「オレンジ色につつまれる、イタリアのあかり」 連載:あかりと暮らす#02

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イラスト/うえすぎりほ
文/ミューゼオ・スクエア編集部

時にはドラマチックに、時にはロマンチックに。椅子と同じくらい、もしくはそれ以上に照明は空間を変える可能性を秘めています。

照明をメインとしたデザインカンパニー「ディクラッセ」代表の遠藤道明さんは、光の色や光の陰影を大切にして照明などをデザインしています。例えば、木漏れ日のモチーフに影をデザインした照明「Foresti」、シェードに反射した光が天井に向かって広がる「onda」。

家電量販店に電球や照明を買いに行った際、目がチカチカした経験はありませんか?遠藤さんが作る照明はまったくそんなことはなく、むしろ光に包まれるような感覚を覚えます。それはたくさんの照明が吊り下がっているディクラッセのショールームでも変わりません。なにが違うのでしょう。

照明との付き合い方を考えるべく、連載「あかりと暮らす」では遠藤さんがインスピレーションを受けたという欧米のあかりを取り上げます。

第二回はイタリア。これがやすらぎのオレンジの光です。

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オレンジに染まるイタリアの夜

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イタリアには毎年2回、2週間ほど滞在します。かれこれ20回くらいは訪れていると思います。毎年4月にミラノで開催されるミラノサローネは、いまは華やかなデザインフェスティバルになっていますけど、僕が最初にイタリアを訪れたときは人影はまばらでした。

イタリアでは街路樹がオレンジ色に照らされてきれいなんです。ビルには石が使われていることが多く、ほとんどがクリーム色です。フランスは石灰石が多く割と白っぽいビルが多いのですが、イタリアはクリーム色。テラコッタが石畳に当たり前のように使われています。照明だけでなく建物も足元も、街路樹もオレンジ色に染まります。

フランスとイタリアは食文化も似ているようでちょっと違います。例えば、フランスでアルデンテのパスタを食べられる場所はほとんどありません。フランス人からすると「半生ですよ」という感覚なのでしょうか。フランス人が好む茹で加減のパスタをイタリア人に出すと「ふやけたパスタはパスタじゃない」と言われてしまうかもしれません。

フロアスタンドをメインの照明に

イタリアに住んでいるある友人の家にはフロアスタンドとテーブルランプしか照明はありません。ペンダントライトすらないんです。しかも、窓が小さいので昼間でも照明を点けてすごしているようです。

広さはだいたい六畳ぐらいなのですが、六畳とは思えないくらい広さを感じます。これは天井に光を当てて間接照明にしているためです。フロアスタンドを部屋の両端に置くと陰影の強い光と弱い光が反射して部屋に広がります。これにより、部屋に奥行きがあるように感じられるのです。同じような照明をペンダントライトで作りたいと思い「onda」を制作しました。

フロアスタンドとデスクランプで生活をしているのはその友人だけではないようです。個人事務所のような部屋をちょっと覗いてみてもフロアスタンドとデスクランプくらいしか置いてありません。イタリアの人々はローマ時代からずっとろうそくを使っていました。イタリアの建物を見ると、壁にブラケットランプがついていることが多いのに気づくと思います。これはろうそくで生活していたときの名残です。

レストランのあかりはひかえめに

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イタリアのレストラン・サバティーニ(Sabatini)です。イタリアのレストランはメニューが見えないくらい暗いんです。ライターを点けても、料理の色がよく分からない時があります。不便なように思う方もいるかもしれませんが、そういうレストランに行くと癒されます。食事の提供はゆっくりで、6~8品ほどのコースでしたら2時間はかかります。

「イタリア人は時間を守らない」とよく言われます。僕の実体験としても、イタリア人との打ち合わせで相手が時間通りに椅子についていたことはほとんどありません。イタリア人に話を聞くと「我々は真面目に時間を守っています」と言う。だけど、駅に行く途中に小学校の友達に会ったり、中学校の友達に会ったりすると15分くらいおしゃべりをするんです。それを5分で切り上げると翌日「大丈夫?なにかあったの?」と心配されてしまいます。「遅れても人間関係を大事にしてるんだからおおめに見てよ」という感覚なんだと思います。

木漏れ日を感じられるのは、調和がとれているから

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写真は2013年、ミラノサローネに訪れたときのものです。木漏れ日と壁の陰影が美しい。バス停の広告を見てください。風景に溶け込んでいます。赤や黄色など原色を使いとにかく目立たせる日本の広告とは対照的です。

ただ、色づかいは広告の話であって、イタリアではアメジストカラーの車が当たり前のように走っています。それでも調和がとれています。理由のひとつとして、作り手の美意識が高いことがあげられると思います。イタリアはデザイナーだけではなく、作り手もセンスが良いんです。

イタリアの作り手は「こっちの方が綺麗に見えるだろ?」とアイデアを出して、デザイナーが考えていたよりももっと面白いものを作ってくれることがあります。日本はデザイナーの仕事と職人の仕事をきっぱり線引きしています。どちらも良し悪しあることは理解したうえで、いつかイタリアで物づくりをしたいです。

—おわり—

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公開日:2021年5月27日

更新日:2021年5月30日

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ミューゼオ・スクエア編集部

モノが大好きなミューゼオ・スクエア編集部。革靴を300足所有する編集長を筆頭に、それぞれがモノへのこだわりを強く持っています。趣味の扉を開ける足がかりとなる初級者向けの記事から、「誰が読むの?」というようなマニアックな記事まで。好奇心をもとに、モノが持つ魅力を余すところなく伝えられるような記事を作成していきます。

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