「照らしすぎない、アメリカのあかり」 連載:あかりと暮らす#04

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イラスト/うえすぎりほ
文/ミューゼオ・スクエア編集部

時にはドラマチックに、時にはロマンチックに。椅子と同じくらい、もしくはそれ以上に照明は空間を変える可能性を秘めています。

照明をメインとしたデザインカンパニー「ディクラッセ」代表の遠藤道明さんは、光の色や光の陰影を大切にして照明などをデザインしています。例えば、木漏れ日のモチーフに影をデザインした照明「Foresti」、シェードに反射した光が天井に向かって広がる「onda」。

家電量販店に電球や照明を買いに行った際、目がチカチカした経験はありませんか?遠藤さんが作る照明はまったくそんなことはなく、むしろ光に包まれるような感覚を覚えます。それはたくさんの照明が吊り下がっているディクラッセのショールームでも変わりません。なにが違うのでしょう。

照明との付き合い方を考えるべく、連載「あかりと暮らす」では遠藤さんがインスピレーションを受けたという欧米のあかりを取り上げます。第四回はアメリカのニューヨーク。照らしすぎないこと。だからニューヨークにはさまざまなバックボーンを持つ人が集うのかもしれません。

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スポットライトをあてるのは、人ではなくテーブル

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ニューヨークのレストランでは、テーブル上40cmに照明が設置されていることが多いんです。なんでだろうと考えていると、ニューヨーカーが教えてくれました。「女性が綺麗に見えるのよ!テーブルに光を当てた反射の光を利用する。直接的な光は顔のシワとか、化粧のノリ具合とか見られてしまうから嫌でしょ? もし、直接的な光なら、私は文句を言うわ!」白いテーブルに光を反射させて、人の顔を照らす。勉強になりました。

照らさないほうがよい時もある

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暗いのはレストランに限りません。階段が暗すぎるので、同行者の手を引いてのぼったこともあります。2004年、展覧会を開催したときのこと。そのSoHoのギャラリーでは連日連夜パーティーが開催されていました。「シャンパンと日本酒を合わせたお酒を作ったので飲みにきてください」「アーティストの新作を披露します」など内容はさまざま。その人からは「パーティーにはとにかく来い」と言われました(笑)。パーティ文化がニューヨークには根付いていました。多くのパーティーでは関係者以外もウェルカムなようです。誰が誰だかわからないくらい暗いからこそ、気軽にパーティーに足を運ぶことができるのだと思います。

いまの話はだいぶ昔のことで、コロナ禍で街の様子は変わっているようです。2020年の3月、ニューヨークに住んでいる知人に連絡をとったら、NYのSoHoの写真を送ってきたんです。その写真には歩いてる人が全くおらずビックリしました。

写真が添付されたメールには「映画のシーンのような静けさで、姿の見えない敵が隠れているようで、不気味な毎日」と綴られていました。いまはどのような状況なのでしょうか。落ち着いてできることを粛々と続けていきたいです。

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写真はとあるレストランで開催されていたパーティーです。(ぶれてしまっていますが)暗いことがわかると思います。このレストランではすごくトイレが賑わっていました。観に行くとガラスで覆われている。全部丸見え。ソファーが置いてあって、そこで次の人は待っている。扉を閉めるとガラスにスモークがかかって光が入って見えなくなる。アメリカは電気が日本みたいに安定していないので、急にショートすることがあるんです。

100年前に建てられたマンションに住んでいることもあるので、電気が切れたり上の階から水が漏れたりすることなんて日常茶飯事。しかも、工事の人が見にきたら「いますぐ修理するのは難しいね。部品が届くのが1週間後だからそれまで待っててくれる」と言われてしまうこともあるみたいです。照明が暗いのはそういった環境も理由の一つなのかもしれません。

ーおわりー

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公開日:2021年7月29日

更新日:2021年10月14日

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ミューゼオ・スクエア編集部

モノが大好きなミューゼオ・スクエア編集部。革靴を300足所有する編集長を筆頭に、それぞれがモノへのこだわりを強く持っています。趣味の扉を開ける足がかりとなる初級者向けの記事から、「誰が読むの?」というようなマニアックな記事まで。好奇心をもとに、モノが持つ魅力を余すところなく伝えられるような記事を作成していきます。

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