拡大する事、覗く事の喜び。「ZEISS フィールドワーク三種の神器」を通して観えてくる、人生の楽しさ。

拡大する事、覗く事の喜び。「ZEISS フィールドワーク三種の神器」を通して観えてくる、人生の楽しさ。_image

文・写真/山縣 基与志

この連載では、モノ雑誌の編集者として数多くの名品に触れてきた山縣基与志さんが「実際に使ってみて、本当に手元に置いておきたい」と感じた一品を紹介します。

今回紹介するのはレンズメーカーZEISSが誇る3つの銘品。双眼鏡『ZEISS 8×20B』、単眼鏡『ZEISS MONO 3×12』、ポケットルーペ『ZEISS D36』。

「拡大する事」を共通の機能とする3種のプロダクトを通して、初めて観えたものとは。山縣さんとZEISS製品との関わりを振り返りながら語って頂きました。

私の原点、自然と共に過ごした小学生の夏休み。

小学生時代はずっと、夏休みに入ると、新潟にある母方の実家にまるまる一ヶ月間預けられた。昭和40年代、東京は高度経済成長の真っ只中。夏場は毎日のように光化学スモッグ注意報が発令され、近くの荒川はヘドロがボコボコと音を立てていた。

私が「ZEISS フィールドワーク三種の神器」と命名した旅や散歩の必須アイテム。造りの良さとモノとしての存在感も堪能できる。

私が「ZEISS フィールドワーク三種の神器」と命名した旅や散歩の必須アイテム。造りの良さとモノとしての存在感も堪能できる。

ところが新潟に行くとまるで別世界。空気は綺麗で越後平野には田圃が広がり、小川で泳いだり、魚獲りをしたり、蝉やカブト虫を追いかけたりしていた。

何よりも夜は真っ暗になり、星が本当に降ってくるように全天に広がっていた。小学生の新潟での毎夏の一ヶ月はとにかく外で遊びまくった。これが私の原点となり、中学に入るとサイクリングにはまり、高校では登山、大学では国内外をバックパッキングするようになった。

辺境の地を回った、若かりし日々。

若い頃、特に海外では、危険な場所や辺境を好んで放浪した。自然の厳しさという意味で危ない地もあれば、治安が悪かったり、よそ者を受け付けない危ない地もあり、ピストルやライフルを向けられたことも一度や二度ではない。

いま考えるとじっくりとその地を観察して味わうのではなく、とにかく危険な辺境の地に行くことだけが目的だったように思う。

そんな危険な旅からじっくりと土地や人を愛でるようになったきっかけが、『ZEISS 8×20B』という双眼鏡なのである。

1991年7月11日に皆既日食があった。通常皆既日食は2,3分しか観られないのだが、この時はメキシコでは8分間観ることができるという。これは行かねばならない。

だいぶ前から計画を立て、金策に走り、結局アメリカからバスでメキシコに入ることにした。

皆既日食は8分間ある。折角だからダイヤモンドリングやコロナをじっくりと観たい。そこで天文マニアの友人に相談したところ双眼鏡を薦められた。

『ZEISS 8×20B』との出会い。光を観に行くという事。

早速、専門店に行くと、たくさんの双眼鏡が並んでいて、試すことができる。まずは並んでいた双眼鏡を覗いてみた。どれも綺麗によく見えるのだが、どれが良いのか差が分からない。

ふと横を見ると、ZEISSの双眼鏡だけがショーケースの中に鎮座している。まあ値段が高いだけで、大して見え方は変わらないだろうと思いながらもスタッフに声をかけて出して貰い、全く期待せずに覗いてみた。

すると「なんじゃこりゃ!」と思わず大きな声が出た。10数台試した双眼鏡とは明らかに次元が異なる目に飛び込んでくるような立体感とヌケの良さ。スタッフと目が合うとニコニコして「でしょう!」と言ってお互い頷いた。

ショーケースの中のZEISSの双眼鏡を一台一台手に取り、吟味に吟味を重ねて選んだのが、『ZEISS 8×20B』。倍率とコンパクトさと、コストパフォーマンスが決め手となった。

1991年のメキシコでの皆既日食のために購入した『ZEISS 8×20B』。四半世紀以上使ってもビクともしない堅牢さと優れたデザイン。今でも覗く度に感動を与えてくれる。

1991年のメキシコでの皆既日食のために購入した『ZEISS 8×20B』。四半世紀以上使ってもビクともしない堅牢さと優れたデザイン。今でも覗く度に感動を与えてくれる。

もちろんメキシコの皆既日食に持って行った。皆既日食を観るために購入したのだが、道中何を観ても楽しい。ワクワクする。遠くの景色や人がまるで目の前に引き寄せられたようにキラキラと輝いている。

皆既日食も堪能でき、メキシコの旅が『ZEISS 8×20B』によってそれまでの旅の何倍も楽しいものとなった。観光とは、光を観ると書く。『ZEISS 8×20B』を持ち歩くようになってから、観光という言葉の意味に合点がいくようになった。

ミュージアムスコープ。『ZEISS MONO 3×12』

美術館や博物館では絵や彫刻の1メートルほど手前に柵があって近づけなかったり、茶盌(ちゃわん)がショーケースの中に入っていたりする。何とかディテールを拡大して観たい。

