モナコ/セザンヌ生誕150年 1989.9.7【World Topics Stamp Collection】

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『造形世界を創造した後期印象派』

 19世紀末フランス人画家ポール・セザンヌは、絵画に対する制作態度をこう語っている-「印象派から美術館の作品のような確かなものを作り出す」と。すなわち、セザンヌは印象派から学んだ自然を見る目と明るい色彩現実に基づいて、確かな造形性を保つ世界を実現しようとしたのである。絵の主題はごく初期の作品を除いて、ほとんど風景、人物、静物に限られているが、上の切手に再現された作品『オーベル農園』(パリ・オルセー美術館所蔵)を見ても分かるとおり、緊密な構成と的確な色調とによって、現実のもつ実在感が二次元の画面に実現されている。

 この作風は、のちに印象派の画風を発展させたものとして、ゴッホやゴーガンと並び、後期印象派と呼ばれ、近代絵画に大きな影響を与えた。事実、ピカソが創始した「立体派」という20世紀最大の造形革命は、セザンヌの有名な言葉「自然を円錐と、円筒と、球体として扱う」ことから始まった。立体派の出発点ともいえるピカノの『アビニョンの娘たち』は、セザンヌの『水浴図』を直接受け継いだものであるし、また同じく立体派の画家ブラックが南仏で描いた風景画も、セザンヌの風景画の落とし子といっていい。風景にしても、人物にしても。対象をその対象自体のためでなく、造形世界を作り出すための手がかりとして主題にするという、彼の制作態度こそ、立体派の画家がセザンヌから学んだものであった。

 そして、ピカソやブラックにとどまらず、「野獣派」の画家、さらには抽象画においても、セザンヌの絵画は、20世紀造形運動の基本理念として生きている。

※1989年当初の説明です。

#切手

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