革靴好きなら一度は通る?ウイングチップ(フルブローグ)の特徴と代表モデル

文・写真/ミューゼオ・スクエア編集部

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「お気に入りの革靴を履いている」満足感は、仕事や学業のパフォーマンスをあげてくれるもの。この連載では革靴のデザインごとに代表モデルやディテールについて解説します。

愛せる革靴を探す旅。今回は装飾性の高い千両役者、ウイングチップ(フルブローグ)を深掘りしていきます。

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派手なだけではない、機能的な意匠が光る「ウイングチップ」

ウイングチップ(フルブローグ)とは、つま先にウイング(羽)のような飾りが施された革靴を指します。

ウイングチップとは、アメリカで呼ばれる総称です。イギリスでは同様のデザイン(=ブローギングが施された靴)をフルブローグと呼びます。

日本では、戦後アメリカのビジネスウェアがお手本として浸透してきたため、イギリス式のフルブローグではなくアメリカ式の呼び方であるウイングチップという呼称が浸透しています。

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メダリオンとは小さな穴をたくさん開けた装飾のこと。革靴内にたまった水分を発散させる効果があります。

ウイングチップの元となった靴が生まれたスコットランドは、湿地帯が多く靴が濡れやすいため、メダリオンのようなデザインが考案されたと言われています。主に靴のつま先や意匠がほどこされます。

また、パーフォレーション(イギリスではブローグ)は、複数の穴を帯状になるようにデザインして、靴全体にほどこした装飾を指します。メダリオンと同様に、湿気を解消するという実用的な意図がありますが、デザイン的な意味合いもあります。

外羽根と内羽根では、与える印象は異なる

John lobb(ジョンロブ)「Darby」last2466

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ウイングチップにも内羽根(=羽根が甲の下に入るようなデザイン)と外羽根(=羽根と甲が一体化しておらず外に開いているデザイン)に分けられます。デザインの違いによって利用シーンも異なります。

内羽根ウイングチップは、主にビジネスシーン利用に適しています。スーツにもジャケパンにも合わせられる懐の広さがあります。快活で誠実な印象を与えられます。

CHURCH'S(旧チャーチ)「BURWOOD」last81

CHURCH'S(旧チャーチ)「BURWOOD」last81

外羽根ウイングチップは、内羽根ウイングチップに比べるとよりラフな印象が強まります。

足元のインパクトが大きくなるので、デニムパンツなどカジュアルなパンツともコーディネートしやすい靴です。ブラックでもブラウンでも、同様にカジュアル向きだといえるでしょう。

ビジネス用途としてならば、素材感が高まるツイードやフランネルのジャケット・スーツと合わせるとよく馴染みます。

ウイングチップの歴史

ウイングチップをウイングチップ足らしめる穴飾り「ブローギング」のオリジンはスコットランドにあります。スコットランドおよびアイルランドに住んでいたケルト系ゲール人という民族の労働靴は、現在のウイングチップに似ていました。

ゲール人が履いていた作業用の靴は、クアランやラリオンと呼ばれていました。また、生皮にワックス処理がほどこされた靴は、頑丈で水に強いという特徴を持っていました。

西暦1800年代になりクアランやラリオンは、英国貴族の目に止まります。彼らはハンティングのときに履くブーツとして、クアランやラリオンに着目したのです。

このような経緯で生まれたのが、ハンティングブーツを代表するカントリーシューズです。上品でスマート、さらに重厚感のあるカントリーブーツは、ブリティッシュスタイルファッションの定番アイテムとして認知されています。

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その後アメリカに渡ったウイングチップは、広く流行します。最初は仕事用のブーツとして人気を博したウイングチップですが、長く親しまれることで、アメリカ独自の進化を遂げることになりました。

アメリカ版ウイングチップの特徴として、ウイング部分のパーフォレーションが、かかとまで一直線に伸びている点が挙げられます。こういったデザインをロングウイングチップと呼び、アメリカトラッドを語るならば外せません。

ウイングチップの代表モデル

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Allen Edmonds( アレン・エドモンズ)「MCALLISTER」

1922年、「世界で一番豪華で履き心地の良い、手作りの靴を作りたい」という夢を持った一人の靴職人によって、設立されたブランド「アレンエドモンズ」。いまや、ウォール街を初めとするエグゼクティブ層に愛される、アメリカ随一のブランドとなりました。「MCALLISTER」は、アメリカらしい重厚感のあるウィングチップ。ツイードやフランネルなど、起毛感のある素材との相性は抜群です。

