追憶
テレビ放映ではなく、本格的に劇場で映画を観始めたのは70年代の終盤頃からなのですが、その頃東京に数多くあった名画座の上映プログラムでよく見かけた、つまり情報誌「ぴあ」でよく見かけたのが、『タクシードライバー』『ミッドナイト・エクスプレス』の2本立てと『スティング』『追憶』の2本立てでした。飽くまで個人的な印象ですが。要するに、頻繁に上映されていたというのはそれだけ人気作品であり、多くの方々に観られたわけですが、日本の観客はどのような感想を持たれたのでしょうか。そんな話もしたいのですが、それは別の機会に。また、この作品を語るうえで欠かせないのが、マービン・ハムリッシュの音楽とバーブラ・ストライサンドの主題歌で、それについては小ネタがあるのですが、それもサントラ盤を紹介する機会に譲ります。さらに、このフロアにおいて、DVDなど映像ソフトでは吹替の話をするのが通例ですが本展示アイテムには収録されていません。ただ、本作はテレビ放映されているので当然吹替も存在し、私もその放映自体を観ましたが、その時気づいたことも少なからずあり、それは上記の本作に対し「日本の観客はどのような感想を持たれたのでしょうか」という問いかけにもかかわってきますので、それも別の機会にさせてもらいます。
さて、本展示アイテムには「Looking Back」というメイキング・ドキュメンタリーとシドニー・ポラック監督の音声解説が収録されていますが、特に前者は見ごたえがありました。2部構成で、前半は映画本編の裏話、特に削除したシーンについてシドニー・ポラック監督とバーブラ・ストライサンドの間ではその後も議論となっているのは、この作品に対する考えの際が垣間見え、興味深かったですね。また、後半は作曲のマービン・ハムリッシュや主題歌を作詞したマリリンとアランのバーグマン夫妻が登場しての解説でしたが、かなり細やかな配慮がなされたことが説明され、これも興味深かったです。そして、それらの詳しい内容については、上記のそれぞれの「別の機会」に述べたいと思います。ただ、「別の機会」に回しすぎるのもつまらないですから、「Looking Back」で語られた事項について触れますかね。
アーサー・ローレンツが自身の学生自体の体験をもとに書き上げた脚本の映画化ですが、レイ・スタークはケイティの役をストライサンドに決め、彼女も自身がユダヤ人であるという境遇もあってその役の内容をすぐに理解できた、という理想的なキャスティングだったのに対し、ハベルの役はなかなか決まらなかったそうです。シドニー・ポラックは自身の監督作でともに仕事をしたレッドフォードの起用を本人に打診しましたが、なかなか承諾が得られず、レイ・スタークからはレッドフォードの起用はやめて他の俳優(ライアン・オニールなど)にすべきだ、という圧力もある中、最終的には約1年近くの説得の末に同意させたということでした。レッドフォードとしては、ハベルの性格に優柔不断な面があることが気に入らなかったのかもしれず、もしそうだとしたら自身の芸域を自ら狭めることになるわけですが、この時期の彼はまだまだ俳優としてのイメージの維持の方が重要とも考えたのでしょう。ただ、結果的にはレッドフォードのキャリアにはプラスとなった選択だといっても過言ではありません。まあ、仮にライアン・オニールに決まったならば、どうしても『おかしなおかしな大追跡』のイメージがつきまとい、レッドフォードの場合ほどの作品的成功はなかったような気がします。
あと、これは余談ですが本作の続編が企画されていた、という話もあったそうです。ケイティとハベルの間に生まれた女の子が復縁のために尽力するのだが…、というストーリーだったそうですが、さすがに構想だけで終わってしまいましたね。
ということで、あまり中身のない紹介文になってしまいましたが、それだけ本作は一筋縄ではいかない作品だということです。
https://www.youtube.com/watch?v=CKvBvWb0Wzg
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