ところが双眼鏡は約3メートルから遠景を観るための道具なので、ピントが合わない。そこで手に入れたのが、『ZEISS MONO 3×12』という単眼鏡。

別名ミュージアムスコープとも呼ばれている。遠景から約20センチまで寄ることができ、美術館や博物館で細かい部分をじっくり観たいという欲求を完全に満たしてくれる。

古書店や図書館の大きな本棚の上の方の本を探す時などにも重宝する。もちろん性能はさずがZEISS。ディテールの凹凸や微妙な色も見分けることができる。

MuuseoSquareイメージ

MuuseoSquareイメージ

斎藤真一画伯の瞽女(ごぜ)の絵。微妙なディテールの濃淡やタッチ、色彩が『ZEISS MONO 3×12』で覗くとよく分かる。

『ZEISS MONO 3×12』はコンパクトで手の平にすっぽりと収まってしまうのもいい。双眼鏡を覗いていると何だか目立ってしまうが、単眼鏡なら手の平に包むように使うと全く目立たない。

特に海外だと目立つと盗難の心配などあるのだが、『ZEISS MONO 3×12』だとさっと取り出してディテールを確認できる。旅だけではなく、散歩の時にも小さくて軽いので、首から提げて歩いても苦にならない。私は何処へ行くにもこいつと一緒だ。

手の中にすっぽりと収まる心地よさ。コンパクトで軽量なので、いつでもどこでも首から提げて持ち歩ける。

手の中にすっぽりと収まる心地よさ。コンパクトで軽量なので、いつでもどこでも首から提げて持ち歩ける。

興味はさらにディティールへ。ポケットルーペ『ZEISS D36』

さて遠くを観ることから段々と、近くを観ることへと寄ってきたが、さらにディテールを観たいときがある。花弁やら布の織り方や木の断面。そして細かな模様や文字。そして齢五十を越すと、否応なく老眼が進み、近くにピントが合わず見えなくなる。

そこで重宝しているのが、『ZEISS D36』ポケットルーペ。3倍と6倍の2つのルーペが装着されており、それぞれ単独で使ったり、2つのルーペを重ねると9倍になる。寄れる距離や大きさによって使い分けることができ、抜群に便利である。

細かくて小さなモノを『ZEISS D36』で覗くと童心に返る。何でも拡大したくなり、拡大して良く観ると必ず新たな発見がある。

細かくて小さなモノを『ZEISS D36』で覗くと童心に返る。何でも拡大したくなり、拡大して良く観ると必ず新たな発見がある。

このポケットルーペを手にすると童心に戻り、何でも拡大してみたくなる。蟻を観察したり、樹木や金属の表面を調べたり、腕時計の機械の動き方を眺めたり、興味は尽きることがない。

「神は細部に宿る(God is in the details.)」と言われている。なるほど、『ZEISS D36』で拡大し、扇子を開け閉めすると要の大切さに納得。

「神は細部に宿る(God is in the details.)」と言われている。なるほど、『ZEISS D36』で拡大し、扇子を開け閉めすると要の大切さに納得。

「ZEISS フィールドワーク三種の神器」

私はこの3つを「ZEISS フィールドワーク三種の神器」と呼んでいる。拡大すること、覗くことで、好奇心がそそられる。見ることではなく、意志を持って観ることの大切さ、面白さがこの三種の神器を使うと良く分かる。

年齢を重ね、訳知り顔で物事を知ったかぶるほどつまらないことはない。実際に観て、感動して、喜びを感じることが旅や散歩の楽しみであるし、引いては人生の楽しみである。

MuuseoSquareイメージ

「ZEISS フィールドワーク三種の神器」を使って、フィールドを拡大して観ることによって好奇心が鼓舞され、人生の喜びが増す。次の旅は何処にしようか?書斎の窓から『ZEISS 8×20B』で空をじっくりと観ながら、思いも拡大し続けている。

ーおわりー

ライフツールを一層楽しむために。編集部おすすめの書籍

The story of the birth of Zeiss Ikon by the mergers of 1926

51976nakk1l. sl500

Zeiss Ikon Cameras 1926-39 (Hove Collectors Books)

The story of the birth of Zeiss Ikon by the mergers of 1926; the resulting fantastic array of cameras in the Zeiss catalogue, followed by rationalization and development of new cameras, especially the Contax and other 35mm cameras, up to the outbreak of war in 1939. The final part lists Zeiss Ikon cameras from 1926 to 1939.

ライカを愛する者へ贈る1冊

51l5tlxrevl. sl500

Cameraholics Vol.2 (ホビージャパンMOOK 968)

「カメラとフォトグラフィーと人」をテーマとするカメラ誌「カメラホリック」の第2弾。
総力特集は、「ライカへの偏愛」。
ライカを愛機として活躍中のフォトグラファーの作品を多数掲載した50ページ以上もの特集です。
また、日本を代表するライカ派の写真家・植田正治氏の面影を訪ねる巻頭スペシャルと、人気写真家・田中長徳氏による京都撮影旅行記「チョートク先生、デジタルライカで撮る」などの大型企画に加え、
「ファーストライカを、フィルムで愉しむ」、「おこづかいで買えるオールド“ライカ"レンズ」といったバラエティに富んだ特集記事を用意。
ライカユーザーやライカ信者のみならず、ライカに興味はあってもなかなか一歩を踏み出せない、すべての趣味人にオススメできる一冊です

公開日:2018年8月18日

更新日:2021年7月7日

Contributor Profile

File

山縣 基与志

人、モノ、旅をこよなく愛し、文筆業、民俗学者、プランナーとして活動中。日本全国の伝統芸能と伝統工芸を再構築するさまざまな仕掛けを展開している。

Read 0%