昭和34年(1959)年賀切手「鯛えびす」カシェカードコレクション

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 この年の4月10日、皇太子さま(現天皇陛下)と正田美智子さま(現皇后陛下)のご結婚の儀が盛大に執り行われた。明仁親王殿下は曙色もあざやかな黄丹袍(おうにのほう)の束帯をお召しになり、美智子さまはおすべらかしに目にもあやな十二単姿で、賢所内陣にお進みになり、古式ゆかしく儀式を終えられた。

 その後おふたりは燕尾服とローブ・デコルテにお召し替えになり、朝見の儀に臨まれ、天皇・皇后陛下と親子の固めの盃ごとを済まされた後、6頭立てのあずき色の馬車にお乗りになって東宮仮御所までの8.8キロのパレードに移られた。沿道を埋め尽くした53万人の人々は、小旗をふって歓呼し、その光景はテレビを通じて全国に中継された。

 この年、後楽園球場に初めて天皇・皇后両陛下がご来場され、貴賓席でプロ野球の巨人対阪神の試合を楽しまれた。この6月25日の天覧試合で、前年に新人王となった巨人軍の長嶋茂雄選手は、9回裏サヨナラ13号ホームランを放ち、白熱したゲームに劇的な決着をつけた。"ミスタープロ野球"の愛称をえた彼は、以後、この年のルーキーの王貞治選手とともにプロ野球史上に輝くON時代を築く。

 9月26日、伊勢湾台風が紀伊半島に上陸、東海地方を中心に大きな被害をもたらした。3メートルを超す高潮で被害が拡大した。ちなみに、この年の初頭からメートル法が実施されていた。

 昭和34年新年用切手には、「鯛えびす」の図柄が採用されている。鯛えびすは、香川県高松市の郷土玩具である高松張り子のひとつ、嫁入り人形の代表的なものである。

 同市近郊では、嫁ぎゆく日に嫁入り人形をたくさん持参し、近隣の子供たちに与える風習がある。現在は張り子製だが、昭和の初めころまでは土人形であった。粘土を固めただけの割れやすい人形で、それがゆえに、割れること(夫婦が初夜を契ること)を縁起よしとする結婚に欠かせない縁起物となった。鯛えびすは、めでたい(鯛)とえびす(福神の恵比寿)を組み合わせた嫁入り人形である。

カシェカード挿絵=藤井厚志

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