DVD「ドン・ファン」

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 「ドン・ファン」がいかなる者なのかは何となくは認識していたものの、ではちゃんとした書物を読んで知っているのかというと、そうではない。ということで、Wikipediaの記載を引用すると、
「ドン・ファン(Don Juan)は、17世紀のスペインの伝説上の人物。ティルソ・デ・モリーナの戯曲『セビリアの色事師と石の客』が原型。美男で好色な放蕩的な人物として多くの文学作品に描かれた。プレイボーイ、女たらしの代名詞としても使われる。元になった伝説は簡単なもので、プレイボーイの貴族ドン・ファンが、貴族の娘を誘惑し、その父親(ドン・フェルナンド)を殺した。その後、墓場でドン・フェルナンドの石像の側を通りかかったとき、戯れにその石像を宴会に招待したところ、本当に石像の姿をした幽霊として現れ、大混乱になったところで、石像に地獄に引き込まれる。」
 細部はともかく、大枠はモーツァルトの歌劇『ドン・ジョヴァンニ』のストーリーどおりなのだろう、という把握の仕方を私自身はしており、それ自体は今でも変わっていません。あと蛇足ですが、他にクラシック音楽で『ドン・ファン』というとリヒャルト・シュトラウスの交響詩が思い浮かばれます。曲の冒頭部分は、テレビ朝日系列の「芸能人格付けチェック」で正解発表の時に使われるBGMに採用されていますので、馴染みの方もおられるかもしれません。
 さて、「ドン・ファン」(または「ドンファン」)の語がタイトルそのもの、または含まれている映画は何作かあります。
①1926年、本展示アイテム収録作
②1934年、出演ダグラス・フェアバンクス、マール・オベロン
③1948年、『ドン・ファンの冒険』出演エロール・フリン、ヴィヴェカ・リンドフォース
④1970年、チェコ映画、人形劇
⑤1973年、『ドンファン』監督ロジェ・ヴァディム、出演ブリジット・バルドー、ジェーン・バーキン
⑥1995年、『ドンファン』出演マーロン・ブランド、フェイ・ダナウェイ、ジョニー・デップ
 この中でも⑤は「ドン・ファンが女性」、すなわちブリジット・バルドーがドン・ファン張りの魔性の女を演じるという、いかにもロジェ・ヴァディムらしい作品で大いに興味をそそるのですが、日本では劇場未公開ということもあり、未見です。また⑥もかなり凝った設定の作品なのですが、これについては別の機会に触れます。
 ということで、本展示アイテム収録作ですが、ジョン・バリモア扮するドン・ファンが女たらしのプレイボーイであるという設定以外は上記の伝説とは別の話で、バイロン卿の1821年の同名叙事詩をベースとしたものです。
「ドン・ファンの父ドン・ホセ(ジョン・バリモアの二役)は、妻に裏切られて女性不信になり、多くの愛妾を侍らすが、嫉妬からその一人に刺殺されてしまう。そうした父の教えからドン・ファンはただのプレイボーイとなってローマに遊学、浮名を流す。そのドン・ファンを執政ボルジアの妹ルクレチアが我が物にしようとするが、ドン・ファンはボルジアの政敵デラ・ヴアーネズ公爵の娘アドリアナ(メアリー・アスター)が他の女とは違い貞淑なことを知って恋してしまう。以下、権力を背景にアドリアナと結婚式を挙げようとしたボルジア側近のドナテイ伯との決闘を経て、ドン・ファンがアドリアナともども投獄され、二人が脱出してめでたくスペインに旅立つ」
というのがあらすじで、要はジョン・バリモアの美貌が際立つハッピーエンドの冒険活劇であり、それこそモーツァルトのオペラのような悲劇とはかけ離れた娯楽作でした。
 あと、本展示アイテムには「米発公開時特典映像」なるものが1時間弱に亘って収録されており、その内容は2番目の添付画像の左部に表示されていますが、個人的にはエルマンやエフレム・ジンバリストの演奏する映像が見られたのが嬉しかったですね。
https://www.youtube.com/watch?v=DYgu5Fsp_Nc
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