ミューゼオ・スクエアの編集部員があれやこれやと挑戦し、違いの分かる女=目利きな淑女を目指す奮闘記。今回は靴磨き界の伝道師、明石優さんに革靴の基本の手入れを教わってきました。
違いが分かる女になりたい。まずは靴磨きにチャレンジ?
とある日の昼下がり、アラサー(厳密にはオバサー)部員Aは眉間にしわ寄せパソコン画面を見つめておりました。
ミーティング中だというのに上司Nと部員Iが、John Lobb(ジョンロブ)の靴の美しさとやらについて語り始めだしたものですから。もちろん全く話に加われません。全然楽しくありません。
こんな時は「私にはほかに考えるべきもっともっと高尚なことがあるのです」という顔つきで、アラサー女子のカリスマ・竹さま(竹内豊)、にしじ〜(西島秀俊)の画像を食い入り気味に見つめるにかぎります。
ただ、正直なところを申しますと、「このカーブを見たまえ。やはり、作り込みが素晴らしいね」だとか「さすがは老舗メゾン、細部までの手間のかけ方に思わずため息がでるな。はぁ〜」などと一見紳士たちの無駄話(たわごと)のようであっても、特定の分野で知見のある誰かと熱く語り合う!ということが少々羨ましいのでございます。
浅はかですが、私も、白い陶器のカップ&ソーサーで無糖のブラックコーヒーでもすすりながらダバダ〜”違いが分かる男”もとい、違いが分かる女になりたいのです。(うかうかしていたら、ふわふわっとしたままアラフォーを迎えてしまう危機感すら感じます)
さて目利き淑女になるためにまず何から始めましょうか。。。。
あ、いきなりフリーズしてしまいました。ではまずお茶やお花、着物の手習いを。。。。
大人女性憧れのお稽古ですが、切ないかな軍資金もなければ、長い道のりをコツコツ歩む根性も忍耐もございません。
いつもどおり、「もうこの世の終わり」のような深刻な顔をして頭を抱えておりましたところ、上司Nから「ならば君、靴磨きを教わってみたらどうかね?」(実際上司が言ったのは、「靴磨きやってみたら?」)
とお題をいただきまして、なんでまた?と思いましたが意外に素直でかわいい部員Aは靴磨きを教えてくれるイベントに参加したのであります。
靴磨き界の伝道師にお手入れ方法を伝授してもらう
イベントは「大切な靴限定」というテーマで開催されたものでした。
母の日も近かったこともありますので、私は母のブーツを持参いたしましたよ。日頃迷惑をかけまくってお世話になっている母に感謝をつたえるためにも丹精込めて磨かせていただきます。
こちらが、靴磨き前。
教えていただきました基本の手順は以下の通りでございます。
<靴磨き基本の手順>
1、靴をしっかり見て、デザインの特徴、汚れている部分を確認!仕上がりのイメージを思い浮かべる。靴紐があるものはほどいておく。
2、アルコール等を布にとり、靴内のほこりを拭き取る。特につま先部分には靴下のほこりがたくさん溜まっているので注意。(これほんと!利用頻度が高い靴は特に注意!)
3、シューツリーを入れる。型を整え、しわを伸ばす。
4、ブラッシングで全体のほこりを払い落とす。しわの中、コバ、羽の内側もしっかり注意。ブラシは馬毛で毛足の長いものがbetter!
5、コバインキでコバの補色をする。ソールオイルでソールのケアも忘れずに。
6、汚れ落としクリームを布にとり、靴全体の古いクリームや汚れを落とす。無理に全部の汚れを落とす必要は無い。全体を手早く綺麗にする。
7、少量の乳化性クリームを指に取り、全体に薄く、しっかりと塗り込んでいく。
8、豚毛の少し固めのブラシでブラッシング。しっかりと革になじませてあげる。
9、指に布を巻き、表面の余分なクリームを拭き取る。中はしっとり、表面はさらっとさせてあげる。これを怠ると、収納時に埃がつきやすくなる。
〜基本のケアは以上〜
今まで、クリーナーの使用方法だけ読み、破れて不要になったストッキングで靴にクリームをなじませ
「ハイ! 一丁あがり!」という気分になっていた私。(本当にゴメンナサイ。。。)
こんなに工程があったんですね。しみじみ。
靴磨き職人(シューシャイナー)ごとにみなさん独自の磨き方を研究されているということですが、今回、靴磨きマスター・明石さんに伝授いただきましたなかからちょっとしたことでだいぶ輝きがかわってくる!というちっちゃなポイント(これぞ目利きポイントでは⁉︎)を発見いたしましたので、これはぜひ。
輝きが大きく変わる。クロスの巻き方のコツ
それは、汚れやクリームを拭うときの”クロス(布)の巻き方”でございます。
クリームをムラなく伸ばしたり、磨きをかけるうえでもしっかりと指にクロスを巻くことはとっても大事なのです。
明石さんは軽やかなテンポで教えてくださいました。(以下再現です)
人差し指・中指・薬指の三本指でクロスを挟み、セット完了!指先を一度天高く持ち上げてクロスをねじりながら翻す!
