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Salterocoryphe salteri
ポルトガル産では珍しく圧縮が無い標本です。見た目が近いColpocoryphe rouaulti(HENRY,1970)とは、尾部の畝があるか無いかで識別されますが、本標本は分かり難いですが尾部に畝が確認できるため、Salterocorypheに同定されています。 どちらの種もスペインやフランスなど近郊の地層からも産出されます。 【標本リンク】Pangaea Fossils http://www.fossilscapes.com/fossils-cat1/world-trilobites-for-sale/wtfs1/worldwide-trilobite-for-sale-1.htm
Middle Ordovician (Dariwilian) Calymenidae,Calymenoidea,Calymenina,Phacopida TRI-752 ValongoTrilobites
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Paradoxides gracilis
仏人地質学者Joachim Barrande(1799-1883)により研究され、著書[Systeme silurien du centre de la Boheme](1852)にて詳細な図版が描かれている本種は、三葉虫の研究史に足跡を残している重要な種類として知られます。世界のカンブリア紀の地層で見つかるParadoxidesの中でも収集家に知られる存在です。当時からの産地だったVinice Hillは、長年の採掘により枯渇しており、焦茶で艶のある本標本の様な質感があり、10cmを超える標本は、世界の収集家が放出しない限り市場に出来て来る事はありません。特に大型で頬棘が残る個体は希少価値が高いです。
Middle Cambrian(Drumian) Paradoxididae,Paradoxidoidea,Redlichiina,Redlichiida TRI-307 JinceTrilobites
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Lepidoproetus lahceni
特徴的な大き目の吻と幅広体形で、この仲間としては大き目の体。長い頬棘も太くしっかりした物で体の大きさからは明らかに比率が大きいです。またProetidae(科)では珍しく背軸の棘を持ちます。ただPhaetonellusの様に全ての節にあるのではなく、後半の4つ程度に留まります。この種類は、Rken Tafraout産でも産出するようです。
Lower Devonian Proetidae,Proetoidea,Proetina,Proetida TRI-548 ‐Trilobites
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Damesella paronai
古くから知られる種で、独特の存在感の本種は、所属する科も含め孤高の存在です。非常に硬質の母岩という事もあり、昔は状態の良い個体は見かけませんでしたが、近年、欧米の工房により現在の技術で剖出された状態の良い個体が出回るようになると、細かい顆粒に覆われ、平坦ながら鋭い棘を発達させている姿は、より一層存在感のある姿となっています。しかしながら産地情報など未だに謎に包まれ、知られる割に情報を得る事ができない謎の種類です。
Middle Cambrian Damesellidae,Dameselloidea,Lichida TRI-523 KushanTrilobites
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Eobronteus laticauda
記載年からも分かる様に非常に古くから知られた種類です。この標本は、この産地の産状を良く表していて、チャートの様な質感にEobronteusの尾部や頭部などの部分化石が積み重なって形成されています。この様にまとまって産出し、完全体での産出は無いのですが、細部の保存は明瞭で尾部や頭部の皴構造を観察するには最適な状態です。
Lower Ordovician Styginidae,Illaenoidea,Illaenina,Corynexochida TRI-711-2 -Trilobites
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Nobiliasaphus nobilis
ポルトガルの他、スペインやフランスなど西ヨーロッパに広く産出する種類です。長く太い頬棘が特徴で、アサフス(目)の特徴を良く表しています。ポルトガル産は、褶曲の影響を受けやすく、実際の体形より伸ばされていたり、体高が低い潰された産状ですので、他の産出エリア産と比較して別種の様な姿の場合もあります。
Middle Ordovician Asaphidae,Asaphoidea,Asaphida TRI-85 ValongoTrilobites
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Comptonaspis swallowi
本種は、ミズーリ州産が有名なのですが、こちらは直線で600㎞以上離れたニューメキシコ州産です。顆粒の無いツルっとした体表面が特徴で、元々特徴が少ない石炭紀の三葉虫ですが。ミズーリ産との区別はつきません。ニューメキシコ産の本標本は、100年以上前に採取された古い標本です。
Lower Carboniferous(Mississippan) Phillipsiidae,Proetoidea,Proetina,Proetida TRI-280-2 Lake ValleyTrilobites
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Parabathycheilus gallicus
小さいが故に目立たないだけで、本種は実に独創的でユニークな姿をしています。緩く巻いた太目の頬棘は、尾板より長く伸びているとはいえ、ここまでは普通です。特徴的なのは、頬に当たる部分が大きく膨らみ、その上に大き目の眼が飛び出ているのです。近縁のケイルルス亜目エンクリヌルスなどに見られる特徴ですが、こちらはカリメネ亜目になります。もう少し大きければ結構奇抜な種類として人気を集めたかもしれません。
Lower Ordovician Bathycheilidae,Calymenoidea,Calymenina,Phacopida TRI-422 FezouataTrilobites
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Rusophycus Pudicum
