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Richteros(Perrector) falloti
モロッコでも最も初期の地層から産出する三葉虫です。2020年頃から見かけるようになったモロッコの新種で、私的に最も印象的な種類に感じます。Resseropsという属名で以前から少数ながら見かけていた種類と極めて近縁ではありますが、本種は頬棘が長く、棘の弧の描き方が丸みを帯びていて、印象が異なります。属名や分類は、まだ混乱していてSaukiandidae(科)に属すると思っていましたが、Resseropidae(科)という分類も見かけます。幾つかのバリエーションも見られ、今後の記載が待たれます。 【標本リンク】Tresors du Temps https://tresorsdutemps.com/index.php/produit/beautiful-trilobite-richterops-falloti/
Lower Cambrian Resseropidae,Redlichioidea,Redlichiina,Redlichiida TRI-753 AmouslekTrilobites
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Protolenus sp.
モロッコでは新産地とされるIssafenes。大型で特徴的な種が多く、コレクターに注目されて来ていましたが、実は軟体部も保存されている個体が存在する事も密かに知られていました。石質だけ見ていると軟体部が保存されるように思えなかっただけに意外に思えるかもしれません。近年は、オルドビス紀Fezouata累層の軟体部保存の知名度がありますが、Issafenesの軟体部もクッキリしています。触覚が保存されている、この標本、細くてしなやかな質感が良く分かります。
Lower Cambrian Ellipsocephalidae,Ellipsocephaloidea,Redlichiina,Redlichiida TRI-686 IssafenesTrilobites
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Esmeraldina roweii
Holmiidae(科)は、初期のオルネルスの仲間ではマイナーな部類ですが、良く知られる種の中では、モロッコの大型種Cambropallas telestoと同じ分類となります。本種とCambropallasが同じとは言われてもピンとこないかもしれませんが、共通の特徴に背の棘があります。(Cambropallasは後半だけですが)頭部の太い頬棘以外に短く鋭い3つの棘が後方にあります。頭部は細かい粒々に覆われているのが分かります。胸部と尾部は非常に柔らかな構造である事が推察でき、中央部の縦に伸びる棘も柔らかめに見えます。この様な体の構造により、胸部の化石化がし難い産状の種類です。
Lower Cambrian Holmiidae,Olenelloidea,Olenellina,Redlichiida TRI-269 CampitoTrilobites
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Gigantopygus papillatus
記載年だけ見ると古くから知られた種に見えますが、Issafenの三葉虫が市場に現れたのは、2010年代になってからでした。初期の三葉虫のグループとしては大型化したIssafenの種類の中でも大きな種類の一つです。平坦で過度な装飾がある訳ではありませんが、幅広な体形は優雅に見えます。Issafenの三葉虫自体が登場が遅かったのですが、モロッコでも僻地の環境もあり、再び供給が乏しくなって来ており、本種は良質な個体の入手が困難となっています。
Lower Cambrian Gigantopygidae,Redlichioidea,Redlichiina,Redlichiida TRI-537 IssafenTrilobites
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Delgadella lenaicus
入手できる三葉虫の中でも最も初期の産地の一つであるシベリアのシンスク累層。産地は、2012年にユネスコ世界自然遺産(レナ川の柱群)に登録されています。元々アクセスが悪い上に極寒の地、更に世界遺産に登録となり、出てきても高額な標本となる産地です。エオディスクスの仲間は、世界各地で報告があれど、どの産地においても個体数が少なく、収集の障壁になっているコレクターも多いと思います。分類的にアグノストゥスに近い為、三葉虫に分類するかは議論の余地がありますが、Delgadellaは胸節が3つあり、見た目はアグノストゥスよりは三葉虫に近い事は分かります。右側が頭部と思われますが眼は無い種類なので、ツルっとしてます。左側の尾部にはY字の溝が確認できます。
Lower Cambrian Hebediscidae,Eodiscoidea,Agnostida TRI-692 SinskTrilobites
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Gabriellus sp.