でも、布の巻き方を忘れてしまったとき(もしくは誰かをズバッと追い詰めたいとき)思い出してください。
犯人は……
……
お前だっ‼︎‼︎(ズバーーーン) 偶然にもメガネ着用。
当日の会場では、「おおお!」っと大人も子どももみなさんの反応の良い声が。
明石さんがだんだんと赤い蝶ネクタイをつけた見た目は子どもなのに頭脳は大人な少年探偵のように、見えてきたとかこないとか。
そして、1〜9のステップでご紹介した基本のケアに加えて、実はもうひと段階先の+αもあるです!そうです今回はそのひと段階、大人の階段も登ってしまいました‼︎
それが鏡面磨き‼︎(キタァァァァー)いくら靴磨きに疎い私でも、この鏡面磨きは聞いたことがございます。
つま先やかかと部分がこの鏡面磨きという仕上げの工程によってトゥルットゥルのピッカピカになって
鏡みたいに景色が反射して自分までも2割り増しで美しく写ってしまうという秘儀でございますね‼︎
ここでもクロスの巻き方にポイントがあるのです。
はい、こちらも目利きポイント!
これがなかなか教えていただいた通りに巻けないこと。。。
でも、私まけないんだから!
さ、巻き方手順はこちらのミニ動画でどうぞ。
あまりの負けなさ、いや巻けなさ加減にお隣の優しい女性にも手取り足取り教えていただきつつ
ジャーン!
綺麗に巻けていると思いませんか?
この一筋のシワも(シミも)許さない、部員Aの素肌のようにピンッと張ったクロスをご覧ください!
このシワのないクロスで磨き上げることこそが、鏡面磨きを成功させるか、させないかの分かれ道だと。
では、クロスも整ったことですので、磨いていきましょう?
はい〜鏡よ鏡よ鏡さん〜?
何か間違えましたかね?私、まったく光る予感がいたしませんが。。。。
まっ、でも、もう少し粘りましょうか。
まだかしら、まだかしらとお隣の女性たちと顔を見合わせつつ、磨き磨きしておりましたところ。。。。
初心者でも、磨けました!
「すごい!光ってきました!」
「あー!キテます!キテます!」
「明石さん、僕にもやっと輝きが見えました!」
皆さん明石教の元で何か悟りの境地に達したかのようにおっしゃいます。それも次々と!
すごいわぁ明石教祖。
引き換え私は、まだまだ修行が足りないのでしょうか。
取り残された気分になり、半ば焼けく、、ではなく、ひたむきに磨き続けていましたところ……
来ましたぁ〜私にもとうとう光がぁ〜。* ゚ + 。・゚・。・ヽ(*´∀`)ノパアッ
これは一度体験してみると、きっとおわかりになると思うのですが、異様〜な嬉しさがこみ上げてくるものなのです。
どうでしょう? 出来上がりがこちら!(外で写真を撮ったため、磨き前と若干色に違いがございます)
まだまだ磨けばさらにトゥルトゥルのピッカッピカになりそうですね!
今回は母の靴を磨いてまいりましたが、靴磨き、楽しいです✨ いとも簡単に感化されてしましました。さっそく母に届けたいと思います✨
そして、この鏡面磨きをするために、いい靴を買いたいとすら思えてきました。
さて、無事にイベントは終了。帰り際、革靴!ほしい!ほしい!という妙でハイなテンションになっていたところで
明石さんにオススメの女性靴を教えていただきました。
「僕としてはジャランスリウァヤ〜の靴がおすすめですよ〜」
ジャランスリウァヤ〜?
アカスィスウァン、ナンノコトウァヤ〜?
なんでしょう、この異国感あるれる響きは。聞き返すお時間もなかったため、帰り道はこの呪文のような言葉を反芻しておりました。
ジャランスリウァヤ〜ジャランスリウァヤ〜ナンノコッチヤ〜
ーおわりー
ジャランスリウァヤとは
「ジャランスリウァヤ」(英語表記:Jalan Sriwijaya)とはインドネシアの有名シューズブランド。もともと靴製造工場だったところから、2代目が英国やフランスでの靴づくり修行や革の見地を積んだのち2003年にブランドを立ち上げたんだとか。革靴愛好家の間では、作りと質は超一流!なのに手に届く価格帯!つまりコスパがめっちゃいい!ともっぱらの評判のようで。
ちなみに、ブランド名の意味ですが、明確な回答は見つからず。。。
この靴工場の前の通り名がジャランスリウァヤということで、ここからブランドの名前がついたのでは〜と推測される方もいるようですね。それっぽい言葉の響きはインドネシアにあったか〜と納得いたしましたが、名前の真相を知りたいところです。ますます興味ひかれる私でありました。
終わりに
まずは、私の長〜い記事に最後までお付合いいただき、ありがとうございます‼︎
今回、鏡面磨きを体験したことで、俄然靴磨きに興味が出てきました。
更には、本格的な革靴を手に入れて、それを磨きたいという願望まで芽生えてしまいました。
明石さんオススメのブランドも気になりつつ、自分の靴探しの旅に出る日も近いか⁉︎
これから続く連載で、私自身が、そして私の稚拙なライティング能力がどう磨かれるのかは未知数でありますが、どうぞよろしくお願いいたします。