Olenellus clarki

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アメリカのオレネルスとしては、比較的に知られる種類ですが、この標本の特筆すべきは中心部にある黒い波打つ線です。これは、「消化管」と考えられていて、この様に軟体部である消化管がハッキリ残る標本は少なく貴重です。動物としての重要な機能である消化管ですが、カンブリア紀初期の黎明期の消化管は、現生の哺乳類などの複雑な消化器と比較すると単純すぎるほど簡素な器官でした。口から肛門まで直線的に続き、消化腺などがあった可能性はあります。堆積物ごと吸い込み有機物を消化して大部分は排出するような食事をしていたと考えられています。近年の研究では、カンブリア紀に素嚢(消化前の食物を一時的に保管する袋状の器官)や中腸腺(酵素を分泌する器官)を保有している種類も確認されていて、想像以上に複雑な消化器を持っていた可能性もあります。

【標本リンク】FFストア
http://www.ffstore.net/detail/oln_010.html

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  • 比較的よく見かけるオレネルスの仲間の中でも、この種ほど個人的に見分けが難しい種はないように思います。特にO. gilbertiあたりと見分けにくい気がします。記載を見ても素人的には鑑別には役に立ちませんし、頭鞍の形など特徴的で鑑別の役に立つのではと考えた事もあるのですが、結局よく分からなくなってしまいました。
    さておき、この標本は面白いですね。頭鞍の素嚢あたりの部分のみにシミがある標本は、今こそちょこちょこ見かけますが、この標本のように、肛門あたりまで明瞭に連続的につながっている標本は珍しく思います。まるで以前見かけた、消化器系の研究材料になったpalaeolenusの論文の標本のようです。

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      Trilobites

      2020/11/09

      gilbertiの方が3節辺りからの脇の棘が太いかなとは思っていましたが、Olenellusは、頭部の目の位置や比率のが種の同定に重要なので、もう少し調べてみないとダメですね。消化管の痕跡は、状態の良い標本が少ないので、ほぼ全体が残っている個体の標本は貴重だと思います。この様な標本なら何体でも欲しくなってしまいます。

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