オレネルスの仲間は、三葉虫の発祥時の姿をしているのですが、後世の時代の三葉虫と比較して決して見劣りするような形体ではなく、むしろ最も美しい姿であると捉える収集家も多いです。カナダのAtan累層からは、数種類のGabriellusが知られますが、採掘の管理が徹底されていることもあり、市場に出てくるGabriellusは、完全体ともなると手が出せないくらいの高額で取引されます。
Lower Cambrian Olenellidae,Olenelloidea,Olenellina,Redlichiida TRI-416 AtanTrilobites
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Estaingia(Hsuaspis) bilobata
カンブリア紀前期では世界的に有名なEmu Bay Shaleは、三葉虫に興味が無い一般の方でもバージェスや澄江と並ぶ知名度はあると思います。この地の三葉虫は種類は少ないですが、巨大化したRedlichiida takooensisや体節の多さで有名なBalcoracania dailyiの影に隠れて地味な種類です。初期の三葉虫は分類的に難しい所があり、本種もEmuellidae(科)という特殊な存在であります。この標本は欠損していますが、本来ならば頬棘がある種類です。
Lower Cambrian Emuellidae,Emuelloidea,Ptychopariida TRI-131 Emu Bay ShaleTrilobites
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Olenellus(Paedeumias) terminatus
カルフォルニア州Pyramid shale Memberからは、最初期の三葉虫が褐色系の母岩で産出します。この産地は現在は、新規の採掘はされていないと聞きます。これらは最も古い三葉虫の一つで、この産地からは、複数の個体が固まって産出し、多くがバラバラに崩れた状態で産出するため、全体像が分かる個体や完全体は滅多に無いのです。各種OlenellusやBristoliaなど、この産地のほぼ完全な標本は、凄い価格が付くのですが、初期の三葉虫は、外骨格が固くなく、化石化するまでに崩壊しやすいため、全体像が残る事が奇跡に近いのです。
Lower Cambrian Olenellidae,Olenelloidea,Olenellina,Redlichiida TRI-327 CarraraTrilobites
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Redlichia chinensis
これぞ、ザ・レドリキアという教科書的な標本で、本当に美しいです。私がこの標本を入手したのは1990年代でしたが、購入データを見返してみると今では考えられない安価で入手しています。近年は状態の良い標本を探すのは大変になりました。Redlichia chinensisという三葉虫は、かなり広い範囲で産出したものを指すケースが見られ、細かい所では産地が複数あり、実は産地情報が謎のケースが殆どであります。 (中国名/中华莱得利基虫)
Lower Cambrian Redlichiidae,Redlichioidea,Redlichiina,Redlichiida TRI-12 -Trilobites
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Bergeroniellus spinosus
数ある三葉虫産地の中でも最も採取困難な立地のため、元々市場には出回り難く、地味な割に高額な三葉虫でした。更に2012年に「レナ川の柱群」としてユネスコの世界自然遺産に登録されると、もう新規の標本は手が届かない存在になってしまいました。三葉虫を産出するカンブリア紀の地層の中でも初期の層なので、三葉虫創世記の貴重な産地です。典型的な平坦な体形をした種類ですが、鋭い頬棘を既に発達させていました。
Lower Cambrian Ellipsocephalidae,Ellipsocephaloidea,Ptychopariida TRI-6 SinskTrilobites
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Mesonacis bonnensis
Mesonacis bonnensis(Resser&Howell1938)=Paedeumias brevoculusということで、二つの名前のどちらが正式なのかは分かりませんが、購入時の名称は、Paedeumias brevoculusでした。ニューファンドランド島には、世界遺産でもあるグロス・モーン国立公園があり地学的にも重要な地で個人的に行ってみたい魅力的な島の一つです。ニューファンドランドの三葉虫は、ウェゲナー(Alfred Lothar Wegener)が唱えた大陸移動説の古生物学的根拠としてプレートテクトニクスの考え方の基本となった事で知られます。また島の東西での三葉虫化石の違いからカレドニア造山運動(大陸衝突)によるシルル紀末のイアペタス海が消滅したことの証明など、三葉虫が地球史解明に大きな影響を及ぼした地であります。
