本日持ってきた「お気に入りの3足」。見せてください!
本日の対談に先立ち「お気に入りのエアマックスを3足持って来てください!」とお願いをして、実際にお持ちいただいたのですが、僕自身、見たことのないスニーカーも多くて・・・。 それぞれ3足について説明していただいてもよろしいですか? では、岸さんからお願いします。
古い順にいくと、まず「エアマックス95」のオリジナルの未発売サンプルですね。僕らもどういう経緯で入手したのか曖昧で、その正確な素性はハッキリしませんが、少なくとも95年当時は製品化されなかった真っ白なサンプル。そこで思い付いたのが(プロロタイプ的な)
モックアップ なんじゃないか、と。真っ白なのは、そのためじゃないかと推測しました。
とにかく入手の経緯さえ思い出せないほど、当時はバタバタしてたから。もう今では加水分解しちゃって、見る影もないけど・・・。
NIKE AIR MAX 95
これ、市場に出回ってないってことは、もうスニーカー好きにとっては超レア?
つづいて、僕はコレクターにしてみたら御法度とも言うべき、スニーカーの改造とか平気でやっちゃうんですが、これもそう。 「エアマキシム1+トレーナーND」とモデルで、元々(つま先部分)エアトレーナー1のようなベルクロが付いていたのを外しました。すると、形はエアマックス1で、配色はエアトレーナー1みたいな、とにかく、この配色が好きで。これは2012年製のモデルかな。
NIKE AIR MAXIM 1+ TRAINER ND
珍しい。岸さんは、エアマックスに限らず自分の履きたい感じに、カラーリングとかも変えたりするのですか?
染めQ で塗っちゃうんです。良い配色を思い付いたら、結構やります。基本的には塗らずに済めば、その方が良いんだけど。
あと、もう1足が「エアマックス2014」。これはインラインのファーストカラーですが、初めて見た瞬間にカッコいいって思ったんだよね、このハイテク感とか。要するに(縫い目のない)シームレスで、色がレイヤーされている感じが。 ファーストカラーからインパクトのある配色で登場した点でも、エアマックス95に通じるものを感じて。しかも同時期のレブロンモデルがカッコよかったのをエアジョーダンに重ねて、もしやエアマックス95の再来か、ってな具合に、自分の中では盛り上がってました。そういう文脈で雑誌でも結構取り上げたけど、全然人気出ませんでしたね(笑)
NIKE AIR MAX 2014
世間の支持は得られなくとも、今でもカッコいいと思います。この2色が混ざり合うグラデーションのエアユニットも悪くないですし。
なるほど。ありがとうございます。では、柿内さん、今日持ってきた3足を教えてください。
では、この「エアマックス97」から。21〜24歳くらいまで、ニューヨークに住んでいた時期があり、その時に買い付けの仕事もしてました。その頃、現地の「フィニッシュライン」というスポーツチェーンで買ったのが、MTV別注モデルでした。
Nike AIR MAX 97 MTV別注モデル
そうなんですよ。やっぱ、全然見たことなくて。たぶん、たぶんなんですけど、フィニッシュラインもあんま売る気がなかったみたいで・・・。
なんか買ってくださいって感じじゃなく、とりあえず作りました、みたいな(笑)
その感じがすごく良いなって。スニーカー好きには嫌がられる透明なソールも、劣化して黄ばんでいくのに、あえて使ってるアホさ加減。でも、個人的にはすごく気持ちがくすぐられて。あとは、この宇宙っぽい銀色、普通には履けない配色も。それが思い出の逸品です。 もう1足は、2007年ぐらいに・・・
2006年でしたっけ? 「エアマックス360」が発売されたのを記念し、360マックスエアのソールユニットとエアマックス95など歴代エアマックスのアッパーを組み合わせたシリーズを展開したことがあって・・・
その中にあった、このドットというのがとても斬新で。しかも、ウェットスーツのような生地に転写プリントしていたんですよね。だから、実際に履くと(ドット柄が)ちょっと伸びるんですよ。履く側のことをあんま考えてないなっていう(笑)
NIKE AIR MAX 360 Black Polka Dot Anthracite
(観賞するだけなら)芸術作品としてはすごいんだけど、やっぱり履くと・・・。ファッション好きな人から見たら、いろんな欠点があるのも人間っぽくて(笑)
もう1足も同じ時期の「エアマックス95」で、2007年製のリミテッドエディション。
インソール にLE(Limited Edition)のプリントがある。
このLEっていうのを、ナイキが使いまくっていて。LEって付けると、何でも売れるみたいな時代でした(笑)このモデルは、たぶんレディース限定なんですよ。アッパー部分が95をモチーフにしたペイズリー柄のベロア生地みたいになっているんですよ。
NIKE AIR MAX 95 Zen Premium
しかも(アッパーサイドが)全然レイヤーになってないのね。
僕は、ちょっと不自由なのもすごく楽しいって言うか。ドット柄のエアマックス95もあんまり履かないのですが、履いたら(ドット柄が)伸びちゃってカッコ悪いので。でも、それが芸術作品としてはすごく良いんです。なぜ履く人のことを考えないのだろう、という点がすごく好きですね。
僕たちが大好きなエアマックスの未来に期待すること
これからのナイキエアマックスについて話したいと思います。 ナイキの中ではきっと、ジョーダンブランド、エアマックスブランドの二つは、すごく大事なのかなと思っています。毎年のように新しいデザインが出てきますし、テクノロジーもどんどん搭載しています。 エアユニットが最初にあって、それをソールに360度という形で発展して、さらにフライニットと合体したり。そういうテクノロジーとも融合するエアマックスなんですが、この先の未来、エアマックスに期待することはなんですか?
