ヴァンパイア

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 まず申し上げるべきは、本アイテム収録作品は劇場公開時には『吸血鬼』という邦題であったことで、本フロアで散見されるパブリック・ドメイン作品のDVD発売における元々の邦題とは異なるタイトルでの商品化です。
 さて、カール・ドライアー監督作品というと『裁かるゝジャンヌ』が有名、というよりもそれしか知りませんでした。それも、「古い映画にそういう作品がある」というだけのことであり、要するにタイトルと、それに付随して「カール・ドライアー(またはドライヤー)」という監督名を記憶していたに過ぎず、本アイテムを店頭で目の当たりにして初めて『裁かるゝジャンヌ』以外の作品があったのだ、ということを知りました。
 「吸血鬼もの」の映画というと、よく言えば娯楽作、悪く言えば「B級」「ホラー」という修飾がつくことが多く、本作のように世評では「芸術作に富んだ作品」、淀川氏によれば「吸血鬼映画の最高峰」というのは、例外的といえます。実際に観てみると、主人公の旅人の心理描写の側面が強く、それを幻想的な映像表現を駆使している、という感じで、要するに見た目に分かりやすいバケモノが登場しなくても、観客の恐怖心を煽ってみせたその演出力は、個々人によって好き嫌いはあるでしょうが、映画史に名を残すだけのことはあると言えます。
#DVD #淀川長治 #ヴァンパイア #吸血鬼 #カール・ドライアー #カール・ドライヤー

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    toy ambulance

    2019/07/31

    woodsteinさん
     先日は失礼しました。
     さて、ドライヤーの作品ですが、私は3作しか見ていません。
     恐らく16mm版で「吸血鬼」と「裁かるゝジャンヌ」を見ましたが、この2作はオリジナル版が曰く付きの運命を辿っているため、どこまでドライヤーが意図した通りのものか、定かではありません。
     それでも、「吸血鬼」の夢の中の様な映像表現は強い印象が残っています。ただ、「裁かるゝジャンヌ」はほとんどジャンヌと審問官のクローズアップを繋いだような内容でしたので、オリジナル版消失後の第2版に基づくものではないかと思います。
     従って、完全にオリジナルな形で35mm版を観ることが出来たのは、戦後作品の「奇跡」のみです。
     こちらの作品は、キリスト教を背景とする物語よりも、北欧の独特の光彩を捉えた映像の美しさに魅了された方が大きかったと思います。それだけでも一見の価値ありかと思います。
     
     

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      woodstein

      2019/08/03

       toy ambulanceさん、コメント有難うございます。カール・ドライヤー監督作品『奇跡』ですが、なぜかチラシだけは以前(おそらく40年近く前)から持っていたので、そういう映画が存在することだけは認識していたのですが、入手したころはまだ『裁かるゝジャンヌ』も『吸血鬼』も知らなかったので、後年これらの作品のDVDに触れるにあたってカール・ドライヤーのことを多少知り、そのフィルモグラフィーに『奇跡』が含まれているのを知って、チラシの件を思い出しました。作品自体はスクリーンではなく、映像ソフトで観ることが出来たので、内容に関してはいずれ触れることもあると思いますが、toy ambulanceさんの仰る「一見の価値あり」に同意する、とだけ申しあげておきます。

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