Dindymene didymograpti

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『三葉虫の中で、最も好きな名前の種を挙げてください』

そう聞かれれば、私はこの種を推薦します。
ディンディメネ・ディディモグラプティ(Dindymene didymograpti) 。やたら『ディ』が多い種ですが、語感が良いので、発音はし易く、覚え易くもあると思います。

ディンディメネというのは、アナトリア地方の大地の神で、地母神 (the mother of the Gods) の一人の、ディンディメネから取ったものと思われます。この神は別名キベレ (Cybele) とも言います。ちなみに、三葉虫界でキベレと言えば、ロシアの奇妙なカタツムリのような三葉虫 (Cybele panderiなど) を表す属名でもあります。学名はその生物の特徴を表しているものが多いですが、人名、地名や神の名由来だったりして、思わぬところで色々な雑学が繋がるのも、古生物をやっていて面白いなと感じる点であります。

さて、この種はイチゴ頭の三葉虫、エンクリヌルスの仲間なのですが、面白い事に眼がないのです。エンクリヌルスと言えば、ぶつぶつの頭鞍以外に種によっては、ニョキッと伸びた、眼が特徴的であります。この種にはそんな眼が存在しません。多分、光の届かない大陸棚よりも深部、若しくは洞穴環境で生きていたのでしょう。他、写真ではほぼ捉えられないのですが、頭部の最後部より垂直に伸びた避雷針のような棘もあるようです。写真頭鞍後方のピンボケしている部分がそうです。

実は8mmととても小さい標本なのですが、とても見所の多い種であります。

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    Trilobites

    2020/07/04

    元々Cheiruroideaの仲間は産出量が少ないのですが、本種はweb上にある画像も限られ、本当に数が少ないんでしょうね。一見難解なようで一度聞いたら覚えられる命名、センスがあると私も思います。造形の深い種なので本種が5㎝位あったら結構な有名種になったと思いますが、この大きさなので地味な存在に甘んじている気がしております。

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    • この標本は確か、Bob.K氏より購入したと思いますが、その後見ていても、彼からの本種のオファーはあって1個体程度だった気がします。それ以外の購入元では見た事がないですし、本当に少ない種なんだろうと思います。グッドデザインな本種であり、確かに5cm、あるいはせめて3cmあれば、もう少し違う事になっていたのだろうなと思いますね。

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