ご当地インク×万年筆イラストで全国旅気分。万年筆画家・サトウヒロシが描く「長崎県」編

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絵/サトウヒロシ
写真/新澤 遥
構成/ミューゼオスクエア編集部

連載「ご当地インク×万年筆イラストで全国旅気分」では、『万年筆ラクガキ講座』の著者で万年筆画家のサトウヒロシさんに、各地のご当地インクを使ってその土地の名産品や観光名所などのイラストを描いてもらっている。

その地域ならではの美しい風景やおいしい食べ物などをイメージして作られる「ご当地インク」。全国47都道府県の制覇を目指して、引き続きコツコツと収集していく。

今回ご紹介するのは、長崎県「石丸文行堂」のご当地インクシリーズ「カラーバーインク」。

サトウヒロシさんが描く旅の素敵なワンシーンとともに、作り手の想いを載せて巡るご当地インク旅。いざ行ってみましょう!

ボリューム感がたまらない!肉汁たっぷりの佐世保バーガー

1883年創業、長崎県長崎市に本店を構える文房具専門店「石丸文行堂」。今回は、こちらのご当地インク「カラーバーインク」のカルーア・ミルク、ブル・ショット、ピンク・スクァーレルの3色を使って、名物・佐世保バーガーを描いてもらった。プクッとしたバンズに肉汁たっぷりのベーコンとハンバーグ、今にもとろけ出しそうなチーズ……、目にも美味しいハンバーガーをサトウヒロシさんは、どのように描かれたのでしょう? 動画を観ながらチェックしてみて!

写真/サトウヒロシ

写真/サトウヒロシ

▶︎をクリックすると、絵の制作動画が再生されます

サトウヒロシさん:絵は描きたい絵柄を描くのが楽しいです。同じくらい描きたい「描き方」で描くことも楽しみのひとつです。インクというのは画材として描き方の幅が広く、塗りにも線にも対応できる素晴らしい道具です。僕の場合、「今日はインクを泳がせて描きたい気分だ」とか「線をゴリゴリ重ねていきたい気分だ」とか日によって描きたい描き方が変わるので、常々インクで描いていてよかったと思っております。

そして今、僕は「線でゴリゴリ」ハンバーガーを描きたいと思いました。今回は長崎がテーマなのでこれは佐世保バーガーしかない、と主役はアッサリ決まりラフを考えます。大きなベーコンを2枚はさんだボリューミーなハンバーガー。しかし、それだけではどうにも「長崎感」が薄い。あれか、ラフだからわからないのかな?本番と同じ道具で試作品を作ってみよう。

Drillogをドボンと「ブル・ショット」に沈めて黒々しいハッキリとした線で輪郭を引く。さらに「カルーア・ミルク」のブラウンを「ブル・ショット」の線の上に重ねつつ、立体感や質感を出す線を増やし、トマトとベーコンには「ピンク・スクァーレル」のピンクの線を乗せていく。

おお、線だけの仕上がりだと大変テキトーな……その辺に転がっている3色ボールペンで描いたラクガキのようだ(笑)。

もちろん、ここで完成するわけではありません。100円ショップで買った化粧用のスプレーで水をたっぷり吹きかけ、描いた線画をドロドロに溶かします。ティッシュでインクと水分を拭き取ると、そこにはボンヤリしたハンバーガーらしきものが残ります。

この工程を「色洗い」と名付けました。ぼんやりしつつも薄っすらと線画が残っている状態。バンズやレタス、ベーコンにパテ、ケチャップもなんとなく雰囲気は出ています。が、明らかに水で色が落ちた不完全な絵です。

さて、ここからが本番。「色洗い」は下地を作る工程として考えます。ここから本気の線画を重ねます。そう、2度目の線画。

するとどうでしょう。下地の上にもう一度線画が描き込まれたことで、まるでエッチングのようなタッチになってきました。エッチングはクッキリとした線とインクが掠れた汚れが味ですよね(→中学時代にやったエッチングの原風景を元に発言しています)。「色洗い」で薄っすら残った線とボケたインクがきっとそんな印象を作っているのでしょう。味です味。味が出るんですよ。

バーでカクテルを楽しむように、気分に合わせて色を選んで

左から「<a href=https://ishimarubun.shop-pro.jp/?pid=121177652 target='_blank'>No.70 ブル・ショット</a>」、「<a href=https://ishimarubun.shop-pro.jp/?pid=155124533 target='_blank'>No.82 ピンク・スクァーレル</a>」、「<a href=https://ishimarubun.shop-pro.jp/?pid=121177439 target='_blank'>No.4 カルーア・ミルク</a>」各23ml・¥1,320(税込)/カラーバーインク(石丸文行堂)

