昭和32年(1957)年賀切手「だんじり」カシェカードコレクション

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 この年、イギリスが、太平洋のクリスマス島で初の水爆実験を行った。またソ連がICBM(大陸間弾道弾)の実験成功を発表したのにつづき、アメリカも試射に成功した。ソ連はまた、人類初の人工衛星「スプートニク1号」の打ち上げに成功した。

 人類史上初の人工衛星の打ち上げに、世界は衝撃を受けた。それまで科学に無縁であった人々でさえ、夜空を仰いで人間のつくった星を見つけようとした。1ヵ月たらず後に、ソビエトはライカ犬を乗せたスプートニク2号も打ち上げている。科学者や一部のサイエンスフィクション(SF)ファンだけの夢であった人間の宇宙旅行が、もはや目の前に迫っていることを全人類に告げたのである。

 ソ連にとって、宇宙開発は国家の威厳を高める大きな政治的な意図があった。また、人工衛星が偵察や軌道核爆弾など軍事利用の可能性を秘めていることも見逃せない事実であった。一方、史上最強の国を自認するアメリカは、痛烈なショックを感じた。2ヵ月前にソ連がICBMの実験成功を発表した事実と合わせて、先進国という自信は無残にも失墜した。以後アメリカの宇宙開発は、国威の回復を最も大きな目標として進められることになる。

 極東の島国、日本は終戦から10余年、世は神武景気に沸いていた。「ファニー・フェイス」「ケ・セラ・セラ」「よろめき」「カックン」などが流行語となり、「美徳のよろめき」(三島由紀夫)と「挽歌」(原田康子)がベストセラーとなった。9月には、国産ロケット1号機「カッパーC型」が発射成功したが、世界のレベルからはほど遠いものがあった。

 この年の新年賀切手には、長崎県の郷土玩具「だんじり」が採用された。長崎くんちとして知られる諏訪神社の祭礼に曳き出される山車(関西以西ではだんじりとよばれる)の鯨の潮吹きを張り子でつくったもの。頭に細かく幾筋にも割った竹を刺し、潮が吹きだしたかのように見せている。、

カシェカード挿絵=藤井厚志

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