自分が集めているコレクションには、”こだわり”がある。それなら、コレクションの写真を撮影する際にも”こだわり”を持って撮影すれば、コレクションの魅力が引き立ち、その”こだわり”も目に見えてくる。
今回は、プロのカメラマンとして活躍している、まきのさんに、自宅でも実践できる撮影方法を聞いてみました。写真を撮る際のコツを知ることで、今まで以上にコレクション撮影が楽しくなるはずです。
コレクションの写真をカッコよく撮るために必要な3つの要素とは?
本日はよろしくお願いします。まず初めに、カメラマンとしての経歴を教えてください。
東京工芸大学の写真学科で勉強していました。卒業後、撮影スタジオでしばらく勤務した後、フリーランスに転向して13年くらい経ちます。
いろいろな撮影をするのですが、ポートレート(人物写真)が多いですね。あとスナップショットは得意です。
では本題に入りますが、コレクションを撮影する際に、普段どのような点を気にかけていますか?
細かいこだわりを抜きにして考えれば「構図」と「光」と「背景」の3つの要素が重要ですね。どこで撮るか、どういう光で撮るか、どのようなフレーミングで撮るかということです。
構図では、そのモノが一番よく見える角度を探す。「これ真正面で撮ろうかな。いや少し角度を付けて斜めから撮ろうかな」など自分が魅せたい角度を探す、というのが大事です。一度、固定概念をなくして、考えてもいなかった角度で撮影すると、新しい発見があり楽しくなりますよ。
例えば、ガンダムを真下からの角度で撮影すると、アムロがガンダムを見上げているような写真が撮れます。
仕事で撮るときは業務用のストロボを使うのですが、自宅で撮影するとしたら、窓から入ってくる自然光を使いますね。だから蛍光灯を消すんですよ。
基本的に家の中で綺麗に撮れる可能性があるとしたら自然の光なんですよね。蛍光灯と自然光が混じっていると色が濁る。
日中の陽がある時間に、窓際で撮影するのはオススメ。もしも直射日光などの場合は、カーテンなどで光の強さを調整。
だから光源を一つに絞るということが重要かもしれないですね。もし、自然光が全く入らない部屋で撮るのなら、蛍光灯だけにするとか。もしも蛍光灯で撮影する場合も、オレンジ色よりも、白系の光を放つ蛍光灯の方がオススメです。
窓際で撮る場合、逆光と順光(逆光の反対)は、どういう使い分けがいいですか?
逆光って、皆さん苦手、駄目なんじゃないかってイメージを持っていますよね?
でも逆光ってかなり使えるライティングで、柔らかく描写されるんですよ。だからふんわりとした感じにしたかったら、窓を背にして撮れば、滑らかな感じになります。例を挙げるとしたら、料理は逆光でほぼ撮影しますよ。
順光で撮っている料理はほとんど見ません。お店でメニューに写っている美味しそうな写真は、逆光で撮影していますね。
理由は、逆光だと影が撮影物の前面に写り込み、立体感が出るんでよね。順光だと影が真後ろにできて、のっぺりした感じになるのです。順光は、モノの存在感を全て消してしまうライトなんですよね。
逆光での撮影。影がミニカーの手前に来るので、奥行きを感じる。
順光での撮影。影がミニカーの奥に行き、ノッペリとした印象を受ける。
ミューゼオでは、フィギュアを投稿している方で、正面から光を当ててる人が多いですよね?
あれ、絶対に逆光が良いんですよ。逆光で撮ったほうが綺麗に撮れます。基本は逆光で考えていいと思いますよ。
結構、意外じゃないですか?(笑)
そうですね(笑)。僕ら一般の素人からすると、逆光は怖いんですよね。白飛びする可能性もあるし。
もちろん、太陽を背にした強い逆光はダメですよ(笑)。窓を背にして撮ったり、間接的に逆光になっている状態がいいですね。窓側で、どうしても直射日光になる場合は、薄いカーテンや襖(ふすま)紙などで、光を弱めてあげるといいです。
もう一点。
白い厚紙、ノートなど、身近な物で簡易的なレフ板を作るといいです。逆光の光を、撮影するモノに反射させることで、とても綺麗に仕上がります。
白い紙なら何でも大丈夫。Amazonでも1000円ぐらいで買える。
逆光の光をレフ板で反射することで、対象物が明るく撮影できる。
構図と光のポイントをいくつかお話していただいたのですが、背景に関して何か注意している点はありますか?
