Alpaマウントレンズ

Alpaマウントレンズ

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スイス製の一眼レフカメラAlpaはピニオン社という時計の歯車を作る精密部品メーカーが作っていたカメラです。ピニオン社はカメラだけを作ってレンズは全て他メーカーからの供給を受けていました。ピニオンにはある種のこだわりがあったようで,なぜかレンズの王様Carl Zeissのレンズは一本もラインナップされていませんでした。そのかわり,と言ってはナンですが,一癖も二癖もあるマニアックなレンズが並んでいます。

Alpaカメラはとても高価だったため,当然,製造数も少なく(1944年から1989年の45年間に42,000台しか作られなかった。単純計算で月産80台足らず),その結果,自動的にレンズの製造数も少ない,というレアモノの条件をカメラ,レンズともに十分過ぎるほど満足しています。カメラは複雑で壊れやすかったようで,とても私のような貧乏人が手を出すようなものではありません。しかし,レンズはとても魅力的です。Alpaカメラは一眼レフではフランジバックが最も短い部類に属していたため,Alpa用レンズはマウントアダプタ経由ではいかなる一眼レフカメラにもつけることができませんでした。とてもマニアな人がLeica Mにつけて使っていたようです。かつて,青山にあった某マニアックなカメラ店が製作したAlpaからLeica Mへのマウントアダプタは50mmレンズに限って距離計も連動したようです。

初期のAlpaカメラは一眼レフですが距離計にも連動するレンジファインダーも付いていて一部の標準レンズは距離計連動していたため,レンズも距離計に連動できるようになっていました。よって,理論上はLeicaの距離計にも連動可能なアダプタを作ることはできた,ということだと思われます。

最近,中国製のブランドやノーブランドで出回っているAlpa - Leica M用マウントアダプタはこのレチナハウスのアダプタを模倣して作られているようで,標準レンズは距離計に連動することになっています。有名ブランド製となっているものはたぶんノーブランドで出回っているもののOEMです。

ところが,これらの距離計連動タイプのアダプターの距離計の精度はまったく使い物にならないレベルであるばかりか(一応,調整できるようにはなっているけれど...),距離計連動用の圧板のバネの力のバランスがとても悪く,レンズ側のヘリコイドを回そうとすると摩擦抵抗が大きすぎてピント合わせが困難,という実に本末転倒な代物です。距離計連動が使い物にならないばかりか,レンズに無用の負担をかけるうえにピント合わせもできない,というどうにも使えないものです。特定の個体の不具合かと思っていくつか購入しましたが,そもそもの設計がダメなのでいかんともできません。

話がそれましたが,Alpa用レンズは兎に角,数が少ないうえ変わったメーカーのレンズがラインナップされているためか非常に限られたマニアの間でのみたいへん評価が高いようです。ただ,それもミラーレス一眼カメラが一般的になって,フランジバックが極端に短いAlpa用レンズがようやく陽の目をみることになったからだと思います。ミラーレス一眼が出る前はAlpa用レンズはレアであるにもかかわらずそれほど高い価格で取引されていたわけではないようですので,最近のAlpa用レンズの高騰ぶりには少し腰がひけてしまいます。

Alpa用レンズはそれほど多く所有しているわけではありませんが(高価でなかなか入手できない),手持ちの個体を並べています。

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