ご当地インク×万年筆インクで全国旅気分。万年筆画家・サトウヒロシが描く「広島県」編

ご当地インク×万年筆インクで全国旅気分。万年筆画家・サトウヒロシが描く「広島県」編_image

絵/サトウヒロシ
写真/新澤遥
取材・文/ミューゼオ・スクエア編集部

いつだったか、サトウヒロシさんがコッペパンを描くのを間近で見させてもらったことがある。インクがスルスル〜と広がって、サッサッサッとあっという間に完成。
あれ、これなら絵が苦手な私でも描けるんじゃないかしら?なんて、水筆とインクを手に描いてみた(もちろんそんなにすぐに上手くはいかないが、なんとなく形になって嬉しくなった)。

サトウヒロシさんの絵は、そんな風に「ちょっとやってみたいな」「始めてみようかな」と思わせてくれる。

連載「ご当地インク×万年筆イラストで全国旅気分」では、『万年筆ラクガキ講座』の著者で万年筆画家のサトウヒロシさんに、全国のご当地インクを使ってその土地の名産品や観光名所などのイラストを描いてもらっている。

今回ご紹介するのは、広島県「多山文具」のご当地インクシリーズ「COLOR TRAVELER(カラートラベラー)」。

サトウヒロシさんが描く旅の素敵なワンシーンとともに、作り手の想いを載せて巡るご当地インク旅。いざ行ってみましょう!

似島バウムクーヘンに西条酒蔵。日本が誇る広島の名物と趣ある風景

広島県にある創業1897年(明治30年)の老舗文具店「多山文具」。今回は、同店オリジナルインクシリーズ COLOR TRAVELERの「似島バウムクーヘン」「西条酒蔵ブラック」の2色をご紹介。インクの名の通り、色のイメージとなったバウムクーヘンと酒蔵を描いてもらった。

さっと試し書きしても濃淡のキレイなイエローとブラックだったが、この絶妙なグラデーションと立体感はどうやって描かれたのだろう?動画を観ながらチェックしてみて。

写真/サトウヒロシ

写真/サトウヒロシ

▶︎をクリックすると、絵の制作動画が再生されます

「COLOR TRAVELERシリーズはインクのひとつひとつに、広島の名所や名産の名前が付いています。似島バウムクーヘン、西条酒蔵ブラック、それぞれの名称からテーマを組み合わせて画面構成を考えました。

バウムクーヘンの描画には、DRILLOG(ドリログ)というつけペンを使用しています。金属製のガラスペンのようなペンで、好きなインクで均一な線(このペンは0.5mm幅)を描くことができます。基本はバウムクーヘンの層をドリログで描き、水でなぞるようにぼかすと、ほどよく色が滲み、バウムクーヘンの質感と柄が浮かび上がってきます。

西条酒蔵ブラックで描いた酒蔵のなまこ壁と瓦屋根は『色流し』という技法で描いたグラデーションにホワイトやインクを重ねて柄と立体感を表現しています。ホワイトはコンビニでも入手できる『ぺんてるペン修正液』極細です。普通に握って使用すると作画用としてはコントロールが難しいのですが、定規をあてて直線を引くとキレイに太い線が描けます」とサトウヒロシさん。

色の濃淡が美しい「多山文具」のご当地インク。サトウヒロシさんのインクレビューとともにお届け

MuuseoSquareイメージ
<a href=http://tym-st.com/?pid=156024181 target='_blank'>似島バームクーヘン</a>、<a href=http://tym-st.com/?pid=156289263 target='_blank'>西条酒造ブラック</a>[30ml スポイト・小瓶・ラベルと色の説明カード付き]¥2,200(税込)/多山文具

似島バームクーヘン西条酒造ブラック[30ml スポイト・小瓶・ラベルと色の説明カード付き]¥2,200(税込)/多山文具

サトウヒロシさんのインクレビュー▶︎COLOR TRAVELER「似島バウムクーヘン」

「お菓子やケーキ、パイ生地、パンなどを描く上でもはや必須となっているインクです。程よい焼き目とインクを水でのばした際のイエローが、まさしくバウムクーヘンが持っている色彩の色幅で設計されています。食べ物の絵を描きたい方には必須のインクとしてオススメしたい」

安芸小富士の愛称で親しまれている似島は、第一次世界大戦後に日本初のバウムクーヘンが焼かれたと言われている。濃淡のあるイエローで、表面の焼き色と内側の白い生地の色が表現されている。