自分が魅せたいように魅せるっていうのが、重要なファクターになっていると思うんですよね。コレクションするものがあって、それをどういうシチュエーションで撮りたいのか。そこに背景が必要になってくる。それは、各々の裁量が大事だと思います。例えば、ガンダムの特定のシーンを背景で再現して、撮影すると世界観に入れて素敵ですよね。
ただし、一般的な背景の話をすると、基本的には白地で撮るか、部屋の中で背景をボカした状態で映すのが、セオリーだと思います。
背景に白色の紙を利用して撮影。
撮影するモノが白い場合には、黒色の背景が映える。
白色の背景を作る際には、壁に白いロール紙を貼るのがオススメです。その際には、ロール紙を折り曲げずに、なだらかにダラーっと引くことがポイントです。折り目を作ると影が出来るので、撮影が難しくなります。
白いロール紙は、文房具屋などで安く購入できるので、自宅に一枚あると便利です。
背景がボケた写真って素敵ですよね。どういうセッティングをすると、背景がボケやすくなるのですか?
背景と被写体の距離があればあるほどボケるんですよ。例えば、壁際でフィギュアを撮ってもそんなにボケないです。でもフィギュアを壁から離して撮ると、背景がとてもボケるんですよ。また、カメラの設定で言うと、*絞りを一番開けてあげると、ボケやすくなります。
(*説明)絞り値・・・カメラのレンズを通る光の量。F2.8、F22のようにF+数字で表現される。その数字が低いほど、ボケやすくなる。
なるほど。プロのカメラマンは、どういう状況でボカす、ボカさないという使い分けはあるんですか?
目的によって違いますよね。机の上の被写体をよく撮りたいなら、一部分にだけピント合わせて、あとはボカすとか。真上からの撮影や、白色の背景、画像の隅々まで鮮明に表現したい時は、ボカしませんね。
背景をボカすことで、”見せたい”コレクションに視線を集中できる。
撮りながら学ぶ、カメラの撮影テクニック
ミニカーを白背景で撮影。逆光を利用して奥行きを作りだす
窓際の光が入る場所に、白いロール紙を使って、白色の背景を作りました。逆光に対して、レフ板で光を反射をさせてミニカーの正面にも光を当てています。
構図に関しては、人それぞれの好みもあるのですが、、、真ん中に配置させる以外にも、斜め左下に配置させることで、車が走ってきた躍動感を表現することできます。
ガンダムフィギュアを強い逆光で撮影。やわらかい視覚を作りだす
先ほどと同じ逆光でも、少し強めの逆光になります。カメラの露出、ピントを調整することで対象物の輪郭が、ふんわりとした印象を作り出すことができます。
腕時計を撮影。光を反射させずに、綺麗に仕上げる
腕時計やZippoなどの鏡面が反射するモノは、プロのカメラマンでも難しいですね。
カメラの角度を変えて、光の反射が発生しない場所を探すのが手軽です。ただし、真上から撮る場合などは角度は変えられません。その場合は、時計を横にずらして、カメラの真下に時計がない状態で撮影するのがポイントです。撮影後に加工ソフトで切り抜きをして、時計を中心に配置することで反射を避けられます。
また、今回の撮影では背景に木目の薄い木板を使い、清潔感、高級感を出しています。ホームセンターなどで2000円ぐらいで入手できるので、オススメです。
万年筆を撮影。光の線で作り上げる立体感
<良い例>光を反射させて、白い線を入れることで立体感が出る。
<悪い例>黒色の持ち手部分が影と同一化して、立体感がない。
万年筆の撮影も難しいジャンルの一つですね。
ポイントは、万年筆に光の筋を入れること。逆光とレフ板を利用して、万年筆の側面に光の線が写り込むようにすると、立体感と気品が出てきます。
スニーカーを、街中のストリートスナップのようにカッコよく撮影
靴を撮影する時は、構図を変えるのがいいと思います。
例えば、低い姿勢から靴と同じ目線で撮影すると、普段とは異なる視覚で撮影できます。その際には、背景をボカしてあげると、ファッション誌のような仕上がりになります。
<上級者向け>ストロボライトを利用してテディベアを撮影。2つ目の光を操るコツ
逆光+ストロボを利用した撮影。
逆光のみで撮影。
上級者向けなのですが、自宅にストロボがあるのであれば、それを間接的な光源として利用すると面白いです。
例えば、上記のテディベアの撮影では、真上に光を反射させ逆光で暗くなっている正面の明るさを補っています。そうすると、真上からの光に対してテディベアの真下に影ができます。真上から光が当たると、このテディベアでは表情が明るく見えますね。
ストロボは直接に光を当てず、壁などに反射させるということがポイントです。
プロのカメラマンも利用するレタッチ。画像の修正をすることで、自分のイメージに近づけることができる!
まきのさんは撮影した後に、レタッチ(写真の修正)をする場合、どのようなソフトを使って補正、修正しているのですか?
基本はAdobe社のLightroom。それで補正しきれなかったものを、Photoshopで修正する感じですね。
撮影現場では、Lightroomの補正を意識して撮影をしているのですか?
