旧五十九銀行本店本館「近代洋風建築シリーズ初日カバー」

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1983年8月15日発行

 明治37年(1904)の上棟。現在は青森銀行記念館となっている。木造2階建てで正面に展望台を兼ね備えた屋根窓がある。壁面は木の下地の上に瓦を貼り、その上をシックイで塗籠にしているので、一見石造りのように見える。様式的にはルネッサンス調の意匠を基本にしているのが、屋根窓の半円を三つ重ねたデザインなど独創的でもごとである。やはり擬洋風建築と言うべきであろうが、きわめて洗練されている。

 明治時代の半ばごろから伝統的な技法である土蔵造りを応用して、各地に銀行建築が建てられるようになった。もちろん内部の間取りや使い方は西洋風の銀行だが、外観は日本の土蔵造りの意匠をとっていた。当時は未だ耐震・耐火の鉄筋コンクリートは日本に紹介されておらず、また煉瓦の建物に対しては耐震上の不安があり、地方では熟練した煉瓦職人が少なかったためもあろう。経験のある、信頼できる人間関係の中から土蔵造りの銀行建築が生まれたものと思われる。この建築は技法的にも意匠的にも、そうした傾向の頂点に位置する優れた作品である。

 これを設計し工事を行ったのは地元弘前の棟梁、堀江佐吉(1845~1907)。津軽藩お抱え大工の家に生まれ、青森の第四連隊兵舎工事ではじめて洋風建築に接し、明治12年函館に渡って開港以来の多くの洋風建築を学び、明治19年、彼のおそらく最初の設計になる洋風建築である東奥義塾校舎を皮切りに、弘前市およびその周辺でさかんに洋風建築の設計・施工に当った。この建物はとくに彼が心血をそそいでつくり上げたものである。

(重要文化財、弘前市)

※1983当初の説明です

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