DVD「ミュンヘン」

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 2005年製作。いきなり個人的な話ですが、1972年のミュンヘン・オリンピックは物心ついてから初めて体験した夏季五輪で、開催期間の前半はまだ2学期が始まっていなかったこともあり、積み残していた夏休みの宿題を気にしつつも、テレビ中継にかぶり付き状態でした。そんな最中で起きたイスラエル選手団襲撃事件については、飽くまで印象でしかないのですが、日本ではそれほど大々的には報道されなかったようで、そんな事件があったということだけが頭の片隅に残っていました。それから30年以上隔てて製作された本展示アイテム収録作は、オリンピック開催時には知り得なかった.内実の一端を窺い知ることができた作品でした。
 原作はジョージ・ジョナスの『標的(ターゲット)は11人 モサド暗殺チームの記録』。1972年に起きたミュンヘンオリンピック事件と、その後のイスラエル諜報特務庁(モサド)による黒い九月に対する報復作戦を描いたもので、そもそもがノンフィクション小説ですから、事実と異なる点も存在するものの、その映画化である本作は事件の概要を把握する大いなる一助となりました。
 スピルバーグ監督としては、『シンドラーのリスト』、『アミスタッド』、『プライベート・ライアン』などに次ぐハード路線の作品で、画面から漂う緊張感は高く、紛れもない力作でしたが、やや難を言えば2時間43分はさすがに長尺で、本邦公開の頃の自身の体調のこともあり、結局本作を劇場で観ることができなかった一因だったのですが、これは余談。
 興味深かったのは、『シンドラーのリスト』の製作については、出自がユダヤ人であるというスピルバーグのアイデンティティーの反映であると素直に受け入れられやすいのに対し、本作はそのユダヤ人国家であるイスラエルをやや否定的に描いている点が興味深く、そのことを批判する向きもあったそうですが、本展示アイテムに収録されている「スピルバーグ監督によるイントロダクション」で自身が語っているのは作品の主題が、暗殺を重ねるにつれて陥ることになったモサドのメンバーの苦悩、ということで、ここは映画作家の本分を発揮したということでしょう。そのことは画面からもひしひしと伝わり、そこはスピルバーグの演出力の面目躍如でした。
 さて、本展示アイテムはDVDの2枚組で、Disc2の収録内容は添付画像の2枚目に記載がありますが、特に興味深かったのはやはり「音楽」に関してで、ジョン・ウィリアムズのインタビューではいかに作品の各部に対して細かな配慮を施したかが説明されていました。ただ、そのことと音楽の出来とは話が別で、それについては『ミュンヘン』のサントラ盤を展示する機会があれば、そこで語ってみたいと思います。
 あと日本語吹替についてですが、まあ正直言って可もなく不可もなくというところでしょうか。もっとも、知っている声優が森川智之と坂口芳貞くらいだから、ちょっと論評し辛いかな。でも、坂口氏のように聞き慣れた声が流れてくると、少し安心しますね。
https://www.youtube.com/watch?v=TxU6rp9VFGA
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    kyusha_fan

    2022/03/10 - 編集済み

    この映画は一昨年、地元の自営ホビーショップの店長と映画の話になり、おススメの映画としてこの作品をあげられました。実際に起きたこの事件をその時知りました。テレビで放映してた記憶が無いのです。浅間山荘事件は昼間ライブ中継してたので放課後テレビで固唾を飲んで観てた記憶はあります。

    後日おススメのこの映画を借りてきて観ました。ミュンヘンオリンピックでこんなショッキングな事件があってたのですね。
    昨年の東京オリンピックでテロに遭った方々に対して追悼の時間が設けられた事はとても良いことだったと思います。遺族の方々も感謝されてましたね。

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      woodstein

      2022/03/11

       kyusya_fanさん、コメント有難うございます。あさま山荘事件と同じ年の出来事でした。
       さて、その『ミュンヘン』をお薦め映画として挙げたホビーショップの店長さん、こんな言い方すると上から目線になってしまいそうですが、なかなかの識見の方の様ですね。現在、還暦を越されておられるのなら、このミュンヘン襲撃事件を実体験として記憶されていたのでしょう。
       ということで、何かもやもやした気分となった北京冬季五輪でしたが、それを払拭すべく近々別の映像ソフトを展示しようと思っています。

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