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ついに最終回! 足掛け9ヶ月!いよいよかかとを付けて靴が完成です!

なんとなく靴作りを始めてみた、いち素人です。この連載では、履ける靴を一足仕上げるまでをドキュメントスタイルでお伝えしていきます。靴制作の過程を見てもらう中で、靴マニアじゃなくても「なぜ、いい靴はこんなにも高いのか?」の疑問、さらには靴を愛したくなるヒミツがわかってもらえるのではないかと思います。靴の裏側(というと大げさですが)がわかると、靴を見るのが楽しくなる!(購入に至るか否かはまた別の話…) 今回は最後の行程<かかとつけ>と<仕上げ>に入ります。

取材日: 2016年4月18日

文/オダマキミホコ
写真/廣瀬 文

どこまでできれば完成かは作り手次第の<仕上げ>作業

1.木型を選んでデザインを決める
2.型紙を作る
3.革を選んで裁断する
4.アッパーを作る(甲、側面、かかとを縫い合わせる
5.釣り込み(アッパーを木型に固定する
6.底付け
7.仕上げ ◀️今回はココ

<底付け>を終えたので、今回はかかとをつけて仕上げに入ります。作業を大まかに分割すると「かかとをつける」、「コバ(周り)を決める」、「ヤスリでコバとかかとを整える」、「コバとかかとにロウを塗り込む」、「全体をみがく」となります。
 まずはかかとつけ。かかとは底革を1枚ずつ積み重ねていきます。これを<積み上げ>と言います。高いか低いかは好みはあると思いますが、実は使う木型でほぼ決まっています。木型には15とか20とかの印字がされていて、15だったら1.5cm、20だったら2cmがベストバランス。多少調整はできますが、つま先のあがり具合が指1本入るくらいの高さが目安です。かかとを積み過ぎると歩くときに土踏ますがあまり反り返らず、逆に積まないと重心が後ろになりすぎて、どちらも歩きにくい靴になってしまいます。さらに美しく見える高さかどうかも意識したいところです。
 底革の厚さは1枚が4〜5mmなので、4枚積み上げると約2cmになります。今回の木型の場合は4枚がちょうど良さそうです。一番下の革は底用の一部分がゴムになっているタイプを使います。

MuuseoSquareイメージ

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積み上げを比較してみました。今回は4枚がベストバランスのようです。

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かかとの大きさは全体の長さの4分の1が目安。釘で打ち込む前に接着剤で貼り付けるので表面をヤスリで削っておきます。

クギを打って打って打ちまくります

 1枚目を接着剤で貼り付けたらクギを打っていきます。中底に近いので木製の「ペース」というクギを使います。万が一中底を貫通しても削ることができるのと、木製なので水分を吸って膨張するためしっかり留まるというメリットがあるそう。鉄製のクギと違っていきなり打ち込んでも折れてしまうので、ペースを埋める穴を作ります。「打ち込み」をハンマーで叩いて穴を開け、ペースをはめ込んでハンマーで慎重に埋めていきます。穴の深さはペースの長さの3分の2くらいにするのがコツ。浅すぎるとペースが入りきらずに折れてしまい、深すぎるとペースがブカブカの状態に…。打ち込みにペンで印を付けておくとラクです。

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クギは3種類。左から木でできた「ペース」、ひねりが入っている「スクリュー釘」、金色の釘が「化粧釘」。釘類を打ち込む際に使う道具。左が釘を打ち込む前に穴を開ける「打ち込み」、右が釘の頭が出ないように追い打ちをする「追い込み」という道具。

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打ち込みは中心に向かって斜めに入れるのが抜けにくくなるコツ。まっすぐ打とうとすると外側に逃げてしまって、かかとからはみ出してしまうことがあります。

 2枚目、3枚目を接着剤で貼り付けたら次は「スクリュー釘」で固定します。鉄クギを刺すのか、ひー!と思うかもしれませんがご安心を。底革の厚さを計算して、今回の場合は19mmサイズの釘を使います。底革4枚で16mm、本底5mm、中底4mm、計25mmなので足裏には届きません。ただし短すぎるとしっかり固定ができないので、ギリギリの長さになるよう計算します。
 一番下の底革はこの段階では接着剤で貼り付けるだけ。コバ周りを整えてから打ち込みます。ので貼り付けが完了したら、かかとの側面を水でしめらせ、ハンマーの平たくなっている方を使って叩き、溝や段差を埋めていきます。これが不思議なくらいきれいになるんです。

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クギをあててみると危なくないのがわかります!スクリュー釘もいきなり打ち込むと方向が安定しないので打ち込みで少し穴を開けてから打ち込みます。底革をすべて貼り付けたらハンマーで整えます。

