銀座に生まれた時計の殿堂、セイコードリームスクエア。老舗ブランドの歴史と技術を知る。

銀座に生まれた時計の殿堂、セイコードリームスクエア。老舗ブランドの歴史と技術を知る。_image

取材・文 / ゴトーアツシ
写真 / 新澤遥

今日も変わらず銀座四丁目の交差点を見下ろす、銀座のシンボル。

時計塔が象徴的な和光は1881年「服部時計店」の開業から始まった、老舗時計メーカー「セイコーウオッチ」発祥の地で今日も営業を行なっている。

そんな所縁の地に、セイコーブランドを体感出来る新施設が2018年12月に誕生した。

施設の名前は「セイコードリームスクエア 」。

当施設には定期的に時計師も来館し、その作業を生で見ることもできるという。

ユニークな施設の見所を館長である神野さんに伺った。

セイコー創業の地に誕生した新施設

お話をお伺いしたセイコードリームスクエア館長の神野さん

お話をお伺いしたセイコードリームスクエア館長の神野さん

###セイコードリームスクエアとは###

銀座の地にルーツを持つセイコーブランドの歴史と技術を知ることができる、4階建てのミュージアム併設型ショップ。和光からほど近い銀座4丁目に2018年12月よりオープンした。

銀座の一等地のブティック街にあるが、1階部分には商品が並ばず、セイコーブランドの歴史と技術を知ることの出来るミュージアムとしての空間作りが施されている。

2階から4階は同社の主力ブランドの世界観を体感しながら商品の購入が出来るブティックスペースとなっている。

入り口は時計の文字盤を模しており、中には歯車のオブジェが垣間見える。
和光の時計塔の中に入っていくイメージだという。

入り口は時計の文字盤を模しており、中には歯車のオブジェが垣間見える。
和光の時計塔の中に入っていくイメージだという。

MuuseoSquareイメージ

ーー銀座の街並みの映像が流れていますね。

和光の時計塔に登ったようなイメージで、銀座の街並みをご覧いただける動画を製作しました。
朝の明るい時間や夜の暗い時間、歩行者天国の時間や晴れの日、傘の色が鮮やかな雨の日。銀座という街の様々な表情が出てくるので、見ていて飽きないと思います。

MuuseoSquareイメージ

ここはセイコーの歴史と、その中で生まれた象徴的な製品を知って頂けるエリアです。貴重な製品の実物と、その製品の作られた時代をミニチュアで表現しました。QRコードをスマートフォンで読み取ってもらうことで、より深い情報を知ることができます。

MuuseoSquareイメージ

これは、セイコーが日本で初めて作った腕時計です。ローレルというブランドで1913年に発売しました。当時の日本には、腕時計は海外からの輸入品しかなかったんです。懐中時計を作る技術を持っていた当社が、初めて国内製造に成功しました。

ーー今見てもシンプルで美しいデザインですね。

ダイヤルは琺瑯で作られています。懐中時計の大きさからの小型化には苦労したようです。

MuuseoSquareイメージ

ーーこのオブジェは何でしょう?

関東大震災の後に発見された、修理の為にお客様からお預かりしていた懐中時計なんです。

MuuseoSquareイメージ

焼けてしまった時計を元に戻すことは残念ながら出来ないので、同等の新品の製品をお渡ししたと伝わっています。お客様からの信頼を何よりも大事にする精神は、今のセイコーにも受け継がれていますね。

組立師の技を目の前で拝見する

MuuseoSquareイメージ

本施設にはセイコーの時計を組み上げる組立師や、時計へ施された細工を掘る彫金師が定期的に来館します。現代の名工に指定されている職人や黄綬褒章を持っている職人、若手の彫金師まで、幅広い人選の職人の技を間近に見る事ができます。

ーー時計師の仕事を見るのが初めてという方も多いと思います。

時計は製品になった状態だと、なかなか凄さが伝わらないんです。外装しか見えませんからね。時間のわかる小さな機械でしかない。

でもその中身は、歴史が積み上げた技術や人間の手作業の集積です。その凄さを体験して頂いて、大事に使って頂くというのを目的として、こういった空間を本施設の要素として取り入れました。

MuuseoSquareイメージ

平賀 聡さん

1970年生まれ。セイコーホールディングスのグループ会社、セイコーインスツル株式会社に所属する組立師。入社以来30年以上、腕時計の組立・調整・修理に携わり続ける。2014年にはバーゼルワールドにて同社の代表ブランド「グランドセイコー」の組立実演を行い、高い評価を得る。2015年に厚生労働大臣より「卓越した技能者(現代の名工)」に選定された、この道の第一人者のひとり。

ーーここからは時計師の平賀様にお話を伺いたいと思います。組立師というお仕事を選ばれたきっかけから教えて頂けますか?

