100年構造が変わらないアナログギア。コールマンランタンが時を超えて愛され続けるわけ

100年構造が変わらないアナログギア。コールマンランタンが時を超えて愛され続けるわけ_image

取材・文/伊藤 太成 写真/伊藤 太成 他

キャンプギアの代名詞ともいえるランタン。時にはキャンプの場を明るく照らす存在として。またある時には煌々と照らされる火から暖を取るための存在として、ランタンはキャンプに欠かせないツールの一つであるといえる。

今回はコールマンを中心としたヴィンテージギアを集め続け、「viblant」のオーナーを努める石角さんにランタンの魅力を語っていただいた。

コレクション・ダイバー【Collection Diver】とは、広大なモノ世界(ワールド)の奥深くに潜っていき、独自の愛をもってモノを採集する人間(ヒト)を指す。この連載は、モノに魅せられたダイバーたちをピックアップし、彼ら独自の味わいそして楽しみ方を語ってもらう。

アメリカで見つけたランタン。年季の入った見た目にグッときた。

MuuseoSquareイメージ

東京・東急線が走る二子玉川駅から歩いて5分程度、デザイナーズマンションの一角に「viblant」はある。

日の入りが気持ちいい店内に足を踏み入れ、まず目に入るのはコールマンをはじめとするヴィンテージランタン。見渡してみると、年代物のクーラーボックスやテーブルランプが一面に並べられていて、キャンプ好きなら思わず唸ってしまいそうだ。

MuuseoSquareイメージ

MuuseoSquareイメージ

MuuseoSquareイメージ

MuuseoSquareイメージ

「ちゃんとした道具を揃えてキャンプをするようになったのはそれなりの年齢になってからですが、子供の頃からとにかく冒険が好きだったんですよ。 小学生の頃、近所にある川の根本が気になって、源流を求めて自転車を走らせたら家まで帰れなくなったということもありました(笑)」

MuuseoSquareイメージ

関西弁を交えながらキャンプギアにハマったきっかけを話してくださったのは、viblantのオーナー、石角さん。中学生になると寝袋と自転車だけで西日本中を走り回ったり、高校生の時には一人でバリ島へ行ったそう。ランタンと出会ったのも、好奇心の赴くままアメリカを横断していた時のこと。

「ふらっと入ったヴィンテージショップで出会ったのがコールマンの200Aというモデルと228というモデルのランタンでした。それまでヴィンテージのキャンプギアはほとんど持ってなかったんです。年季の入り具合がかっこよかった」

歴史を感じさせるボディに惹かれて購入したランタンだが、使おうとすると少し問題があった。経年変化したボディに比例するように、中の部品は相応にメンテナンスを必要していたためだ。通常は修理店に持っていくか、放って置いてディスプレイとするところだが、石角さんはノウハウがなかったのにも関わらず、なんと自分でバラして修理してしまう。

「『あ、自分の手で直せるんや!』って一気にヴィンテージランタンにハマってしまいましたね(笑)ランタンには真鍮が使われていることが多いんですが、使い込んで真っ黒になった部品を、磨いてピカピカにするのが堪らない」

100年間構造が変わらない。だからこそ末永く使っていける。

コールマンランタンは、100年前から基本的に構造が変わっていないので、メンテナンスすれば今でも現役で使えるそう。「特に1980年代より前のものは、中のパーツがほぼ金属でできています。劣化してしまっても磨けば基本的に復活します」と石角さん。

例えば、50年ほど前のカメラや車といった機械を現代において維持するのは、簡単なことではない。だが、ランタンであれば50年前のモノであっても現役で使える状態のモノが多い。そのため、自分の年齢や家族の年齢に合わせた「バースデーランタン」を買う人も最近は増えている。

「ランタンの出番はキャンプの時が主でしょう。ただ、ランタンの誕生直後は家の明かりとして使われていたこともありましたし、時には軍用として使われていた時代もありました。そういうランタンも、まだ現役で使えますよ。長く使い続けられて、受け継いでいけるからこそ1個1個のランタンにストーリーが潜んでいる。そういった部分に自分が惹かれているのはあると思いますね」

コールマンの歴史はランプから始まった

今では世界各国で愛されるアウトドアギアを生産しているコールマン。実は、その歴史はランプから始まった。

1899年、ウィリアム・コフィン・コールマンは、アラバマ州のドラッグストアにてガソリン燃料で動作する「エフィシエント・ランプ」と出会う。トーマス・エジソンが白熱電灯を開発したのが1879年のこと。しかし、家庭に普及するにはまだはやく、1899年でも灯油ランプがアメリカでは一般的だった。

