靴選びに足のアーチが関係する理由

取材日: 2019年5月1日

文/野口達也

靴選びに足のアーチが関係する理由_image

足の形は人それぞれ異なります。しかし、市場に出回っている靴のほとんどはより多くの人の足に合うように設計されています。履きやすい靴、歩きやすい靴を選ぶためにはどんなことを知ればいいのでしょうか。

この連載では、義肢装具士として働く傍ら、靴ブランド「LIGHTBULB.」を主宰する野口達也さんと一緒に「足に適合する靴」を考えていきます。第二回は靴選びに関わってくる、足のアーチや動きについてです。

連載「足に合う革靴とその背景」

足と靴選びの関係性

皆さまこんにちは、野口(@zucchinitatsuya)です。今回も足に注目して話を進めていきたいと思います。なぜなら靴の設計や靴選びに置いて、自分の足の形や動きを知ることは重要だからです。

例えば、私の足長は25㎝程度で一般的なサイズと言えますが、踵が小さいため既製品の革靴ではなかなか満足したフィッティングは得られません。

皆さんは、歩くときの衝撃を吸収するために足にアーチ構造が備わってるのをご存知でしょうか。アーチとは足の骨が弓形に並んで形づくられたもので、アーチがあることにより人間は安定した二足歩行ができていると言われています。

アーチは外側縦アーチ、内側縦アーチ、横アーチの3つがある。

アーチは外側縦アーチ、内側縦アーチ、横アーチの3つがある。

まずは足の形を知ろう

足のアーチタイプは、大きく3タイプに分けられます。標準、アーチが高い凹足などのハイアーチタイプ、アーチが低い扁平足タイプに分けられます。私は、左足に比べ右足の方が足のアーチが崩れやすい扁平足タイプのため、右の小指が靴に当たることが多く靴の試着時には入念なチェックが欠かせません。自分の足の形や動きを知ることで、足に合った靴を選びやすくなります。

また、アーチが崩れやすいという足の状態を踏まえて、靴の機能性としても柔らかく剛性や安定感に欠ける設計の靴はあまり選ばないようにしています。なぜなら、治療が必要になる足のトラブルの9割以上は、アーチが崩れすぎることにより起こると言われているからです。私も足に悩みがある方の足を見ると、比較的アーチが高かったり関節の可動域が狭い方よりも、アーチが崩れすぎたり関節が緩すぎる方が多いと感じます。

MuuseoSquareイメージ

そのため私は、自分の足の状態を踏まえて痛みが出たり、出やすい状態にならないように靴の選び方や履き方などに気を付けるようにしています。足の状態をセルフチェックをすることは難しいですが、スポーツ用品店や健康靴屋さんなどが提供している計測サービスを利用すると良いでしょう。

なお、アーチの低下などの動きは、足にとって必要な動きなので、アーチの動き自体を問題視する必要はありません。また関節が緩いからといって必ずトラブルに繋がるわけではありません。足に痛みがあるなど心配な方は、一度専門医に相談すると良いと思います。

足の動きを理解しよう

次に、皆さんにも足の動きを理解していただくため、簡単に歩く時の動きを解説していきましょう。通常の歩行ですと、前方に足が振り出され踵から足底全体へと接地して行き、歩く時の衝撃を吸収していきます。

そして反対の足が地面を蹴り出し、片足で安定して体重を支えることになりますので、動的な安定性が必要になります。さらに歩行運動が進むと反対の足が接地するため、地面にしっかり力を伝え、滑らかに荷重の受け継ぎを行う必要があります。このような役割と動きの中で、実は足の形は常に変化しています。

MuuseoSquareイメージ

足に荷重が掛かると、軟部組織が広がりアーチも低下します。同時に足長は伸び、足幅と足囲は広がり、甲の高さは低下するなど形が変化していきます。このため足長は荷重時に計測するのが良いとされてます。しかし足幅、足囲は荷重時の一番大きい数字を基準にしてしまうと殆どの場合は緩過ぎてしまうでしょう。

こうした足の動きを知る事で、より適切なフィッティングを知ることができます。また足はみんな同じではないため、荷重する事でアーチが高くなる方や、変化量がとても少ない方もいます。大事なのは、自分の足はどんな靴が合うのかを知ることです。

MuuseoSquareイメージ

例えば再び私の話で恐縮ですが、前述の通り既製品の革靴で満足した踵のフィッティングは中々得られないため、しっかり歩いてみることで踵が緩過ぎないかどうか、歩くときにしっかりついてくるかどうか、時には靴下を交換したり紐を調整し直したりしながら確認します。特に踵のフィッティングは後で調整しにくいので、入念なチェックが必要です。

また右足の小指に関しては、蹴り出しの時の当たり具合を歩くなかで確認を行ったり、荷重した状態で靴の上から触ったりして慎重にチェックします。場合によっては革をストレッチし足に過度な圧迫を掛けないよう微調整をおこないます。

今回は足を中心に話しましたが、私のような一般人でも、靴選びに影響のある左右差や潜在的なトラブルを抱えている事がおわかりいただけたと思います。

もちろん皆さんは、もっと大きな悩みを抱えていたり、全く悩みがなかったりするかも知れませんが、足について少しご理解いただけたなら幸いです。

ーおわりー

Writer Profile

File

野口達也

義肢装具士。株式会社レザードクターにて靴修理職人としてキャリアスタートし、様々なブランドの靴に触れ靴の製法や構造を学ぶ。仕事をするかたわら、自身の靴製作に取り組み、靴木型の設計にも着手する。その後、整形靴を学ぶことを決め、早稲田医療技術専門学校義肢装具学科へ入学。同校卒業、義肢装具士免許取得。2017年には自身の靴ブランド「LIGHTBULB.」をスタートし。個展を開催。木型や足についての勉強会や、生体力学を取り入れたTSC(Total Surface Contact)木型の開発を行い、靴木型のさらなる発展を目指す。

終わりに

野口達也_image

足の話は専門的で難しく考えられがちです。しかし、正しい知識を持って靴選びが行えれば、より良い履き心地の靴が選べるはずですし、きっと足のトラブルも軽減するはずです。次回は靴の適合について、どんなことが関係しているのかもう少し迫ってみましょう。

Read 0%