旧学習院初等科正堂「近代洋風建築シリーズ初日カバー」

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1983年8月15日発行

 正堂とは講堂の意。この建物は2度の移築を経て現在地に至ったものである。最初は東京四谷尾張町の学習院に初等科正道として明治32年(1899)7月に竣工した。構内に約10年前に建てられた旧本館の古材を使用するなどして経費節減を図ったため当初予算3万円のものが9,500円で完成したと伝えられ。宮内省所管で設計者などは不明である。

 昭和12年(1937)皇太子殿下の初等科御入学に備え新講堂を新築されることになったので、宮内省から移築費の一部3,500円を添えて千葉県印旛郡遠山村に下賜され、同村立遠山尋常高等小学校講堂として移築された。完全復元の方針で忠実に工事が行われていたので、戦後昭和48年に国の重要文化財建造物に指定されたが、その直後から再び解体工事が始められ、昭和51年3月に現在地に移築が完了したのである。これは成田国際空港の開設に備えて、同校に新しく防音講堂を新築することになり、この建物は千葉県に譲りわたされたためである。当初遠山村に下賜されたのは、ここに宮内省の下総御送料牧場があったという縁によるもの。空港の設置でこの牧場も他所に移った。時代の動きというものであろうか。

 建築面積約655㎡、木造平屋建てストレート葺きの簡素な印象の建物で、正面中央に大きな広間をとり左右に控室が張り出し、また背面に演壇部分が突出し、正面と側面の三方にはベランダをめぐらしている。内部は演壇全面に柱頭飾りをつけた円柱と四角柱を一組にしら柱の列が並び、窓まわりや出入口扉など、さすがにこの建物の由緒を物語る堂々たる意匠である。屋根の棟飾りも田舎の学校の講堂には不相応である。しかし全体の印象は堅実・質素で、落着いた趣みを持つひそかな名建築と言えよう。

(重要文化財、千葉県成田市)

※1983当初の説明です

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