左から「No.70 ブル・ショット」、「No.82 ピンク・スクァーレル」、「No.4 カルーア・ミルク」各23ml・¥1,320(税込)/カラーバーインク(石丸文行堂)

MuuseoSquareイメージ

サトウヒロシさん:偶然ですが、選んだインクが良い仕事をしてくれました。「カルーア・ミルク」は原液だと赤みのあるブラウンで、ボケると黄味が広がりレトロ感のあるセピア調になります。「ブル・ショット」はぼかすと青味のある大人っぽいブラック。「カルーア・ミルク」と混ざることで少し錆味が出るんです。それがレトロ感をより強く出します。「ピンク・スクァーレル」は一見派手な色ですが、他2色と絡むことで色気のあるベーコンカラーを演出してくれました。佐世保バーガーの特徴なので、良い塩梅でアクセント色に。

さぁ、できた!……と思ったら、やっぱりただのハンバーガーの絵なんですよ。きっと佐世保バーガーと気がついてくれるのは地元の方だけです。あと、旅行気分を味わう絵としては少々もの足りない。

じゃあ、何を足そうか、どうせなら絵の完成度を上げるものにしたい。

「色洗い」の弱点は画面が全体的にルーズになること。ボケたり滲んだりはみ出したりと、味は出るけど「締まり」がない。ということで、クッキリとした線画の背景と組み合わせることにしました。ええ、ハウステンボスですよ。ど真ん中でいきましょう。下書き無しで、背景にゴリゴリ線画を加えていきます。描き込み多めでとにかく手数。それにしても「カルーア・ミルク」は万能色だなぁ。線でも面でも単色でも魅力が光ります。

ルーズでレトロなバーガーとシャープな線のハウステンボスが組み合わさり、味覚と土地を絡めたハーモニーが生まれ、「佐世保バーガー」になりました。どうぞ、召し上がれ!

▶︎をクリックすると、絵の制作動画が再生されます

長崎最大の品揃え!県内各地のいいものが集まる文具店「石丸文行堂」

MuuseoSquareイメージ

長崎県に5店舗を展開する石丸文行堂。長崎市の本店では、県内随一の品揃えで「ながさきのイイモノ再発見」をコンセプトに、厳選された地元のイイモノが集結! 万年筆や手帳、レターセット、画材まで揃う。また、カラーバーインクをはじめとするオリジナル製品も豊富で、店舗だけでなく、オンラインショップでも購入できる。

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最後に石丸文行堂の広報・宮崎さんよりコメントをいただきました!

お酒好きな弊社社長と社員の声から生まれたカラーバーインク。全88色で、世界中に実在するカクテルをモチーフに作られています。実は、70番以降の企画開発を担当しているスタッフは普段お酒を飲みません。カクテルの成り立ち、レシピ、色味……華やかなカクテルの世界をカラーバーインクを通して美味しく味わっています。お酒を飲む人飲まない人、すべての人に色とりどりのインクで、手書きの世界を楽しんでもらいたいです。

88色のカラーバーインクの中には、皆様が一度は飲んだことのあるカクテルが必ず見つかるのではないでしょうか? 豊富なメニューの中から、お気に入りのインクと出会っていただけると嬉しいです。

万年筆画家・サトウヒロシさんの著書をご紹介

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万年筆ラクガキ講座

安価で書きやすい万年筆と多彩なインクが数多く登場している今、本誌では基本的な万年筆の使い方や道具の知識、ラクガキの表現方法、上達の快楽を150点以上の図版を交えながら紹介しています。
さらに、万年筆インクカタログ全113色や作品(解説付き)約20点を盛り込んでいます。誰でも描けるシンプルな線や丸がちょっとした技法を加えるだけでユニークな表現になり、そして楽しい作品にもなる。
そんな「万年筆ラクガキ」の楽しい世界にあなたもどうぞ踏み込んでみてください!

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公開日:2022年8月24日

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ミューゼオ・スクエア編集部

モノが大好きなミューゼオ・スクエア編集部。革靴を300足所有する編集長を筆頭に、それぞれがモノへのこだわりを強く持っています。趣味の扉を開ける足がかりとなる初級者向けの記事から、「誰が読むの?」というようなマニアックな記事まで。好奇心をもとに、モノが持つ魅力を余すところなく伝えられるような記事を作成していきます。

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