万年筆の書き味を決める重要パーツ。ペン先の奥深さを学ぶ

取材日: 2018年1月11日

文/ミューゼオ・スクエア編集部 写真/佐々木 孝憲

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わずか数センチ。万年筆のペン先には各ブランドのこだわりや技術が凝縮されている。この記事ではペン先の名称や用途に合わせた太さ、ブランドごとのデザインまで、ペン先のみに絞って深く掘り下げていく。ブランドのこだわりが反映された万年筆の世界を堪能してみよう。

MuuseoSquareイメージ

まずは押さえておきたい。ペン先の名称とデザイン

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ペンポイント

文字を書く際、紙に当たる部分。先端が磨耗するため、イリジウムなどの耐摩耗合金が使われる。使い続けると、ペンポイントが削れて自分好みの書き味になってくるという楽しみ方もある。

スリット

インクが通る場所。毛細管現象(細い空間を液体が移動する)によってインクがペン先に移動する。ペンに弾力を与える効果もある。

ハート穴

穴の形や大きさによってペン先の弾力に違いが出てくる。このハート穴よりペン先の部分を弾力部と言い、軸の部分を固定部と呼ぶ。このハート穴からペンポイントまでの距離が長いほど柔らかい書き心地になる。また、ハート穴から空気を取り込むことで、インクはスリットを伝いペン先へと流れていく。

ペンマーク

ブランドごとに、個性豊かなデザインが施されている。また、どのような素材で作られているのかわかるようになっている。

万年筆の顔!ペンマークを眺める

どのブランドも書き味を追求しつつ、デザインにも妥協していない。ロジウムなどでメッキを施しバイカラーにしている万年筆もあれば、金の配合率を変えて深みのある金色を出しているものも。一口にペン先のデザインといっても、さまざまなバリエーションが存在している。

PELIKAN(ペリカン)

PELIKAN(ペリカン)

PARKER(パーカー)

PARKER(パーカー)

MONTBLANC(モンブラン)

MONTBLANC(モンブラン)

WATERMAN(ウォーターマン)

WATERMAN(ウォーターマン)

少しマニアックなペン先の歴史

ヨーロッパで7世紀から約1000年以上使われ続けた羽根ペンは、耐久性が低くすぐに使えなくなってしまうものだった。

18世紀になり、アメリカのハリソンは薄い鉄板を加工してペン先として使うことを考える。これが金属ペンの始まり。

ところが、素材の鋼鉄は当時使われていた酸性のインクに侵食されてしまう問題があった。金を使うことが解決策だったが、鉄に比べ磨耗しやすい金を使い続けることは難しかった。

ずっと使い続けられる金ペンが実現したのは、1804年に発見されてイリジウムによって。それをペン先につけたホーキンスがイリジウム付き金ペンを1852年に発明。長期間使用できる耐久性を兼ね備えたペン先が生まれることとなった。

万年筆が流れるようにかける仕組みの話

毛細管現象と気液交換作用を利用した内部の構造にある。

毛細血管現象とは、液体中に細い管(毛細管)を立てると、管内の液面が管外の液面より上がる現象。万年筆は液体が、管や繊維などの空間へ重力に関係なくより細い方へ移行する現象を利用している。軸の内部に蓄えたインクを毛細管現象を使ってペン先へと導き、ペン先と紙が接触すると紙の繊維にインクが引かれることで文字が書ける。

インクをスムーズに紙面に導くには、出たインクと同じ量の空気の内部に入れる必要がある。このため、ペン芯にはインクが通るインク溝と空気を取り入れる空気溝がある。

金とスチールで何が変わる?ペン先の素材の話

万年筆のペン先に使われている素材は、大きく分けて金とスチールの二つ存在する。一般的には、金が使われている方が万年筆らしい、柔らかい書き味になると言われている。

柔らかいと、紙に擦れる時の衝撃を吸収してくれるので、長く書き続けていても手が疲れない。金の含有量が増えれば増えるほど、書き味は柔らかくなってくる。

また、金はサビに強く高価なモデルに使用されることが多い。一方、廉価な万年筆にはスチールのペン先が用いられていることが多い。金に比べると固めで、カリカリとした書き味になる。

どちらが良い悪いということはなく、使う人がどういう書き味を求めているのかによって使いやすさは異なる。万年筆らしい書き味を求めるならば、金のペン先がおすすめだ。

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用途によって使い分けたい。ペン先の太さの話

万年筆を選ぶ時に大きくポイントになってくるのは、ペン先の太さだろう。極細(EF)や細字(F)が手帳に細かく書くのに適しているのに対し、太字(B)以上はサインを書くのにうってつけだ。まずは用途を決めるのが、扱いやすい万年筆を選ぶ近道になる。

ブランドによって異なるが一般的にはペン先が太ければインクがぬらぬら出るのに対し、細いとカリカリとした書き味になる。また、海外製は同じ表記でも日本より太めに作られている。書き味自体は人それぞれ好みがあるので、まずは万年筆を取り扱うショップに行って試し書きをさせてもらうのがおすすめだ。

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