そうですね、だから明るすぎる状態では撮らないんですよ。明るすぎると真っ白になって補正できるデータが全くない状態になっちゃうので。それは避けたいので、見た目より少し暗く映るぐらいが、ちょうどいいんです。暗く映っているものを補正することはできるのですが、明るく映っているものを暗く補正するのは無理なんですよ。
Photoshopを利用して写真を修正。左がBefore、右がAfter。
明るさ、コントラストを調整をすることで、明るい太陽光の下で撮影した雰囲気を表現できる。
ミューゼオは、こんな機能も楽しめます 〜その1〜
PC版のミューゼオでは、登録したアイテム写真を切り抜く、明るさを変更する、フィルターをかけるなど、さまざまな加工が出来ます。
登録したアイテムページにて、写真の右下にある「画像を修正する」を押してみてください。自分好みのアイテム写真に修正することが可能です。
スマホで、コレクションをカッコよく撮影するには?
まきのさんが考える、iPhoneなどのスマホを使った撮影の利点は、何だと思いますか?
フィルターかけてすぐ確認できるでしょ?それって一眼のカメラではできない。こういう加工した写真がすぐ見れるのは楽しいですよね。
スマホは身近なモノを気軽とれる存在で、1番近しいカメラかな。Facebookとかに投稿するのもほとんどスマホだし、SNSがあってはじめて成立するカメラっていう位置付け。
例えば、スマホで仕事の写真を撮るかって言われたら違う(笑)。
今、ミューゼオではデジタルカメラで本格的に撮影している方が多いですが、スマホでの撮影も徐々に増えてきています。スマホでコレクションを上手に撮れるコツはありますか?
ボカす要素をあまり考えないほうが、シンプルに撮れる。iPhoneなどでは、ぼかすモードがありますけど、それはデジタル加工で無理やり作っているものだから限界がある。
自然光がある場所で、簡単に用意できるレフ板を使い、光を反射させれば、ほぼ(一眼カメラと)同じものが撮れると思います。ボケ味の要素を除けば。
スマホは向いてますね。ピントが合う範囲が広いから、細かい部分もピントが合う。だから接写とかの近い距離の撮影が向いてるかもしれませんね。
まきのさん所有のiPhone8による撮影も実施。
写真撮影は難しくない。いろいろとチャレンジして撮ることが大切!
取材当日、まきのさんが利用していたカメラは「Canon EOS 5D mk4」。
最後に、カメラ撮影に興味がある読者の方に、一言お願いします。
コレクションされている方はそのモノにこだわりがあって、写真を撮るということは、そのこだわりをアピールするチャンスだと思います。だから、自宅で出来ることからこだわってもらえたら、後で自分でコレクションを眺める時や、他の人に見せる時に、もっと楽しくなると思う。
今日、お伝えしたことは自宅でも出来ることなので、一個でもいいので実践してもらえたら嬉しいです。
ミューゼオでは、数多くのアイテム、コレクションが登録されています。その全てが、”こだわり”を持って集められたモノたち。それなら、撮影方法にも”こだわり”を持って、カッコ良く撮影することで、コレクションが一層輝くと思います。
ミューゼオは、自分が持っているコレクションでミュージアムが作れる。そのミュージアムには、世界中からたくさんの人が訪れます。ぜひ、写真の撮影方法にもこだわって、かっこいい写真を撮影してみてください!
ーおわりー
ミューゼオは、こんな機能も楽しめます 〜その2〜
アイテム登録の際には、最大で8枚の画像を登録できます。そして、PLAYボタンを押すと、写真が自動でスライドショーのように入れ替わるので、動画のような効果が楽しめます。
360度の異なるアングルで撮影すると、ぐるりと1周回るような表現も可能!
<完成例>
https://muuseo.com/red.comet/items/22
カメラを一層楽しむために。編集部おすすめの書籍
東京工芸大学芸術学部写真学科の学生たちが 実際の授業で使用する教科書が登場!
(簡易版カラーチャート付) さぁ、写真をはじめよう 写真の教科書
本書籍は、東京工芸大学の写真学科に属する1年生の生徒たちが、1年間に学ぶ内容をベースにしている。
全体を2部構成として、第1部で制作演習による課題、第2部で撮影のためのさまざまな基礎知識を学ぶ。
作例やイラストを数多く掲載しているため、ビジュアルを見て内容を理解できる。
デジタルの知識もフィルムの知識も両方が身に付く。
覚えることはたった3つ!? マンガでわかる 一眼レフカメラの入門書!
カメラはじめます! (サンクチュアリ出版)
ムズカシイ専門用語も、マニュアルも、写真のセンスも、いっさい必要なかった!
実は、一眼レフカメラにあるたくさんの機能のうちある3つだけを覚えるだけで、思わず人に見せたくなるようなステキな写真が誰でもカンタンに撮れるようになるんです。