自室を英国のムードで満たすライティングビューローの魅力 ~アンティーク家具世界への招待状~

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文/金山 靖
撮影/深瀬 典子(G.P.FLAG)

コロナ禍でおうち時間が増える中、居住空間を充実させる方も多いと思います。
普段より素敵なカップで紅茶をいただいてみたり、部屋のあかりを変えてみたり、椅子を座りやすいものに新調したり。いつもと違うことをすると気分転換にもなりますよね。
自室の雰囲気を替える為にミューゼオスクエアが提案するのはアンティーク家具です。
歴史ある家具は「ちょっと敷居が高いなあ……」と思われるかもしれませんが、そういう方にもおすすめのアンティーク家具があります。その名も「ライティングビューロー」
アンティーク家具専門店「ジェオグラフィカ」の岡田明美さんにビューローの歴史や魅力を教えていただきました!
多種多様で魅力的なアンティーク家具の世界へご招待します。

無数のアンティーク家具が佇む宝物庫のような店舗で、ライティングビューローを学ぶ

今回訪れた「ジェオグラフィカ」は、イギリスのアンティーク家具を中心に、照明や雑貨なども扱うアンティーク専門店。バイヤーが買い付けた家具は自社工房で丁寧に修復し、アンティークな雰囲気を残しつつ普段使いできる状態に仕上げられて店頭に並びます。

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ダイニングセットや食器棚などに並んで、ここ最近、人気が高まっているのがライティングビューローだそう。

ライティングビューローとは

書き物机と引き出し収納がひとつになった家具。フラップと呼ばれる扉が手前に倒れるように開き、ライティングスペースとなる構造。下部には引き出し収納が搭載されているほか、ライティングスペースの奥に小引き出しや書類ホルダーが搭載されているものもあります。もともとはビューローと呼ばれていたそうですが、17世紀イギリスのチャールズ2世の時代から、今のライティングビューローという呼び名が定着したようです。形状やサイズなど様々なバリエーションがあり、イギリス製のほかにアメリカ製や北欧製などもあります。

「コロナによって、おうちで仕事や勉強をする機会が増えたので、ライティングビューローを探しに来たという方が多いです。一般的なデスクよりもコンパクトで場所をとらないので、デスクを置くスペースがない部屋でも設置できるのがいいですよね。
あとは、インテリアに馴染むおしゃれなものが欲しいと、ライティングビューローを求める方もいます」と岡田さん。

ニュートンも使っていた!? 英国貴族・文化人御用達のおしゃれな文机

ライティングビューローは17世紀のイギリスで生まれたと言われています。
当時、会話以外で、人と人のコミュニケーションは手紙がメインでした。そのため、手紙を書く文机は必需品だったそう。そんな文化の中でライティングビューローは誕生しました。
きっかけとされるのは、貿易会社・東インド会社によって中国や日本の家具・櫃(ひつ)がイギリスに輸入されたことと言われています。その櫃の影響を受けて、イギリスに古くからあった聖書を入れるバイブルボックスが改良されていき、ライティングビューローの形状が出来上がったようです。
どこを取ってもヨーロッパの雰囲気が漂うライティングビューローですが、実は中国や日本にルーツがあるとわかると、グッと親近感が湧きますね。

コンパクトで簡素なデザインのスチューデントビューロー

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ライティングビューローのなかでも、コンパクトでシンプルなデザインをスチューデントビューローと呼びます。その名の通り、学生用に簡素化されたモデルだそう。

「1930年代にイギリスで作られたものです。オーク材で作られているので頑丈なのも特徴ですね。スチューデントビューローは普通のライティングビューローとくらべて作られた数が少ないので、なかなか出会えないんですよ」

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装飾が少なく、シンプルなデザイン。
スリムさを重視した奥行きのないフォルムもいいですね。全体に感じるコンパクトさが、学生らしさを醸し出しています。
下部は棚の収納になっており、大事な書物をたてておけるようになっているのも学生には使いやすそう。フォルムを見ただけで、当時の学生の勉強スタイルが目に浮かぶようです。

