第三集「早苗とる手もとやむかししのぶ摺」① 奥の細道シリーズ切手限定コレクション

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 芭蕉が「しのぶもぢ摺の石」を見たのは、五月二日(陽暦六月十八日)のこと

『奥の細道』には、

  あくれば、しのぶもぢ摺の石を尋ねて、

  忍のさとに行く。

  遥か山陰の小里に石半ば土に埋れてあり。

  里の童の来りて教へける、

  「昔はこの山の上に侍りしを、

   従来の人の麦草をあらしてこの石を

   試み侍るをにくみてこの谷につき落とせば、

   石の面下ざまに伏せしたり」

  といふ。

  さもあるべきことにや。

   早苗とる手もとや昔しのぶ摺

  とある。

「しのぶもぢ摺の石」は、昔、信夫群の名産の布を染めるのに用いたという巨石。河原左大臣源融の歌「みちのくの忍ぶもぢずり誰ゆゑに乱れむと思う(又は、乱れそめにし)我ならなくに」で知られる歌枕。
この句は、旅中に最初、

 五月乙女にしかた望まんしの摺

と作られ、すぐに

 さなへつかむ手もとやむかししのぶ摺

と改められていたのを、上五をかえて、『奥の細道』に用いられたもの「むかしのぶ摺」の「しのぶ」が掛詞になっている。

[句意]
五月女たちが苗代から早苗をとる手つきを見ていると、昔、あのような手つきでしのぶ摺を摺っていらのかとしのばれることだ。

季語・「早苗」(夏)

「もぢ摺り石」は、文字摺観音(福島市山口)の境内に柵で囲んである。境内に句碑がある。なお、文字摺局の風景印は、河原左大臣の歌碑を描く。

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