間もないころから扱っているオメガ(カラーダイヤルではないオリジナルダイヤルのオメガ)が強い。シーマスターやコンステレーション、コスミックなどが充実している。このあたりは価格もリーズナブル。シーマスターのクロノグラフも頑張れば買える値段だ。
スピードマスターも揃っていて探している人にはおすすめだ。手巻きのスピマスは相場が上がっているためか、それなりの価格だが、それでもロレックスに比べたら良心的だ。
国産時計も充実
狙い目はセイコーやシチズン、オリエントなどの国産時計だ。高校生の時に買った、最初のアンティークウオッチが機械式のセイコーだったこともあり国産時計もじつは好きなのだ。余談だが、トンボ出版の国産時計の本も数冊持っている(笑)。数年前に合本して新しく出版されていたのね、知らなかった。スイートロードでもトンボ出版の本を売っていました。
1960年代後半の端正なセイコーも好きだが、オーバル型のちょっとデコラティブな文字盤のセイコー ワールドタイムも好きなのだ。海外のお客さんの中にはセイコーのダイバーを集めているコレクターも多いとか。有名なシチズンのツノクロノも取り扱っている。
グランドセイコーやキングセイコーなどの一部を除いて、国産時計は海外ブランドに比べて安いので、機械式時計の入門機としても国産時計はおすすめ。20代の若い人はもちろんだが、40代~50代で初めてアンティークウオッチを購入される方にもおすすめしたい。
オーナーの中村昌義さんの好みなのか、懐かしいラドーやテクノスがあったり、1970年代の匂いも残っていて、ボク的には好印象な品揃えだ。
スイートロードおすすめの3本を紹介
買い付けは年に数回海外(アメリカ、ドイツ、香港など)に行くとのこと。ちゃんとした業者から状態の良いものだけを買い付けている。
また、すべての商品をネットに載せているわけではないので、お店に足を運んで直接商品を見てほしい。今回は店長の平野 拓生さんに、充実したオメガの中からおすすめの3本を選んでもらった。
OMEGA Seamaster(シーマスター)
1958年製。裏にはまだシーホースマークはない。シルバーに近い白文字盤が美しく経年変化している。価格12万8000円(税込)
OMEGA Flightmaster(フライトマスター)前期型
自動巻き。1970年製。旅客機のパイロットのために開発されたモデル。曲面のガラス風防と24時間表記が特徴。価格47万8000円(税込)
OMEGA CONSTELLATION(コンステレーション)
自動巻き。オーバル型のケースが特徴。クロノメーター規格。時計デザイナーのジェラルダ・ジェンタのデザインとのこと。価格13万8000円(税込)
オメガを筆頭に、IWCや国産時計は充実。リーズナブルな価格のものも多いので、関東にお住いの人はぜひ立ち寄ってもらいたい。
ーおわりー
SWEET ROAD
1993年開店のアンティーク時計店。取り扱うのは1940〜70年代のアンティーク時計がメインだが、1980年前後(昭和最後期)までの腕時計を「アンティーク」として広く定義をして紹介している。人気のロレックスはもちろんのこと、オメガ・国産時計(セイコー、シチズン、オリエント、タカノ)に関しては日本一の在庫数を誇っている。
店内には時計だけではなく、クラシックライター(ヴィンテージZIPPO、ダンヒル、ロンソン...)やカレッジリング、アンティーククロック、さらにはヴィンテージのディスプレイ看板、ラジオなどさまざまなアンティーク雑貨を幅広く取り揃えている。インターネット販売にも力を入れており、ブログで新商品の紹介をしているほか、年代別に時計を見ることができる。手を出しやすい価格の時計が揃っているので、あまり知識がない人でもお店に足を運びやすい。
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ロレックスもパテック フィリップももちろんいい時計だが、それは単に値段が高いからだけではない――。
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終わりに
久しぶりのスイートロードの取材だった。初めて取材したのは本格的なロレックスブームが来る直前。店頭には10万円以下のオメガや、価格を控えたIWCなど、リーズナブルな価格のモデルがたくさん並んでいた。現在もロレックスなどの高額なモデルも取り扱っているが、国産時計やオメガが中心だ。そういう変わらないところはやはり嬉しい。店長もスタッフも明るくて親しみやすい。今度はプライベートで行ってみたい。