ここからはひたすら削ってヤスってきれいにする作業です

 「ヤスる」はヤスリで削ることを表現した造語です…。地味ですが、ここでの作業が仕上がりに大きく影響します。終わりがない作業なので、どのくらいで終わらせるかは作り手のこだわり次第。この作業になによりも時間を掛ける人もいます。

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仕上げに欠かせない「木ヤスリ」と「ガラス」。ガラスは割った断面を刃にして使います。昔のものの方がよいそうで…。これも手に入りにくくなっている道具のひとつです。木ヤスリを掛ける前に包丁で全体を整えます。

 包丁でコバ周りをしっかり整えたら、「木ヤスリ」(といっても鉄製のおろし金みたいなやつですが…)でコバ側面がさらになめらかになるよう削っていきます。木ヤスリをかけたあとは毛羽立ったような感じになるので、コバ周りを湿らせてガラスをかけます(削ります)。ガラスを掛けるときはできるだけ止めずにかけるのがキレイに仕上げるコツ。止めるとその度に線が入ってしまいます。入ってしまってもこの後さらに紙ヤスリをかけるので大丈夫ではあるのですが。

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木ヤスリで凹凸をなくしたら、ガラスでさらになめらかにします。ガラスはできるだけ止めずに長めに掛けるようにします。人間の手でひとまずここまでできました!

 と、実はこの作業、靴用のフィニッシャーという機械を使えばあっという間にできちゃったりします…(泣)。

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さらに紙ヤスリを掛けていきます。ひたすらゴシゴシ…。湿らせてみてツヤツヤになれば良い塩梅。写真の下から2枚目の底革のように白い部分が出てくるようなら磨きが足りない証拠です。

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コバ周りを整えてヤスリ掛けも終了したらここで化粧釘を打ちます。打つ場所に決まりはなく、作り手のセンスによっていろいろです。「靴底」「化粧釘」で検索してみるとおもしろいですよ!

コバ周りの磨きに入ります!

 コバ周りとかかとがツルツルになったら仕上げに入ります。コバを黒や茶色で染めたりするのが一般的ですが、個人的には革の素材そのものを活かした仕上げが好きで、ロウを塗るだけのナチュラル仕上げにしています。なので手順としてはコバの形をしっかり決める→ロウを塗る→熱したコテで溶かしながら馴染ませる→布で余分なロウを取りながら磨く、となります。
 まずはコバ周りにコテをあてます。これを「空ゴテをかける」と言います。熱していないコテでコバの形を作っていきます。次にロウを電熱器で溶かしてコバ周りとかかとに擦りつけます。多すぎても少なすぎてもダメ。ここでも“良い塩梅”が求められます。ロウをつけたら今度は熱したコテをあてていきます。コバの形を崩さないようにしっかりとロウを染みこませます。かかとも同様に作業します。最後に布で余計なロウを取り除きキレイに整えます。

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コバを仕上げるためのコテ類。左の3つはコバ用、イチョウ型のはかかと用です。コテ類も日本では作る職人さんが減っていて、中にはもう手に入らない希少なものもあります。空ゴテできちんと形作っておかないとエッジのないぼんやりした仕上がりになってしまうのでしっかり作業します。

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コテが熱すぎるとロウとコバ周りの革が焦げて黒っぽくなってしまいます。焦がさないように、ロウを染みこませる感じで馴染ませます。余計なロウは布でゴシゴシこすって取り除きます。

できあがりです!!

 いよいよ木型をはずします。中底を木型に固定するために釘を使っているので、コルクを入れる前に釘をはずしておくのですが、うっかり忘れてしまうエピソードを聞いてから、釘は抜いているはずなのに毎度ドキドキします(笑)。棒状の木型抜きを使うとスルリと抜けます。そして、拍子抜けするほど軽い!木型ってとっても重いんです…。
 さて、中敷きを入れて靴ひもをつけたら完成です!余談ですが、中敷きにはつま先まである「全敷き」とかかとから土踏まずまでの「半敷き」があります。これはデザインだったり好みだったりするので特に正解はありません。個人的に全敷きは貼るのが難しいので毎度迷わず半敷きにしています(笑)。さらに余談ですが、中敷きにオリジナルの焼き印を押すと靴としてのレベルがグッとあがります。そんな理由で、焼き印を作りたいなーと思い続けています(で、早数年…)。オリジナルの焼き印を作ったり、靴ひもをつくったり…。靴周りのちょっとしたアイテムのネタを記事にするのもおもしろそうですね。
 今回なんとかひとまず形になりましたが…、後半は地味ですが時間の掛かる作業が多く、作業が記事の更新ペースに追いつかず、とりあえず片足だけ仕上げました(はい、完全に言い訳です…)。必ず両足揃えて更新します。ロングラン連載にお付き合いいただきましてありがとうございました!(梅雨に入る前までには履けるようにしたいデス…)

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木型をはずす瞬間は毎度緊張します…。中敷きを入れて、靴ひもをつけたら完成です!

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