あらゆる階級、あらゆる職業の人びとを撮った肖像写真を集め、当時のドイツ社会を描き出そうとしたアウグスト・ザンダーの未完のプロジェクト〈Menschen des 20.Jahrhunderts〉。図版は「農民」「職人・手工業者」「女性」「職業と社会的地位」「芸術家」「大都市」「最後の人間たち」の7グループに分類されています。クラシックな装いが自分の好みにあてはまっているということもありますが、それだけではありません。この写真集は特段気取ってはいない、仕事や生活に溶け込んだ装いを写し出しています。
3人の若い農夫がドレスアップしています。歩くのはあぜ道。シルクハットを斜に被った左側の男のステッキは彼の背丈には少々不釣り合いなようです。3人合わせてトラウザーズの裾が長く、おそらくは借り物なのでしょう。サイズが合っていないにも関わらず、彼らの目には光があり、どこかハングリーさを感じさせます。
TWTG(注:THE WAY THINGS GOの略称)の経営企画をしている真希さん(School of the Art Institute of Chicago 写真学科を首席で卒業)の影響でこの本を手にしました。当時、靴磨き職人として起業をして1年ほど経った時でした。
アウグスト・ザンダーはわざとらしいポーズを依頼したり、何か作為的な効果を狙うことをしませんでした。冒頭にも述べたように被写体の装いはいたって自然。だからこそ、職業やライフスタイルがくっきり浮かび上がっているように思います。僕が着ているスーツやジャケットは靴を磨きやすいようビスポークで仕立て、腕の可動域を多くとっています。この写真集のように装いから靴磨きの奥深さを感じていただけたら嬉しいです。
東京店には(レプリカですが)写真を飾っています。お店にいらっしゃる際はそちらにも目を向けてみてください。これはお客様から教えていただいたのですが、ファッションデザイ ナーの山本耀司もアウグスト・ザンダーから影響を受け、コレクションの土台としているようです。
ーおわりー