Rusophycus Pudicum(三葉虫の休息痕)とされる化石であり、所謂、「三葉虫の巣穴」です。泥の中で脚を動かしていたので、左右に分かれる特徴的な形状になります。主が居なくなった後に泥に埋まり保存されるのですが、不思議な事に一緒に三葉虫本体が埋まっている化石を見た事が無いので、本当に三葉虫のものなのか疑問は残ります。周辺部も良く見ると小さな生物が這って回った状態が、そのまま残されており、化石化する事の無かった軟体生物の痕跡である事が分かります。Waldron Shaleという事で、DalmanitesやCalymeneの可能性はありますが、これらの三葉虫が産出するエリアとは違う場所の化石であります。
Upper Silurian Rusophycus Pudicum TRI-712 Waldron ShaleTrilobites
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Acadoparadoxides briareus
一般的に入手可能な三葉虫の内、最大級の大きさを誇るのが本種です。私の全コレクションの中でも最も大きな三葉虫です。片側10㎏を超える重さのため、撮影の為に標本箱を下ろしたり、移動したりするだけでクタクタになる程です。Paradoxididae(科)の仲間は、チェコ、カナダ等広い範囲で産出し、何れも大型になりますが、モロッコ産の巨大さは群を抜いている様に思えます。A.mureroensis(Sdzuy, 1958)が最も知名度がある種名ですが基本的には出回る標本の大きな個体は本種と思われます。2010年代以降に大きさによる細分化が行われ、A.nobilis(SDZUY,1958)やA.levisettii(Geyer and Vincent, 2015)など小型の種類も同定されるようになりました。本種は、見た目のインパクトが大きくインテリア等の一定の需要があるため、模造品や補修品が多く流通しています。個人的に真贋を見分けるポイントとして、綺麗すぎない事やAcadoparadoxides独特の側葉部の成長線がある事が挙げられます。長年市場を見ていますが、10万以下で買える様な標本にレベルの高い標本は先ず無いと感じます。 [Left side:Negative,Right side:Positive]
Middle Cambrian Paradoxididae,Paradoxidoidea,Redlichiina,Redlichiida TRI-146 Jbel WawrmastTrilobites
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Jenskinsonia varga
この大きさで何かの幼体とかではなく、成体です。短く鋭い頬棘に卵型の胸部と尾部、見た目が可愛らしいだけでなく、個性を持っています。この種類自体は、それ程珍しいとは思っていませんが、状態の良い個体を入手するのは至難だと思います。完全な状態に仕上げても高額にはならないですし、小さくて見栄えもしないので人気種とは言えないといった商業的価値が理由で、力を入れて剖出した標本が少ないのではと想像しています。
Middle Cambrian Alokistocaridae,Ptychoparioidea,Ptychopariina,Ptychopariida TRI-116 Wheeler ShaleTrilobites
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Pliomera fisheri
まるで、ダンゴムシかミツオビアルマジロの様に完璧に丸まったPliomera、4億年以上前の生き物の化石というよりは、美術工芸品の根付を見ている様な錯覚になります。ファコプスの仲間が繁栄したのは、この完璧なエンロール姿勢が可能だった事が一つあると考えられ、捕食者から幾度の危機を乗り切って来た事でしょう。ここまで完璧に丸まった状態で化石化するのは、埋もれるタイミングなど奇跡的な事で、更に発見される時もホンの僅かな箇所だけ(この化石でいうと右頬辺りが少し風化)が見えていて、発見される風化する前に採掘されるなど奇跡が重なる必要があります。 【標本リンク】FFストア http://www.ffstore.net/detail/pmf_020.html
Lower Ordovician Pliomeridae,Cheiruroidea,Cheirurina,Phacopida Kunda level Voibokalo Quarry,St.Petersburg region,RussiaTrilobites
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Scabriscutellum sp.
背中に棘のあるScabriscutellumが登場しだしたのは、1990年代後半だったと記憶しています。デボン紀モロッコ産は、既に様々な棘々種が登場していましたが、サンドブラストを用いた革新的な剖出技術の向上により、より繊細な体表面の凹凸を飛ばす事なく残す事が出来た要因が大きいと感じます。それまでは、棘があるなんて全く想像もしていなかったScabriscutellumに新たな姿があったとは驚きを得ると共に、更にモロッコ産三葉虫の多様性と保存の良好さに魅了されて行くのでした。本標本も保存が良い個体に見られる尾板縁のギザギザが確認できます。
Middle Devonian Styginidae,Illaenoidea,Illaenina,Corynexochida TRI-721-2 -Trilobites
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Scabriscutellum sp.
尾部を改札鋏で切り込みを入れた様に切り取られています。しかし、その後も生き抜いたのでしょう、縁取りは丸く滑らかになっています。脱皮直後に別の生き物に捕食されかけたと思われますが、相手が何物だったのか今となっては不明です。尾部の切り取られた場所の近くの尾部の中心付近も歪みが生じています。このScutellumは、胸部に一つずつ垂直方向の棘が並ぶ種類です。棘のあるScutellumは市場に登場して暫く経ちますが、まだ正式な学名が確認できません。
Middle Devonian Styginidae,Illaenoidea,Illaenina,Corynexochida TRI-518-2 -Trilobites
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Maurotarion christyi
三葉虫の化石というよりBrachiopods(腕足類)の化石といった方が正解かもしれません。シャコガイを小さくした様な大きな畝のあるBrachiopodsが20個体ほど散らばります。よく見るとPlatyostoma(巻貝)や三葉虫の胸部、頭部の一部、ハイポストマなどが確認できます。化石自体は黄鉄鉱化(Pyritized)しており、黄金色に輝きます。ブルースプリング採石場から産出したシルル紀の海底が想像できる美しい標本です。現在、ブルースプリング採石場は水没していて新規に採取することは出来ないそうです。
Upper Silurian Aulacopleuroidea,Aulacopleuroidea,Proetina,Proetida TRI-262-2 Waldron ShaleTrilobites