ローライ35。遊び心を刺激するフィルムカメラ

取材・文/廣瀬文
写真/牧野智晃

世にはさまざまな収集癖をもつ人がいますが、我が編集部にも強いこだわりがあるモノ好きがここにひとり。Muuseo Square編集長・成松が自身の愛用品をひっそりと語る連載です。今回は、コンパクトな中に機能がぎゅっと凝縮したフィルムカメラをご紹介します。

コンパクトカメラのパイオニア ローライ35

左/Rollei 35 Classic(1990年にRollei35の復刻版として登場したモデル)
右/Rollei 35S Gold(1980年発売 創業60周年を記念して製造)

左/Rollei 35 Classic(1990年にRollei35の復刻版として登場したモデル)
右/Rollei 35S Gold(1980年発売 創業60周年を記念して製造)

撮影した写真をすぐ共有できる。そんな利便性から最近ちょっとした記録にはもっぱらiPhoneを使用することが多い。

ただ、もともとカメラを構えて撮影することも趣味のひとつとしてある。今までにフィルム、デジタルともに使う機種やレンズを何台か更新してきた。現在は使いやすさからソニーのα7sに落ち着いているのだが、時折、ふと思い出しては触れてみたくなるカメラがある。それがローライ35だ。

◆ローライ35とは◆

ドイツ・ローライ社によって1967年発売された32mmフィルムカメラ。最初のモデルから派生したモデルが多く販売された。もともとはドイツで製造されていたが、コスト削減のためカメラ・レンズ製造をシンガポールに移して製造されたものもあるため、同じモデルでもドイツ産とシンガポール産とに分かれるものがある。

大事な一冊なので補正をしながら今でも時々ページをめくる。

大事な一冊なので補正をしながら今でも時々ページをめくる。

ローライ35はそれまでも見かけることはあったが実際に欲しいと思わせたのは雑誌「Begin」のずっと以前の記事。ちょうど「快感カメラ大集合!」(1998年6月号)という特集で過去のカメラ傑作品を紹介するページがあった。そこで、「キュートなハーフカメラの名品 オリンパスペンFT」に次いで「35mmフルサイズの小型化ピカイチモデル ローライ35」と紹介されていたのだ。

もともとカメラ好きの父親の影響で、幼い頃からカメラには興味があった私は小型カメラに魅了されていった。

父が所有していたドイツ製のミノックスを触らせてもらうのが大好きだった。

手のひらに収まる機体のサイズ、そのなかに技術者たちの英知が詰まっている。そんな想像をして子供ながらにロマンを感じていたのだ。

その後、自身でも実際に使うための機種としてリコーのGR1やコンタックスTなどのコンパクトカメラを購入。もちろんそれらも所有し使い続けたい名機なのだが、ローライ35はコンパクトカメラの先駆け的存在としてずっと憧れていたのだ。

MuuseoSquareイメージ
MuuseoSquareイメージ

MuuseoSquareイメージ

リザードの革を使用した豪華なデザイン。世界で限定1500台のうちの0673台目のナンバリングが刻まれている。

小さなボディに秘めたパワーを感じるフィルムカメラ

ドイツ生まれのローライ35が発売されたのは1967年ということには驚きを禁じえない。

当時、各メーカーは特殊フィルムやハーフサイズフィルムを使ってカメラの小型化を測っていた。ところがこのローライ35は、既存のフルサイズ35mmフィルムをそのまま使用できる機構に作り上げたというから驚いた。

レンズをカメラ本体から引き上げて撮影する沈胴式、巻き戻しクランクやフィルムカウンター、アクセサリシュー、裏蓋ロックノブまでをカメラ底部に配置。
徹底的にコンパクト化を追求しながら、フォルムの美しさも兼ね備えていることに感動した。

手のひらサイズながら、これでもかと機能が詰まった一台。金属製なのでメカとしての確かな重さも感じる。

レンズを本体に仕舞う際は、レンズ脇上にある金色のボタンを押し下げながら操作をする独特のつくり。

レンズを本体に仕舞う際は、レンズ脇上にある金色のボタンを押し下げながら操作をする独特のつくり。

私がこのローライ35に惹かれる別の理由として
自分のなかのアナログな感覚を呼び起こしてくれるところにある。

ローライ35は目測式カメラ。
つまり、撮ろうとする被写体とカメラの距離をおおよその数字で予想して、カメラレンズ部分にある距離計ダイヤルを調整する。

露出を合わせるため、シャッタスピートそして絞りのダイヤルも調整する。
シャッターボタンを押してフィルムを巻き上げる。

写真を撮影するまでのこの一連の動作。
自らこのメカを操作しているその実感が湧くのだ。

正直このアナログなカメラを使いこなすのは難しい。今でも久しぶりに触るとその感覚を取り戻すのに時間がかかる。偶然に頼る要素が強すぎるので、いざ現像してみて24枚のうち半分以下でも、思い通りに撮れていたら良い方である(笑)。ただ、時折「おやっ」と自分でも想定外に味わいのある写真に仕上がるのもこのカメラならではの楽しさだ。

確実な一枚を納めるというよりも、化学反応で何が起こるかわからないセッションを楽しんでいるような感覚。私はカメラと遊んでいる。そう童心にかえらせてくれる相棒がローライ35なのだ。

ーおわりー

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本誌は、フィルムカメラの魅力を余すところなく伝え、マニアからビギナーの読者まで、フィルムカメラの愛する全ての方に向けた1冊となっています。これからフィルムカメラを触ってみたい、まずは1台購入したいという方に向けて、カメラやフィルムの選び方、購入方法から現像、プリント、SNSの楽しみ方までを体験レポート風に楽しく紹介します。マニアなら誰でも納得するような、ビギナーなら見て欲しくなるような編集部オススメのフィルムカメラの名機を集め、その特徴と魅力をわかりやすく解説しています。

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本書は有名フォトグラファーにフィルムカメラでの作品についてインタビューするとともに、35mmフィルムカメラ、二眼レフ、中判、大判のカメラの使い方、現像・プリントのしかたについてレクチャーします。
みなさんもこの本をお読みになって、フィルムカメラをぜひ使ってみてください。

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公開日:2016年3月20日

更新日:2021年7月21日

Contributor Profile

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廣瀬 文

オトナかわいい女性に憧れるアラサー編集部員。憧れの女史は、石田ゆり子さまと本上まなみさま。ずぼら脱却にお茶か日舞を習ってみようかと思案中。最近気になる被写体の組み合わせは「おじさんと犬」。

終わりに

廣瀬 文_image

私も触らせてもらいましたが、小ぶりで可愛いいでたちながらズッシリと重みを感じさせるカメラです。そして、試しに撮影させてもらいましたが、やっぱり使い慣れていないせいかほとんどピンぼけ(笑)。成松さんはさすが持ち主、雰囲気のある写真が撮れていました。コツをおさえないと使いこなせない。これも、愛着のわくポイントなのかなとも感じた一品でした。

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