たぶん、みんなが想像している以上のことを、やっぱりナイキは提供してくれると思うんですよ。でも、僕みたいなコレクターの気持ちからすると、シューズが壊れていくのが気掛かり。
そう、加水分解。それをナイキがオフィシャルで直してくれたら、とても良いと思う。10年、20年、30年後でもいいから、例えば、エアマックス97のアッパーに97以外のソールを付けられたり、最先端のエアマックス2040(!?)のソールを付けられたら、すごい歴史的価値がある。 ヴィンテージを超え、アンティークとして後世に残していくという部分では、これをナイキが提案してくれたら、会社的にすごいチームだと思う(笑)
1991年に発売されたAir Max 91(のちAir Classic BW)。15年以上の時間が経ち、ソール部分が加水分解している
ちょっと加水分解の話をしたいのですが、過去に買ったシューズはだいたい何年目ぐらいから加水分解が始まるんですか?
一般的には5年とか。保存状況にも拠るかな。例えば一番良くないのが、買ってから何年も履かないで、湿気のあるところに置いておき、5年とか10年経った時に突然履き始めると、すぐにソールが壊れることがよくある。比較的(シューズに)良いとされるのは、買ってすぐに下ろしてコンスタントに履くこと、という説も。ただ、そうしたからと言って、10年も20年も保つわけではなく、やっぱり10年は・・・
そこはやっぱり悩ましいとこですよね。スニーカーに関して言うと。
そうだよね。まぁ、ものによって10年は超えるけど。
10年超えても履けるものもある。僕自身、06年のエアジョーダン4レトロはまだ履けるけど、03年のエアトレーナー1SBはついに加水分解し始めた。
悲しい。でも、加水分解したものはしたもので、もうヴィンテージと言うか化石みたいなものだから、そのままで良い。あと、形さえ保つのであれば、壊れた状態で飾っておいても別に良い。アッパーにすごく思い入れがあったり、どうしても履きたいカラーリングだとか、そういう場合は直して履くのも賛成だし、壊れたら壊れたで、それも良いなって思う。
”直す技術”に関して、そういう市場が日本では全然成長していない。アメリカではすごく成長してるらしいのに。僕も詳しくは知らないけれど、お金さえ払えば綺麗に直してくれて、良い仕上がりで戻ってくると聞く。そういう意味では、日本の方がスニーカーカルチャーは進んでいると思っていたけど、ある時期から(アメリカに)逆転されているのかなって気もする。
そうそう、ナイキのエアマックスに望むことですよね。
ソール部分でエアユニットが360度ビジブルになっている。
06年リリースのエアマックス360は、踵にケージを必要としながらも、そのソールユニットを360度マックスエアと位置付けました。同様に、エアマックス360を360度マックスエアの第1世代とするならば、エアマックス2014のソールユニットは第3世代に当たります。ケージから解放されたエアバッグがほぼ360度のクリアな視界を確保した究極のビジブルエアです。ただ厳密には、唯一
アウトソール に阻まれたつま先の
ビジブル化 は、エアマックスに残された最後のフロンティア(笑)
まぁ、つま先のビジブル化は酷として、既にほぼ完成されたと思われる360度マックスエアはもうさほど進化しないんじゃないかなぁ。
うん、機能的には。ランニングシューズ、パフォーマンスシューズとしての機能性の追求という意味で。
限界が来ていると言うか・・・あとはもう、できることって、アウトソールのラバーやエアバッグのクリアラバーを薄くして軽量化するとか、本当に少ししか残ってないと思う。 でも、もしかしたら僕らの想像を絶するような発想の転換があるかもしれないし・・・
例えば、ポンプフューリーの下駄ソールのように、透明のエアバッグが必要な箇所にのみ配置され、あとは空洞になっているエアソールとか、何でも良いんです。しかもランニングシューズとしては機能的でないかもしれませんが、それでも僕は良いと思うんです。 もしかしたら、ナイキも本音では、走ることに関してはルナロンソールの方が優れていると思ってるんじゃないでしょうか。仮にそうだとしたら、エアマックスはパフォーマンス系の最高峰という重責から解き放たれて、もっと自由なクリエーションを展開して欲しい。 ものすごく分厚いエアソールで水面に浮いて忍者のように歩けるとか・・・そういう面白い方向にエアマックスが進めば良いんじゃないかと思う。
そういうユニークな方向性のエアマックスがあっても良いのでは・・・。機能的な進化については、僕はもうあまり期待してないかなぁ。もちろん、アッパーにフライニットが導入される等、全く新しいテクノロジーと組み合わされるケースは充分あり得るでしょう。 スポーツシューズが最終的に何を目指すかと言えば、軽さだ。何も履いてないような感覚を求めて開発されるパフォーマンスモデルは、自ずと街履きするには華奢過ぎるんです。特に、最近のランニングシューズはどれも踵が薄い。これでは履いていても何だか心許ない気がして。
個人的には80年代後半、87〜89年、その時代のデザインに惹かれます。エアジョーダン4みたいなガッチリしたデザインのシューズが好きな反面、最近のランニングシューズは見た目がカッコいいのに、実際に履いてみると足元が華奢で。まぁ、いいかってスルーしてしまう。
エアユニットの話をかなりしたと思うのですが、変な話、エアユニットで靴を全部作ってもいいと思うんですが・・・。
たぶん、それだとフィット感とか得られないんじゃないの?