サトウヒロシさんのインクレビュー▶︎COLOR TRAVELER「西条酒蔵ブラック」

「酒蔵のなまこ壁の色をテーマに作られたインクとのこと。黒といっても黒々強いわけではなく、やや浅めでちょうど光があたっている時のなまこ壁や瓦などの色に近い色味です。グラデーションをかけるとうっすら温かみを帯びて、よりリアルな酒蔵の色合いとなります。作画で使用する際の感覚としては、黒とグレーの間くらいで『強すぎない黒が欲しい時』に使いやすいでしょう」

東広島市の西条は、日本有数の酒処。吟醸造りの基礎がここで生まれ、「吟醸酒のふるさと」と言われている。酒蔵の白に映えるなまこ壁の黒色を表現されたそう。

MuuseoSquareイメージ

「COLOR TRAVELERシリーズは、どのインクも水、水筆との相性が良く、『ぼかし』『色抜き』などの技法がとっても活かせます。水のスパッタリングで似島バウムクーヘンにテクスチャを入れれば、スポンジやシュークリームの表面の質感が出せますし、西条酒蔵ブラックであれば、古びた瓦の表現などにも応用できそうです。今回描いたバウムクーヘンは、万年筆やガラスペンでも描くことができます。一枚一枚、層の線を重ねていくのはとても楽しいので、是非試してみてください」とサトウヒロシさん。

地域に根ざしたお店づくり。広島県「多山文具」

多山文具のイメージキャラクター「タヤマン」

多山文具のイメージキャラクター「タヤマン」

多山文具は、広島県の本通ヒルズ店をはじめとする5店舗を展開(内1店舗は香川県)。文房具の専門性を維持しながら、地域に根ざしたお店作りをしている。ご当地インクはもちろん、広島県ならではの便箋や筆記具、イメージキャラクター「タヤマン」グッズなど、同店でしか手に入らないオリジナリティ溢れる文具が揃う。

名入りサービスもあり、万年筆やボールペン、ファイルなどのさまざまな文具に入れられ、プレゼントやお土産にもオススメ。

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最後に多山文具のPRご担当者さまよりコメントをいただきました!

「COLOR TRAVELERは、企画の段階でコンセプトはしっかり固めたいと思っていました。そんな中でふと、旅先でウィスキーロックを飲んでいるシーンと誰かに手紙を書くシーンが思い浮かび、COLOR TRAVELERインクの核となる『タイムフォーウィスキー』というインクが生まれました。そこから旅先にも携帯してもらいたいと、インクを小分けできる空の小瓶を付けたり、インクを移すためのスポイトを付けたりと、ドンドン構想がまとまり、ベースが出来上がりました。

旅先の町や歴史、特産物やご当地品、旅への携行品など、旅にまつわるものをコンセプトに、店舗を構える広島県や香川県にちなんだ色の展開をしています。現物に近い色を色調し、色数が増えれば似ないように気を付けています。また他のインクではあまりない、スポイト、小瓶、ラベルと色の説明カードの付属品を付けているのも特徴です。

現在(2021年9月)23色展開で、きっとお好みの色が見つかると思います。是非一度お試しください」

ーおわりー

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多山文具

多山文具は、広島県の本通ヒルズ店をはじめとする5店舗を展開(内1店舗は香川県)。文房具の専門性を維持しながら、地域に根ざしたお店作りをしている。ご当地インクはもちろん、広島県ならではの便箋や筆記具、イメージキャラクター「タヤマン」グッズなど、同店でしか手に入らないオリジナリティ溢れる文具が揃う。

名入りサービスもあり、万年筆やボールペン、ファイルなどのさまざまな文具に入れられ、プレゼントやお土産にもオススメ。

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万年筆ラクガキ講座

安価で書きやすい万年筆と多彩なインクが数多く登場している今、本誌では基本的な万年筆の使い方や道具の知識、ラクガキの表現方法、上達の快楽を150点以上の図版を交えながら紹介しています。
さらに、万年筆インクカタログ全113色や作品(解説付き)約20点を盛り込んでいます。誰でも描けるシンプルな線や丸がちょっとした技法を加えるだけでユニークな表現になり、そして楽しい作品にもなる。
そんな「万年筆ラクガキ」の楽しい世界にあなたもどうぞ踏み込んでみてください!

公開日:2021年9月7日

更新日:2022年6月6日

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ミューゼオ・スクエア編集部

モノが大好きなミューゼオ・スクエア編集部。革靴を300足所有する編集長を筆頭に、それぞれがモノへのこだわりを強く持っています。趣味の扉を開ける足がかりとなる初級者向けの記事から、「誰が読むの?」というようなマニアックな記事まで。好奇心をもとに、モノが持つ魅力を余すところなく伝えられるような記事を作成していきます。

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