昭和24年(1949)年賀切手「羽根つき」カシェカードコレクション

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 2月。GHQ(占領軍本部)顧問としてアメリカのデトロイト銀行頭取ドッジ公使が来日、インフレ収束と経済安定を目指す「ドッジ・ライン」を示した。すなわち、1ドル360円の単一為替レートの設定や超均衡財政、輸出による自立を指示したのである。日本政府は激しいデフレ政策でインフレ克服に取り組むこととなる。

 7月から8月にかけて、「下山事件」(前日から行方不明になっていた国鉄総裁が常磐線綾瀬駅付近で轢死体で発見された)、「三鷹事件」(中央線三鷹駅車庫から無人電車が暴走、6人が死亡)、「松川事件」(福島県東北本線松川・金谷川間で列車が脱線・転覆、3人が死亡)と、国鉄を舞台にした戦後史に残る大事件が3件もつづいた。政府がドッジ・ラインによる厳しい経済政策を強行し、特に組合に9万3700人の人員整理案を突きつけていた国鉄では首切り反対闘争が進められていた。そうしたさなかに起こった事件であっただけに、労使紛争との関係がとりざたされた。

 1月に、法隆寺金堂から出火、模写中の国宝壁画12面が焼失した。原因は電気座布団から漏電。国民的な損失であった。明るいニュースを挙げると、8月にロサンゼルスで行われた全米水上選手権で、古橋広之進選手が400、800、1500メートルの自由形3種目にすべて世界新記録で優勝"フジヤマのトビウオ"のニックネームがついた。日本人初のノーベル賞-京都大学教授、湯川秀樹博士のノーベル物理学賞受賞も、国民を喜ばせた出来事であった。

 作家、石坂洋二郎の小説「青い山脈」が映画化され、封切2週間で観客数500万人が記録されたこの年は、前年12月に戦後初めて発行された切手で新年を祝うことができた年でもあった。額面は2円で、図柄ははねつきをしている少女を描いた、いかにもお正月らしいもの。戦前の年賀切手には期間的な使用制限がついていたが、戦後初のこの年賀用切手にはそのような制限がなくなっている。

カシェカード挿絵=鮎澤美奈子

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