流(ながれ)工房 創作盆景

流(ながれ)工房 創作盆景_image

取材・文/井本貴明
写真/齋藤創太

自然の風景を切り出す、創作盆景。30展の盆景に、30の風景がよみがえる

盆景作りの楽しさを語る、館長の山本さん

盆景作りの楽しさを語る、館長の山本さん

「子供の頃から物を作るのが好きだった」
流工房「創作盆景」の主人である山本敏明さんは、自身の子供時代を振り返る。
時が経ち、手先が器用な山本さんは、盆栽で利用する植木鉢の中に、自然の風景を閉じ込めることを思いついた。

「始めは、普通に植木鉢の中で植物を育てていました。そこに、ミニチュアの建物や橋を付け加えていたのです。しかし、本物の植物は成長して変化するので、管理をするのが大変だった。それならと、植物を取り除いたのが、今の創作盆景の形の始まりです」

現在では約30点ほどの創作盆景を、自宅の一室に展示して一般公開をしている。
棚一面に置かれている創作盆景の数々を眺めると、何故か懐かしい気持ちになる。まるで、映画「ALWAYS 三丁目の夕日」に出てきそうな住宅や、街の風景が植木鉢の上に再現されているのだ。

創作盆景を作る際のポリシーとは? 懐かしい風景を作るための3つの約束。

細部までこだわって作った茶室。実際の茶室のルールが散りばめられている

細部までこだわって作った茶室。実際の茶室のルールが散りばめられている

山本さんが創作盆景を作る際には、いくつかのポリシーがある。

1つ目は、庭を作ること。
建物だけではなく、庭も一緒に作る。庭を作る事で、盆景に奥行きが生まれる。

2つ目は、人物を入れないこと。
盆景を見る人がいろいろと想像を出来るように、あえて人物は入れないと言う。あくまでも自然の風景が主役である。

3つ目は、自分のイメージだけでは作らないこと。
例えば、茶室の盆景があるが、これは本物の茶室のルールに従って作られている。お茶の世界では、茶室は人と人との距離を縮める役割があり、そのため茶室がだんだん小さくなっていき、基本的な考えとして4畳半の大きさが一般的に浸透している。そして、山本さんが作った茶室は、もちろん4畳半になっている。
山本さんは茶室のルール、伝統を本で学び、盆景の風景に反映させている。

自分だけの楽しみが、気づいたら他人の楽しみにもなっていた

壁一面に盆景が並べられている

壁一面に盆景が並べられている

趣味で始めた盆景は、自分だけの楽しみだった。
とあるきっかけで、地元にある上野市の銀行に盆景を飾ることになった。その盆景が「伊賀まちかど博物館」の目に留まり、流工房「創作盆景」として一般公開をすることになった。

「伊賀まちかど博物館」を通して、各地から盆景を見に来てくれるようになった。
「今までは、自分で作って、自分で楽しんでいるだけだった。まちかど博物館に参加することで、いろいろな展示会で人に見てもらえる機会を与えてもらった。自分が好きで作った物を、他人が喜んでいる姿を見るのが楽しみですね」。今後も盆景コレクションは増える予定だと言う。

最後に、読者の方にメッセージを頂いた。
「自分の好きなことをやっているだけで、あまり深く考えたことはない。それでも、盆景を見てもらって、懐かしい風景に心を癒してもらえたらと思います」

自分が好きな風景を植木鉢の中に表現する「創作盆景」。
誰しもが、自分の好きな風景が心の中にあるはずだ。その風景を形にするのはどうだろうか。山本さんから創作盆景の作り方を教えてもらい、創作盆景を趣味にするのは良いアイデアだと思う。

ーおわりー

田舎にある民家の風景を盆景で再現

田舎にある民家の風景を盆景で再現

MuuseoSquareイメージ

京都の料理屋にある奥まった庭を盆景で再現

京都の料理屋にある奥まった庭を盆景で再現

MuuseoSquareイメージ

盆景だけでなくマツボックリを使ったオブジェも作成している

盆景だけでなくマツボックリを使ったオブジェも作成している

盆景を譲ってほしいとお願いされて、いくつかを譲渡している。その際のお礼状は今でも大切に保管をしている

盆景を譲ってほしいとお願いされて、いくつかを譲渡している。その際のお礼状は今でも大切に保管をしている

File

流工房 創作盆景

自宅の一室に展示されている約30点ほどの創作盆景の数々を眺めると、何故か懐かしい気持ちになる。
作業場での手順も見学でき、興味ある方には製作指導もして下さる。

公開日:2015年6月29日

更新日:2022年6月3日

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井本 貴明

いろいろなWebサービス作っています。 浦和レッズ、ヨーロッパサッカー中心の生活。 何か面白い企画があったら、ぜひ仲間に入れてください! 好きな映画は、「LOST IN TRANSLATION」。

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