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扉を手前に倒すとライティングスペースが現れます。チェアを置けば、書き物をするのにピッタリ。鍵がついているので、扉が勝手に開いてしまわないのもいいですね。こんな雰囲気のあるスペースなら、勉強だけでなく仕事も優雅にできそう。昔の英国貴族のように、手紙を書いてみてもいいかもしれません。

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ライティングスペースの奥は、手紙や書物を立てておける棚が備え付けられており、道具をその棚にしまったまま、扉を閉められます。デスクやダイニングテーブルとは違う雰囲気。昔は棚にインクボトルやペン、手紙を封印する封蝋などを入れていたそうです。お気に入りの小物で飾ってみたくなります。

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ライティングスペースには革が貼られています。この革はもとからあったオリジナルのもの。ビューロー用になめし、シボが入っています。ところどころにインクのシミらしきものやシワなどが散見されます。かつてこのビューローを使っていた人は、ここでどんなものを書いていたのでしょうか。シミ1つからも、そんな想像が膨らみます。

下部が引き出し収納になった、最も一般的なライティングビューロー

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扉の下部が引き出し収納になっているモデル。
「1930年代にイギリスでつくられたもの。素材はオーク材が使われています。下が引き出しになっていますが、ライティングビューローはこの形状が多いですね。引き出しの取っ手の意匠もきれいですよね」

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こちらも、ライティングスペースの奥には書物や道具を入れる棚が設置されています。棚の形状が違うのも、何か意図があったのでしょうか。当時はこの大きさの棚にピッタリなサイズのペンやインクボトルなどがあったのかもしれません。

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ライティングスペースに貼られた革。こちらもきれいになめされて、美しいシボが刻まれています。ライティングビューローの多くはライティングスペースに革が貼られていますが、それは手紙を書くときの下敷き代わりだったそう。

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このモデルは本体がすっきりとしたデザインで、扉をしめるとより家具らしさが増します。扉には鍵がついているので、もし書き物に使わなくなっても、大事なものを入れておく収納家具として使えますね。

クラシック楽器のような趣がある、猫脚のライティングビューロー

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下部に引き出し収納がひとつしかなく、猫脚が美しくのびたライティングビューロー。

「これも、1930年代のイギリス製です。ウォールナット材が素材に使われており、高級感のある細かい木目が特徴ですね。ライティングビューローに限らず、猫脚は女性に人気が高い家具なんですよ」

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このライティングビューローはひとつ、特徴があります。
扉を手前に倒す際、ルーパーという部分を本体から引き出すことで、扉がしっかりと支えられる構造をしています。上記2モデルが蝶番とジョイントで扉を支えているのと比べて、ライティングスペースの空間をより広くとれるのが利点。足元が大きく空いているのは、貴族の女性が長いスカートをはいたままでも使いやすくするためかもしれません。

ライティングスペースの奥には引き出し収納と扉付きの収納があり、かわいらしさがあります。

ライティングスペースの奥には引き出し収納と扉付きの収納があり、かわいらしさがあります。

奥の収納は装飾も、手が込んでいます。ファンタジーな雰囲気の部屋に置いたら、最高に映えそう。

奥の収納は装飾も、手が込んでいます。ファンタジーな雰囲気の部屋に置いたら、最高に映えそう。

引き出し収納はひとつだけですが、取っ手の金具や正面の装飾がとても美しく、開けてみたくなります。

引き出し収納はひとつだけですが、取っ手の金具や正面の装飾がとても美しく、開けてみたくなります。

ウォールナット材の高級な雰囲気と色合いに、猫脚や取っ手の装飾などが調和し、まさに貴族の文机といった雰囲気。コンパクトサイズなのでちょっとした書き物をするぐらいが適した使い方になりそうですが、こんなおしゃれな家具がおうちにあったら、使いたくなりますよね。
上記2モデルに比べ、細部まで凝ったつくりと優美なデザイン、そして柔らかな雰囲気を持つことも特徴的です。