撮影時の岸さんの足元は「Nike Air Trainer 3」
撮影時の柿内さんの足元は「Nike Air Max 97」
靴のサイズ表記がS、M、L 。エアプレストの登場で混乱した僕たち
ナイキでは、アルファプロジェクトの時代はとても好きだった。00年とか01年辺り。エアプレストが発売された頃。
サイズミック、クキニ、エア227・・・どれもカッコよかった。あの頃、アルファプロジェクトでは長期の研究開発によって革新的なプロダクトを作り出すことをコンセプトに掲げていたけど、現代にもそういう視点があれば良いと思う。当時リリースされたモデルは本当にカッコいいものが多いから。
そう。あの頃のシューズは復刻するに価するということでしょう。
現代のコルテッツのように”時代に刻まれる”と言うか、”後世に残るスニーカー”といった感じでプレストが登場し、カラーバリエーションも沢山リリースされました。
最初のブラック/ゴールドも良かったけど、ワッフルトレーナーのようなレトロな配色のサンプルもあった。
今、プレストの復刻版をその当時オリジナルを知らない20代前半の子たちが「これ、めっちゃカッコいい!」みたいな感じで履いてるわけじゃないですか。
古くなっても革新的なシューズはいつまで新鮮なんだと思います。
そうですね。ウェットスーツのような素材で、サイズ展開がS・M・Lって、どういうことやねん!(笑)
たしか(足のサイズが)24~25cmならばS、みたいな感じで売ってました。
しかも、そのS・M・L サイズのシューズでスポーツできるのが特徴だった。それだけネオプレーン製のアッパーがフィットしたということ。
俺も、出た瞬間、買いましたもん。で、分かってる奴は「Mください」みたいな感じで言って、ムラサキスポーツでドヤ顔するんです(笑)
エアマックス95以降、一度落ち着いていたブームがまた再燃しましたね。
そうだね。エアプレストが出た00年辺りは裏ダンクもあったから。またナイキが盛り上がることで、スニーカー市場全体を押し上げていった。 話は変わるけど、90年代末〜00年代のアディダスが全然元気ないんだよね、ハッキリ言って。
アディダスは、たまにスーパースターやキャンパスの復刻で一時的に盛り上がっていたけど、基本的にハイテク系は元気がなかった。
だから、今のアディダスの状況はすごく好転したと思う、ウルトラブーストが登場して。
イージーブーストやNMDもそうだけど、アディダスのハイテク系がすごく良くなった。ナイキもうかうかしてると、アディダスにやられそうな勢い。やっぱり復刻でいくら頑張っても、最先端のパフォーマンス系で良いデザインのスニーカーを出さなければダメになると思う。
トレーニングシューズですごくカッコいいモデルがあって。正式名称がナイキトレインウルトラファストフライニット、これが好き。サイドのメッシュ構造とか、個性的過ぎて、一般のユーザーには支持されないと思うけど。
なるほど。ちょっと時間の関係で、話を一旦閉じます。 これまで多くの人に愛されてきたエアマックスは、今後も毎年のように新作を出すだろうと思います。2020年ぐらいにもう一度エアマックスを振り返りたいなと思うので、是非そのときも、対談をよろしくお願いします。
VIDEO
対談内容を全編で観たい方は、こちらの動画から。
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ナイキのアイコンである「DUNK SB」に関する初の書籍
Nike SB: The Dunk Book
2002年に誕生した「ナイキ ダンク」は、スケートボーダーやスニーカーヘッズがコートから取り入れ、ストリートのアイコンとなりました。スニーカーカルチャーを今日のように進化させる初期のきっかけとなったナイキダンクは、数多くのモデルチェンジやクリエイティブなコラボレーションを経て、スニーカーカルチャーに欠かせない存在となりました。 DUNK SBは、スニーカーにこだわる文化には欠かせない存在となっています。このレガシーを祝うために、『Nike SB: The Dunk Book』は、史上最も重要なシューズのひとつであるダンクの歴史的なアーカイブを紹介する初めての書籍です。世界中の大会で多くのエリートライダーに愛用されているナイキ ダンクは、そのファンキーでユニークなデザインだけでなく、高いパフォーマンスも評価されています。 Nike SBの最も象徴的なスタイルのビジュアルストーリーを伝える素晴らしい画像が満載です。
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