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大塚製靴「M5-223」

明治5年(1872年)の創業以来、西洋靴という新しい文化を日本に定着させ、日本人の足に合った靴の追求に専心してきた大塚製靴。中でも、「M5」シリーズは、オーセンティックなハイエンドモデルとして位置付けられています。

M5-223は、トラディショナルなフルブローグ。ともすると野暮ったくなってしまいがちなデザインですが、緻密なステッチワークとつま先に伸び感のあるラウンドトゥ「ラスト815」によって、洗練された印象に仕上がっています。

記事公開時点でオーダーは1年半待ち。WEBショップ限定のため、もし試着したい場合は六本木ヒルズに入っている直営店に足を運ぼう。

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JOSEPH CHEANEY(ジョセフ チーニー)「BROAD II」

1886年に、グットイヤーウェルトシューズの生産地として名高い英国ノーサンプトン州の郊外、デスバラーで設立されたジョセフ チーニー

「BROAD II」は、外羽根でトゥにボリュームのあるウイングチップと比較して、クセのないデザインでスタイリッシュに演出しているのが特徴的です。

木型には世界有数の金融街であるロンドンのシティで働く人々から支持を得ているシティコレクションに採用される11028ラストを採用。適度に長いノーズとラウンドトゥの組み合わせによってモダンでドレッシーな印象を醸します。

スーツスタイルやジャケパンスタイルとも相性がよく、ジョセフ チーニーの他のドレスシューズと比べてもやや幅広なので、一般的に甲の幅が広いとされている日本人の足型に合いやすい一足です。

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Tricker's(トリッカーズ)「BOURTON」

1829年創業の靴メーカー「Tricker's。」現在も創立者の子孫が経営する当社は、吟味された素材と職人技を駆使し、伝統を守り続けています。

BOURTONは、ブローグブーツと並びカントリーを代表するモデル。高い耐久性からトランパー(ガシガシ歩くの意)シューズとも呼ばれています。流行に流されない美しいフォルムで、長く愛着を持って履くことができます。

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MIYAGI KOGYO(宮城興業)「#102 Full Brogue Oxford」

1941年に創業し、数々のブランドのOEMを手がけてきた宮城興業。革靴製造のノウハウと熟達のテクニックを蓄積しており、デザイン、フロー、プライスの整合性が取れた靴を送り出しています。

同社のブランド「MIYAGI KOGYO」の靴は、カカトを包み込む部分が絞り込まれており、美しさとホールド感を兼ね備えています。クラシカルなコバ周りは、極限までの削り込みと革フェルトバフ加工により洗練された雰囲気を醸し出しています。

まとめ:華やかでありながらも、出番は多い

ウイングチップは、デザインやカラーを考慮することで、スーツにもカジュアルファッションにも合わせることができる革靴です。ストレートチップやプレーントゥと比べると、ややカジュアルにはなります。

そのため、いわゆるジャケパンスタイルによく似合います。特に出自がカントリーなだけに、ツイードやフランネルなど生地感が感じられるような素材に合わせるとよく馴染みます。紺色のブレザーなど、トラディショナルなスタイルとの相性もまず間違いありません。

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ウイングチップの特徴はその装飾性にあります。例えば、靴下やボトムス、トップスに比較的派手な色を持ってきても、悪目立ちしないところがポイントです。

内羽根式はワインレッドの生地感のあるセットアップに。外羽根式ならば、デニムに彩度の高い靴下を合わせ足元にアクセントをおいた装いに。

プレーントゥやストレートチップなどで基本のスタイルを抑え、より一歩踏み込んだ革靴を探しているならば、活躍できる機会も多いのではないでしょうか。

ーおわりー

公開日:2018年11月21日

更新日:2019年5月7日

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ミューゼオ・スクエア編集部

モノが大好きなミューゼオ・スクエア編集部。革靴を300足所有する編集長を筆頭に、それぞれがモノへのこだわりを強く持っています。趣味の扉を開ける足がかりとなる初級者向けの記事から、「誰が読むの?」というようなマニアックな記事まで。好奇心をもとに、モノが持つ魅力を余すところなく伝えられるような記事を作成していきます。

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