旧日本銀行京都支店「近代洋風建築シリーズ初日カバー」

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1982年3月10日発行

 赤煉瓦2階建て、一地階付きのスレート葺きの建物で、辰野金吾および長野宇平治の設計で明治39年(1906)に竣工した。戦後、昭和42年に財団法人・古代学協会の所有になり、現在平安博物館として利用されている。かなり大規模な近代建築の再利用の例として初期のものに属する。保存もよく明治時代の代表的な洋風煉瓦造建築である。

 赤い煉瓦の壁面に白い石の横線を入れて変化をつけ、塔屋を設けるなど設計者の独特の意匠が見られるが、様式はルネッサンスとバロックの混合したものである。この辺りにまだ西洋の歴史的な建築様式を、ただ意匠をまとめるだけのパターンとして理解し、その時代の精神とか様式の本来的な性格を十分に汲みとっていなかった当時の日本の建築家の成長段階を見ることができる。

 辰野金吾(1854~1919)は明治12年(1879)工部大学校造家学科(東大工学部建築学科の前身)第1回の卒業生で、明治から大正前半にかけての日本建築界最大の巨頭。日本銀行本店(明治29)・同大阪支店(同36年)・中央停車場(東京駅、大正3年)などの現存する大建築をはじめ作品も多い。とくに日本銀行の全国各地の主要支店は、ほとんど辰野および彼の協力者の作品であった。長野宇平治は辰野の教え子で明治26年帝国大学(後の東京大学)造家学科の出身、のちに日銀の技師となって辰野とともに、また辰野亡き後も各地の日銀の建物の設計に当たった。しかし、この建物は辰野の色彩が強い。これに隣接して建物の外観(外壁)保存に成功した中京郵便局(明治35年)があり、ともに三条通りのエキゾチックな景観を構成している。

(重要文化財、京都市中京区三条通)

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