六甲山と波止場を帽子に見立てて、オシャレな神戸の街をイメージ
明治15年創業の歴史ある兵庫県神戸市の「ナガサワ文具センター」。今回は、こちらのご当地インクであるKobe INK物語の「六甲グリーン」「波止場ブルー 」「旧居留地セピア」の3色を使用。
色のイメージと合わせて、日本屈指の眺望スポットである六甲山と、赤いポートタワーがそびえる波止場、そしてお洒落な神戸の街をイメージした帽子をかぶったマダムを描いてもらった。
絵の構図はもちろん、濃淡のある美しい色味はどのようにして描いたのか?動画も併せてチェックしてみて!
写真/サトウヒロシ
サトウヒロシさん:六甲山と波止場、オシャレな街のイメージとして帽子を被ったマダムでまとめました。
ご当地インクの走りとなった「Kobe INK物語」の最初の3種。このシリーズを産み出す時にきっと色々な思いがあったことだろうと思います。1色目がグリーンであったことは、企画された方が「純粋にミドラーだったのでは?」という可能性が捨てきれませんが、実際に神戸在住の方にとって「六甲山」は本当に身近な存在ですから、そこに思いを馳せられたのかな、と。
ちなみに、神戸は思い出の土地。阪急六甲駅で下車、36系統のバスに乗って毎日向かっていた先は僕が通っていた大学です。
六甲山の中腹から眺める景色がきれいだったので、キツイ坂道の校舎間移動もある程度許せていた……という記憶が今も残っています。学生時代はお金もなかったので、せっかくオシャレな街に住んでいてもその恩恵に預かることはなく……いまさらながらインクを通して神戸を体験しているわけです(笑)。
色彩豊かな街、神戸の景色をテーマに生まれた「Kobe INK物語」
サトウヒロシさん:さて、今回のテーマは思いの詰まった「はじまりの3色」をできるだけそのまま描き上げたかったのでこの絵になりました。
この3色が発売された当初は、まだ国産メーカーのインクの種類は少なく、鮮やかな色が多かった記憶があります。そんな中で、六甲グリーンと波止場ブルーはどちらも落ち着いた「自然な発色」に調合されていて、普段から最も身近にある緑と青をしっかり再現されているのだな、と思いました。
旧居留地セピアにおいては、セピア色なのに石造りをイメージさせる力強さがあります。
セピア好きの僕としてはこのインク、もっと「昔に出会っていたらよかった」と思うほどにストイックで、図案の主線や1色で作成する絵のメインカラーにしたい色合い。正直言いまして、何を描いてもオシャレになるインクです。
スタンダードな色でありつつ、土地のニュアンスを込めた「Kobe INK物語 はじまりの3色」は文字を書くなら普段使いにとても良い色合いです。万年筆も、最も使う軸に入れるとしっくりくるんじゃないかな、と。そのくらい腑に落ちる感覚があります。
それは、作画においても同じ様に感じました。旧居留地セピアは単色で線画、このインクで旅先のスケッチをすれば3割り増しで風合いが出せると思います。六甲グリーン、波止場ブルーはもちろん、山や海、空。赤系、黄系のインクを持っていれば、ちょっとしたフルカラーの風景画も描けると思います。
Kobe INK物語に限らず、ご当地インクは文具店さんやメーカーさんの思い入れがあります。特に「はじまりのインク」はそうした思いに思いを馳せながら使ってみると、楽しみが膨らみますね。どうぞ、みなさまもそんなインクに出会えますように。
オリジナルアイテムが話題沸騰!「ナガサワ文具センター」
三宮駅を最寄りとした本店を含め、7店舗を展開するナガサワ文具センター。万年筆をはじめ、趣味文具からオフィス用品まで幅広いステーショナリーが揃う。特に、今回ご紹介したKobe INK物語をはじめとするオリジナルアイテムは、県内だけでなく全国的に話題を集めている。
最後にナガサワ文具センターの企画室室長・竹内直行さんよりコメントをいただきました!
「Kobe INK物語は、1995年の阪神淡路大震災の復興を目指す中でお世話になった方々へ、お礼の手紙を書くために神戸らしい色を求めて開発を始めたことがきっかけです。
色彩豊かな街並みが戻るにつれ色数も増え、地元の方に応援して頂きながら続いてきました。
ご当地インクのさきがけとして、これからも神戸の魅力をお伝えして参ります。
山と海、自然に恵まれた神戸は、歴史に関する物語も豊かな街です。Kobe INK物語の舞台を散策にお越しください」
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