「夜も店を開けようとしている商売人に売れる」と確信したコールマンは、「エフィシエント・ランプ」の販売を開始。その後特許権を買い取り、貸しランプ業を行いながらランプの改良を重ねる。1903年にはコールマン・アーク・ランプを開発。コールマンブランドの歴史が始まることとなった。

コールマンランタン・コレクションの一部を紹介

200A

MuuseoSquareイメージ

ヴィンテージコールマンランタンの中で最も人気があるのが、「200A」だ。1950年代から80年台にかけて製造が続いたこのモデルは、可愛らしい丸みを帯びたスタイルが人気を博し、現代でも多くのキャンプギア愛好家に愛されている。赤色を発色するために使う薬品が世界的に使用禁止になり、以降緑タイプのものも生産されるようになったというエピソードも。

MuuseoSquareイメージ

MuuseoSquareイメージ

MuuseoSquareイメージ

年式によって変わるのは色だけではない。例えば、同じ200Aでも年式によって「コールマン」ロゴにも差異がみられる。年代によるブランディング戦略の違いを感じられるのも、ロングセラー製品ならではの特徴と言えるだろう。

228

MuuseoSquareイメージ

こちらの「228」はダブルマントル構造となっており、点火すれば強いあかりで照らしてくれる。またコールマンといえば、赤色や緑色が比較的ポピュラーと言えるが、茶色や水色、黄色のランタンも存在している。

シアーズOEMモデル

MuuseoSquareイメージ

アメリカの大手百貨店、「シアーズ」のOEMモデル。他のコールマンランタンにはない、独特な色合いを感じさせる。このシアーズOEMモデルのパーツが余り、288が誕生したという背景がある。

コールマンのものづくりへのこだわりを、受け継ぐ

ほぼ機構に変化がないランタンでも、時代を経て少しづつ変わってきている部分もある。例えばコールマンランタンは、80年代以降金属製だったパーツが樹脂に変わっていて、耐久性や質感が異なる。また、外箱のダンボールはシルクスクリーンを使ってイラストを印刷していたのを、現在はインクジェットプリントで転写している。

「今みるとシルクスクリーンのヤレた感じが非常にいい感じに見えてくるんです。もちろんインクジェットのほうがプリントは綺麗ですし、クオリティに差が出ず印刷できるのは確かですけど、経年変化はシルクスクリーンの方がありますね」

最後に、合理化や効率化で薄れてしまった「味わい」を継承していくことは非常に大切なことだと石角さんは語ってくれた。

「Viblantではランタンの修理を持ち込みで受けています。また、ヴィンテージのインクをつかったTシャツや、釉薬(うわぐすり)を塗って耐久性をあげた昔ながらのブタ型蚊取り線香を販売しています。長く愛されることによって生まれる味わいが、さらに愛着を沸かせる。100年変わらない姿で愛されるランタンを作った、コールマンさんはすごい人ですよ。その精神はずっと受け継いでいきたいですね」

ーおわりー

MuuseoSquareイメージ
File

viblant

東急線二子玉川駅より徒歩5分ほどのマンションにお店を構える、ヴィンテージランタンを中心としたアウトドアギアを扱うお店「viblant(ビブラント)」。ランタンに限らず、オリジナルTシャツの販売をしたり、キャンプイベントを開催したりと多方面からキャンプの楽しさを発信している。viblantで購入していないランタンでも、持ち込めば状態を見てもらえるメニューも。安心してヴィンテージランタンを購入できるお店だ。

公開日:2018年1月20日

更新日:2021年12月2日

Contributor Profile

File

伊藤 太成

湘南在住のフリーライター兼ディレクター。日々の仕事や生活を通して、様々なカルチャーの魅力を伝える活動を行っている。特に旧車やヴィンテージカルチャーを愛しており、学生時代から空冷フォルクスワーゲンを乗り継いでいる。現在の愛車は74年式のフォルクスワーゲン TYPEⅡ・ワーゲンバス

終わりに

伊藤 太成_image

キャンプ好きなら一度は通るであろうランタンの道。取材でお話を伺い、ランタンの魅力を改めて実感しました。自分自身もキャンプを愛する一人なので、ぜひ相棒となりうるランタンを探そうと改めて決意した次第です。

Read 0%