Lower Cambrian Olenellidae,Olenelloidea,Olenellina,Redlichiida TRI-359 ForteauTrilobites
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Olenellus clarki
アメリカのオレネルスとしては、比較的に知られる種類ですが、この標本の特筆すべきは中心部にある黒い波打つ線です。これは、「消化管」と考えられていて、この様に軟体部である消化管がハッキリ残る標本は少なく貴重です。動物としての重要な機能である消化管ですが、カンブリア紀初期の黎明期の消化管は、現生の哺乳類などの複雑な消化器と比較すると単純すぎるほど簡素な器官でした。口から肛門まで直線的に続き、消化腺などがあった可能性はあります。堆積物ごと吸い込み有機物を消化して大部分は排出するような食事をしていたと考えられています。近年の研究では、カンブリア紀に素嚢(消化前の食物を一時的に保管する袋状の器官)や中腸腺(酵素を分泌する器官)を保有している種類も確認されていて、想像以上に複雑な消化器を持っていた可能性もあります。 【標本リンク】FFストア http://www.ffstore.net/detail/oln_010.html
Lower Cambrian Olenellidae,Olenelloidea,Olenellina,Redlichiida TRI-500 Pioche ShaleTrilobites
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Nephrolenellus geniculatus
初期の三葉虫の産地として著名なPioche Shaleのオレネルスです。頬棘、肋棘がきれいに残る標本は少なく、この個体は胸部にも縦の棘が確認できる保存状態です。この地からは、Olenellus gilbertiが非常に有名ですが、Olenellus(Paedeumias)chiefensisなど幾つかの種類が確認されています。Olenellusの仲間は皆同じに見えてしまいますが、頭部の幅、眼の位置関係などで種が分れているようです。本種は、他のOlenellusより尾部の節が広く発達している様に感じます。 【標本リンク】FFストア http://www.ffstore.net/detail/npo_005.html
Lower Cambrian Olenellidae,Olenelloidea,Olenellina,Redlichiida TRI-225 Pioche ShaleTrilobites
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Olenellus chiefensis
三葉虫の原点であるオレネルスの仲間は、これだけ沢山の種類の三葉虫収集して比べても、やはり美しい完成されたフォルムであることをつくづく思います。この仲間から3億年もの間に様々な形状に多様化していった訳ですが、最初から美しい姿をしていたからこそ三葉虫はこれ程までに収集家を惹きつける存在になったのではと思います。オレネルスの仲間は、収集すると気が付きますが、いわゆる完全体と呼ばれる全体が綺麗に残った標本がとても少なく、市場に出てくると高価になります。脱皮殻であることも多いのですが、後の時代の三葉虫の様なしっかりとした外骨格がまだ発達していなかった事にもよります。
Lower Cambrian Olenellidae,Olenelloidea,Olenellina,Redlichiida TRI-465 PiocheTrilobites
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Peachella iddingsi
この種類の完全体は、例え出てきたとしても私には購入できないほど高価ですが、頭部だけの部分化石であれば手が届きます。負け惜しみではありませんが、この種の特徴は「頬」ですので、この部分化石でも不足はありません。初期のOlenelloidea(超科)は、どの種類も似たような形状をしていてコレクターでも種類の分類が困難な種類が殆どですが、Peachellaは、非常にユニークな形状をしているので、一目で分かります。頭部の頬棘に当る部分が膨らんだ瘤のような器官が付いています。この瘤の目的は解明されていませんが、まるで「ほっぺ」のように見えて微笑ましい姿です。
Lower Cambrian Olenellidae,Olenelloidea,Olenellina,Redlichiida TRI-445 CarraraTrilobites