学生の時分には電気機械を専攻しており、半導体に興味がありました。今の会社に入社し、自分の専攻を活かせるかな、と思っていたのですが、配属されたのは時計の組み立て部門だったんです。組立の仕事は自分で選んだものではなかったのです。

ーーそれは驚きですね。抵抗などは無かったのでしょうか?

小さい頃からモノ作り全般は好きだったので、何の抵抗も無く入ることができましたね。それから30年、変わらず時計を作り続けています。

MuuseoSquareイメージ

ーー長く時計作りに携わっておられますが、今でも仕事の上で新しい発見などはありますか?

新製品の組み立てにも一部携わっていますので、新しい部品や機構、材質に出会ったりすることも多いです。そういったところは非常に楽しいですね。

ーー組立師という仕事の魅力はどんなところにあると思いますか?

現在、私の担当しているのは機械式の、ぜんまいで動く時計です。部品を一つ一つ組み上げていって、最終的に「てんぷ」という部品を組み込んだ時に、時計が動き出します。

「てんぷ」をピンセットで持ち上げたところ

「てんぷ」をピンセットで持ち上げたところ

この「てんぷ」という部品が時計の心臓部なんです。正確に組むのが非常に難しい部品でもあるんですけれども、この部品がしっかりと入れば、自然と全ての機構が動き出します。「てんぷ」を組み込む瞬間が、組立師の仕事って良いなあと思う瞬間ですね。

「てんぷ」をはめ込む。緊張の瞬間だ。

ーーこの様な場所で、人に見られながら作業をするというのは、なかなか無い事ですよね

正直に言うと、人前で作業するのは苦手なんです。でも、こういった場を設けてもらうことで、部品ひとつひとつの大きさや形、材質、仕上げ、そういった細部を見て頂くことができます。

写真や映像で見るよりも、時計の良さが伝わりやすいのかなと思います。

MuuseoSquareイメージ

例えば、高級品と普及品では、部品ひとつひとつの仕上げも含めた、モノの良さが全く違います。でも時計のデザインだったり、外装の材質だったり外側だけ見ていると、価格が適切かどうかの判断が付きません。

時計の中身を組んでいる様子を見て頂くと「こんなに精密な部品が使われているのか」「これだけの手が掛かっているのか」と、値段に対して納得頂けると思います。

館内には、時計師の作業する手元を拡大して見ることが可能な液晶画面も配備されている。

館内には、時計師の作業する手元を拡大して見ることが可能な液晶画面も配備されている。

各フロアと取り扱いブランドをご紹介

セイコードリームスクエアの2階以上は、同社の代表ブランドを取り扱うブティックとなっている。

引き続き 館長の神野さんに、各フロアと代表製品について解説頂いた。

2階 プロスペックスのフロア

MuuseoSquareイメージ

プロスペックスはダイバーウオッチを中心とした、スポーツウオッチのブランドです。
フロアは岩肌のような外壁に、深海をイメージした空間に仕上げました。

File

プロスペックスとは?

セイコー プロスペックスは、スポーツやアウトドアシーンに対応する本格機能を備えたスポーツウオッチブランド。中でもダイバーズウオッチは、世界中のプロフェッショナルダイバーや冒険家から高い評価と信頼を獲得しています。

ここでは、海底に潜って行きながら、ダイバーウオッチの今までに発売したエポックメイキングなモデルを見つけるという疑似体験をすることができます。

深く潜れば潜るほど、深度に対応した時計が現れます。ゲーム感覚で歴史的な製品に触れることができます。

プロスペックス 代表製品

SBDC053
オン・オフともに使えるデザインで、ブルーの文字盤が人気。
価格:80,000円(税別)

SBDC053
オン・オフともに使えるデザインで、ブルーの文字盤が人気。
価格:80,000円(税別)

SBDC061
最近のダイバー人気もあり、オンでも使いやすい売れ筋モデル。
価格:110,000円(税別)

SBDC061
最近のダイバー人気もあり、オンでも使いやすい売れ筋モデル。
価格:110,000円(税別)

3階 ルキアのフロア

MuuseoSquareイメージ
MuuseoSquareイメージ

このフロアはルキアを使って頂きたい女性をイメージした空間になっています。
凛とした空気感のある、優しさと強さを兼ね備えた女性像をイメージしています。

File

ルキアとは?

