彫りが細かく美しいイタリア製スタンプ|堤 信子さんが語る、受け継がれていくStationery

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取材・文/倉野路凡
写真/新澤遥

「文房具って小さい頃は自分自身を自由に表現できた数少ないアイテムだったと思うんです。それが大人になるにつれ、時計やバッグなど興味を持つものが変わり段々と疎遠になっていく。大多数の人はそうなると思うのですが、私はいまも変わらず文房具にときめいています」と言うのは、エッセイストでありフリーアナウンサーの堤信子さん。

文房具好きは業界でも有名で、海外のアンティークから職人の技を感じられる逸品までさまざまな文房具を集めているそう。当連載では、そんな堤さんが愛用・所有している貴重な文房具たちを、それぞれに繋がる文具愛ストーリーとともにご紹介していきます。

今回は「彫りが細かく美しい」と集めているイタリア製のスタンプについてお届けします。

美しい書体に惹かれてイタリアのスタンプを収集

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——これまで3回にわたり、筆記具や紙製品についてお話をお聞きしましたが、今回はスタンプですね。堤さんは、スタンプもお好きなのですか?

はい、古いスタンプを包装紙や無地の紙に押して日々楽しんでいます。日本とイタリアのスタンプを中心に集めていて、今回はイタリアのスタンプの中から厳選して持ってきました。日本のスタンプは繊細というか、とても細かくて優秀です。吉祥寺にヨーロッパの文具を輸入しているGiovanni(ジョヴァンニ)というお店があって、そこに行くと様々なスタンプに出会えますよ。なかでもイタリアのスタンプは書体が美しいものが多く、さすがスタンプにおいても美を追求している国だと思います。

——イタリアにもおすすめのスタンプ専門店があるそうですね。

ミラノに親戚がいて、定期的に遊びに行くのですが、私が文房具好きということを知っていて、スタンプ専門店に連れて行ってくれたのです。200年前からラバースタンプを作っている老舗で、“芸術家の足跡”を意味するImprone D'autore(インプローネ ダウトーレ)というお店。店内の壁一面にスタンプが飾られている素敵なお店ですよ。私の最初の文房具の本『旅鞄いっぱいのパリ・ミラノ~文房具と雑貨のトラベラーズノート』の中でもご紹介しています。

素晴らしい絵柄のスタンプの他に、

Buon natale(メリークリスマス)
Congratulazioni(おめでとう)
Grattugiare(ありがとう)
Buona Pasqua(イースターおめでとう)

という4つの美しい書体に惹かれてしまい、たくさん買ってしまいました。

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こちらの苺のスタンプを見てください。陰影が繊細に表現されているでしょ。押してみると細い線までくっきり出るのがイタリアスタンプの特徴です。

アンティークのスタンプは、愛情を持って探すことが大切

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——こちらはアンティークのスタンプですか?

蚤の市で見つけたもので、あまりの愛らしさに日本に連れて帰りました(笑)。シーリングスタンプと呼ばれるもので、封筒を封印する際に使うスタンプです。デザインはすずらんの花を模したもので、ベースは真鍮製です。このような昔の貴族が使っていたような文房具が大好きなのです。蚤の市の場合、文房具は点在していることが多いので、根気よく探さないと掘り出し物には出会えませんね。あと、店主は扱っている商品に愛情を持っていますから、こちらも愛情を持って探すことが大切。買った商品をより詳しく知りたい性格なので、帰国してから自分でいつどこで作られたものなのか調べています。それがとても楽しい時間なんですよね。

——紙好きの堤さんにとって、スタンプは欠かせない文房具ですね。

そうです(笑)。紙がないとスタンプも活きませんからね。ハガキや手紙に押すだけではなくて、紙ナプキンに押してテーブルコーディネートするなど、日常の暮らしにすっかり溶け込んでいます。スタンプ一つで友人や家族を楽しい気持ちにしてくれる、まさに魔法の文房具だと思っています。

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——スタンプを押すだけで、無地の紙もオリジナリティが出て楽しめそうですね。本日はありがとうございました。

堤信子さんの著書はこちら

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旅鞄いっぱいのパリ・ミラノ —文房具・雑貨のトラベラーズノート

著者が足繁く通ったパリとミラノ、その2大都市を巡る初めての文房具の旅日記。フランスやイタリアにはこだわりをもった専門店が多く、 生活文化や歴史を感じる品々を惜しみなく600点以上も掲載! 知る人ぞ知る店や誰にも教えたくないスポットをはじめ、紙のアンティーク市や切手市、郵便局まで幅広く紹介。また、彼女ならではの旅の余韻を楽しむ方法も。テーマを持った旅の本であり、MONO本としても活用できる。新しい旅の楽しみ方を提案する1冊!

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堤信子のつつみ紙コレクション

人気テレビ番組でその紙マニアぶりをいかんなく発揮し、一躍話題となった紙収集家の堤信子が40年かけて集めた紙1046点を一挙公開!

包み紙、紙袋、パン袋、紙箱、切手、カード、エンタイア、レターセット、ビューバー、古書、アジェンダ、コースター、地図など、国内や海外の旅先で出合った、デザインが秀逸なもの、色がきれいなもの、触り心地がよいもの、国や時代の生活文化を反映するものなど、ありとあらゆる紙もののコレクションをたっぷりと紹介します。

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公開日:2022年8月10日

Contributor Profile

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倉野路凡

ファッションライター。メンズファッション専門学校を卒業後、シャツブランドの企画、版下・写植屋で地図描き、フリーター、失業を経てフリーランスのファッションライターに。「ホットドッグ・プレス」でデビュー、「モノ・マガジン」でコラム連載デビュー。アンティークのシルバースプーンとシャンデリアのパーツ集め、詩を書くこと、絵を描くことが趣味。

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