サイズだけでなく形状も様々。ライティングビューローの選び方

ライティングビューローの種類はサイズ違いだけでなく、形状によって大きく3種類に分けられます。1つめはこれまで紹介したライティングビューロー。この中で、よりシンプルでスリムなものはスチューデントビューローと呼ばれます。
2つめはビューローブックケース。ライティングビューローの上に本棚がついたモデル。
3つめはサイドバイサイド。ライティングビューローの両横に本棚がついた横幅が広いモデルです。ここまで読んで、普通のライティングビューローに琴線が触れなかった人は、案外、ビューローブックケースやサイドバイサイドに一目惚れするかもしれません。この2つを解説します。

縦に長く、収納時も本棚として存在感を発揮するビューロブックケース

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ライティングビューローの上部分に本棚がついて、背が高く収納力が増したのがビューローブックケースです。上部の本棚は書物や文房具、小物などいろんな収納に使えます。

「これは1930年代にイギリスで作られたもの。オーク材が使われていて、頑丈です。大きな特徴は下の引き出しが扉になっていること。ライティングビューローで扉になっているものは少ないんですよ」

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ライティングスペースの奥は引き出し収納と棚がついていて、収納力抜群。引き出しにはお気に入りのペンを入れておきたいですね。ライティングスペースは素材がむき出しですが、これが質実剛健な感じで雰囲気があります。
ライティングビューローに比べてビューローブックケースは収納力もあるので、コレクションを並べて飾ってみるのも面白そうです。

両側に収納スペースがあり収納力が高いサイドバイサイド

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ライティングビューローの両横に本棚がついているサイドバイサイド。
ライティングビューローとほぼ同じ高さの本棚がついており、落ち着いたサイドボードのような雰囲気です。

「1930年代のイギリス製。ウォールナット材が使われています。下の引き出し収納と、両サイドの扉収納があり、収納力がありますね。両サイドは本棚にしてもいいですし、リビングでサイドボードとしても使えると思います。必要なときだけライティングスペースを出して書き物や仕事をする使い方もできますね」

サイドバイサイドはライティングスペースはややコンパクトですが、その分収納力があり、普通の家具として普段使いできそう。お気に入りのコーヒーカップや置時計などを飾りたいですね。

インテリアにこだわるなら、やっぱりデザインで選びたい

同じタイプのライティングビューローでも、ライティングスペースの内装や収納など、ひとつとして同じものがないほど多種多様。使用している素材もオーク材やウォールナット材などの違いで雰囲気がガラッと変わります。
だからこそ、何を重視するかを自分の中で決めておいたほうが、ベストな1台に出会いやすいのです。

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先ほど紹介したブックケースビューローよりも装飾が細かく、雰囲気が違います。

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材質によりますが、色濃く出ている木目の感じもアンティーク家具ならでは。
オーク材はくっきりとした力強い木目が特徴で、ウォールナット材のものは年月を経るほど色が濃くなり、全体的に深みを増していきます。
(画像はオーク材)

敷居の高そうなアンティーク家具の中でも比較的挑戦しやすいランティングビューローですが、その独特の存在感は、ひとつ部屋にあるだけで場の雰囲気をガラリと変えてくれるし、どこか心を豊かにしてくれます。
もちろんお店で出会えるライティングビューローの多くは一点もの。お気に入りのビューローを探すのもまた楽しみのひとつです。
ビューローを取り入れたお部屋づくりに挑戦してみてはいかがでしょうか?

(今回紹介した家具はいずれも一点物につき、既に販売済みの物がございます事ご了承ください。)


ーおわりー

File

ジェオグラフィカ

東京・目黒通り沿いに店舗を構える、アンティークショップ。地下1階から3階までの広い店内には、目利きのバイヤーが現地から買い付けてきた家具、照明、アンティーク小物が幅広く豊富に取り揃えられている。購入したアイテムは店舗スタッフが丁寧にアフターサービスの対応をしてくれる。アンティーク家具に囲まれた店内の雰囲気を楽しみながら食事をすることができるカフェも併設。不定期でアンティークにまつわるイベントも開催される。

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公開日:2022年1月12日

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