セイコー ルキアは、20代~30代の働く女性を中心に多くの女性から支持されています。最先端技術による高機能を搭載しながら、時代に合った心地よいデザインで女性の手元を彩り、その輝きを最大限に引き出します。

MuuseoSquareイメージ

フロアの真ん中に置いたアート作品では、日本の色を重ねた美しさと、色の線を揃えたことによる凛とした空気感を表現しています。

ルキア 代表製品

SSQV058
オン・オフで使用でき、新色のゴールドカラーとダイヤが高級感を演出。
価格:78,000円(税別)

SSQV058
オン・オフで使用でき、新色のゴールドカラーとダイヤが高級感を演出。
価格:78,000円(税別)

SSVW128
ピンクゴールドにブラウンの文字盤が大人らしい、甘すぎないデザインで人気。
価格:59,000円(税別)

SSVW128
ピンクゴールドにブラウンの文字盤が大人らしい、甘すぎないデザインで人気。
価格:59,000円(税別)

3階 プレザージュのフロア

MuuseoSquareイメージ

機械式時計のプレザージュを扱う空間です。こちらは和の世界観を意識しています。
プレザージュというブランドを象徴する、白檀塗りという匠の技を駆使した製品も紹介しています。

File

プレザージュとは?

セイコー プレザージュは、100有余年に渡る機械式時計作りの伝統とノウハウを受け継ぐ、メイド・イン・ジャパンの機械式時計ブランド。2016年からグローバル展開を開始し、世界中で高い評価を得ています。

MuuseoSquareイメージ

一番最初に目に入るスクリーンは、掛け軸をイメージしています。
スクリーンには四季をイメージした映像が流れます。

MuuseoSquareイメージ

漆、七宝、琺瑯と3種類の素材を使い、職人が仕上げる文字盤の製造工程を、動画と実物、模型で見ることができます。

プレザージュ代表製品

SARY093
文字盤から機械式の内部が見えるデザインが人気。
価格:60,000円(税別)

SARY093
文字盤から機械式の内部が見えるデザインが人気。
価格:60,000円(税別)

SARW035
文字盤に琺瑯を採用した質感のある商品。デザインのバランスの良さが人気。
価格:120,000円(税別)

SARW035
文字盤に琺瑯を採用した質感のある商品。デザインのバランスの良さが人気。
価格:120,000円(税別)

4階 アストロンのフロア

MuuseoSquareイメージ

他のフロアと打って変わって、一気にシックな雰囲気になっています。
アストロンのユーザー像は、海外をアクティブに行き来するようなビジネスマンの方々。
カッコよく、でも実用度もあるという製品のイメージを表現しています。

File

アストロンとは?

セイコー アストロンは、2012年に誕生した世界初のGPSソーラーウオッチです。地球上のどこにいても簡単なボタン操作でGPS衛星からの電波を受信して、緯度・経度・高度の情報を取得することで現在地を特定し、すばやくその場所の正確な時刻を表示します。

MuuseoSquareイメージ

アストロンはボタンを押すことでGPSの電波をキャッチして、今いる場所の緯度経度を特定し、現地の時間に合わせる仕組みが組み込まれています。

世界を飛び回るビジネスマンの方に活用頂きたい機能となっています。

アストロン代表製品

SBXC009
小型化した新キャリバー5X搭載の新モデル。ブルーのアクセントカラーが人気。
価格:270,000円(税別)

SBXC009
小型化した新キャリバー5X搭載の新モデル。ブルーのアクセントカラーが人気。
価格:270,000円(税別)

SBXC006
シリコンバンドを採用したスポーティなモデル。
価格:230,000円(税別)

SBXC006
シリコンバンドを採用したスポーティなモデル。
価格:230,000円(税別)

ーおわりー

時計を一層楽しむために。編集部おすすめの書籍

激動の昭和期、時代を席捲したセイコー腕時計の姿を収録。

41ybax2mrnl. sl500

国産腕時計セイコー クラウン・クロノス・マーベル

1996~98年に刊行、絶版になっていた3冊を復刻・合本して追記した増補版。世界初のクォーツ腕時計アストロンをはじめとする35系、薄型手巻きのCal.68系ほか、注目度の高いモデルを紹介し、当時の価格表の抜粋などを掲載。

世界中の高級時計を網羅。あなたに合う最高の時計が見つかります!

51l33wz11ml. sl500

腕時計の図鑑

世界の高級腕時計71ブランド・約270モデルを豊富な写真と情報で紹介。
名だたるブランド・名機を収めた完全保存版です。
また、時計の構造やムーブメント等の歴史もわかりやすく紐解きます。見て読んで楽しめる一冊です。

公開日:2019年3月27日

更新日:2021年7月2日

Contributor Profile

File

ゴトーアツシ

編集者、ライター。東京都出身。 古いモノや文化、それに食に関わる事柄が全般的に好き。 好きな言葉は『アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ』。

終わりに

ゴトーアツシ_image

世の中で流通する圧倒的多数の製品は、その外側しか見る事が出来ない。
でも作り手側から見ると、その内側こそが、積み上げた研鑽と研究の結晶なのだ。
近年、工場見学が人気なのは、本当は多くの人が内側の秘密を知りたいからなのかもしれない。
銀座で出来る工場見学。興味のある方は一度足を運んでみては如何だろうか。

Read 0%