<町田忍コレクション>ご当地薬の世界

取材日: 2016年3月7日

文・写真 / 本多祐斗

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薬と歴史。薬の歴史は長く、その歴史的背景の面白さに惹かれてご当地薬を集めている町田さん。「薬」という漢字は草冠に「楽しい」と書く。集めていて楽しいと語る、町田さん。35年前、全国を回っている時に京都の薬局で知らない薬があったことがきっかけで、ご当地薬を集め始めたという。

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遠出してまで集めるご当地薬の魅力とは。

ご当地薬のほとんどは江戸時代もしくはそれ以前から作られているものが多く、その歴史は薬毎に様々である。その「歴史」を知ることが面白いと語る。明治時代に入り、西洋の薬が輸入されるようになってから、日本の伝統薬は減る一方だったという。
町田さんが歴史的背景で特に面白いという、有名な正露丸。52種類あり、本来の文字は「征露丸」。日露戦争時に「ロシアを征する」ということから軍によって製造された胃腸薬である。
他の魅力としてはユニークな名前である。昔は「温かいうどんを食べると風邪が治る」と言い伝えられており、うどんや風一夜薬(関西)やそばや風一夜薬(東京)といった薬も作られている。実に聞き慣れない名前だ。当時、それぞれの薬がうどん屋さんやそば屋さんに配置薬として置かれており、食べに来たついでに薬を買っていたという。戦後に薬事法が改正され、売られなくなってしまった。他に面白い名前でいうと、「首より上の薬」といったものもあった。

「正露丸」は数多くの会社から発売されてきた。

「正露丸」は数多くの会社から発売されてきた。

昭和30年代以降の配置薬。名前とデザインが特徴的なものが多い。

昭和30年代以降の配置薬。名前とデザインが特徴的なものが多い。

便秘になると、頭がボーッとなることから名付けられた便秘薬である。

便秘になると、頭がボーッとなることから名付けられた便秘薬である。

「全ての薬を自分で集め、だいたい実際に試した。」

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他のコレクションは人からもらったものもあるが、ご当地薬は全て自分で集めたという。集める上で大変だったことは東京を除いて、行くのが遠いこと。そして薬なので、食品などと違い、ガードが固い。そこで町田さんはその薬に関しての知識をこぼすことで、只者ではないことを相手に知らせるそうだ。(笑)
町田さんは集めた薬を実際に試してきた。普段は陀羅尼助と三光丸などの胃薬を中心に使用しているそうだ。集めてきた薬の価格帯はだいたい1000円程のものが多く、中には何万円かするものもあるという。

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♦︎陀羅尼助(だらにすけ)とは♦︎

奈良県のご当地薬。1300年の歴史を持つ日本古来の民間薬。主に食欲不振や二日酔い、食べ過ぎなどの症状に効くとされる胃薬。陀羅尼助の名は密教の経文「陀羅尼」からとったという説がある。1300年ほど前に疫病が流行した際、大峰山 の開祖「役行者」がこの薬の元となる製法を教え伝え、多くの人々を救ったとされている。大峰修行の山伏たちは、長く厳しい修行中の持薬として愛用していた。
陀羅尼助は、日常的には「だらすけ」と呼ばれることが多い。

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♦︎三光丸(さんこうがん)とは♦︎

奈良県のご当地薬。三光丸が誕生したのは今から700年ほど前。胃弱、食べすぎ、食欲不振、飲みすぎ、もたれ、胃部・腹部膨満感、胸やけ、胸つかえ、はきけ、嘔吐などの不快な症状に効くとされる胃薬。三光丸の当主、米田家には、数百年前に記された薬の『秘伝書』が伝えられており、それを見る限りでは、当時から現在にいたるまで、原料と配合比にはほとんど変化がなく、はるか昔から、三光丸がすでに完成された薬だったことを物語っている。

数あるご当地薬の中で、「陀羅尼錠」がお気に入りだという理由とは。

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約60個のご当地薬の中で町田さんが特にお気に入りなのが陀羅尼助だと語る。陀羅尼助と言っても何種類かあるが、全ての陀羅尼助が好きだという。理由としては修験者が広めた薬ということで、歴史的背景が面白いという。陀羅尼助の中でもお気に入りなのが奈良吉野の藤井利三郎薬房の陀羅尼助。歴史が長く、トレードマークである一本足蛙がお店に置いてあったのが気持ち悪くインパクトがあったそうだ。(笑)
町田さんは今、鳥取と島根で入手したい薬があるそうで、入手したらその薬についても知りたい。

藤井利三郎薬房(奈良県)の陀羅尼助。

藤井利三郎薬房(奈良県)の陀羅尼助。

大師陀羅尼製薬(和歌山県)の大師陀羅尼助錠。

大師陀羅尼製薬(和歌山県)の大師陀羅尼助錠。

大峯山陀羅尼助製薬(奈良県)の陀羅尼助丸。

大峯山陀羅尼助製薬(奈良県)の陀羅尼助丸。

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取材ライターが感じたひと言

具合が悪くなった時に飲む薬ですが、ご当地薬にそれぞれの歴史的背景がありました。そのストーリーを町田さんからお話を聞き、もっと他の薬の歴史も知りたくなりました。また、パッケージのデザインや名前も独特なものが多く、今ではご当地薬について無知だった僕が、薬の名前からどんなパッケージかをだいたい覚えてしまいました。(笑)個人的にインパクトがあったのは三光丸の小さなパッケージです。「これが薬なの?」と思わず、突っ込みたくなるパッケージでした。また、ご当地薬は大手薬品メーカーではなし得ないデザインも魅力の一つです。薬局に行った際は、どんな薬が置いてるか見てみようと思います。

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