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Cyphaspides sp.
派手な種の多いモロッコのデヴォン紀の中でも、比較的近年みつかったジョルフ (Jolf) で産出する種は、見た目が派手でヴァリエーションに富み、色合いも母岩の質を反映して、透明がかった白〜赤を帯びており美しく、コレクターに大人気の産地です。 本種はそのジョルフ産の種のうちの一つ。透明感のある赤みを帯びており美しい標本です。通称キファスピデス (Cyphaspides) と呼ばれている種の仲間ですが、他のジョルフ産の種同様、未だ正式な記載はなされておりません。キファスピデスの仲間には、頬棘〜胸節から伸びる棘が棘が短いタイプと、本種のように長いタイプがいて、両者は明らかに見た目が異なっています。 膨隆した頭鞍を覆う顆粒、頭部辺縁や尾部辺縁に沿い並ぶ細かな棘、軸葉に並ぶ二列の棘などが観察でき、見所のある標本です。
Devonian - Jolf, Morocco Cyphaspides sp.trilobite.person
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Gravicalymene arcuata
イギリス産の三葉虫、グラビカリメネ・アルクアタ (Gravicalymene arcuata) です。三葉虫蒐集のかなり初期に入手した標本ですが、その後市場で見かける事もそれほど多くなく、産出量のそこまで多くない種だという印象です。 ぼやっとした境界不明瞭な標本が多い本種ですが、本標本は細部まで観察でき立体感もあり、35mmと本種にしてはサイズもかなり大きめです。ポジネガともに揃っており、良標本かと思います。 カリメネはシルル紀を中心に全世界で繁栄した種ですが、本種のように古くはオルドビス紀にも分布していました。市場で見かける種で、Gravi-が接頭につくカリメネはあまり多くありませんが、有名どころでは本邦で産するグラビカリメネ・ヤマコシィ (Gravicalymene yamakosii) が知られております。アルクアタとは対照的に、ヤマコシィはデヴォン紀の種ですので、カリメネ全体で見ればオルドビス、シルル、デヴォンと3つの紀に渡り、生息していた事がわかります。
Ordovician - Gwynedd, Northwales, UK Gravicalymene arcuatatrilobite.person
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Dindymene didymograpti
『三葉虫の中で、最も好きな名前の種を挙げてください』 そう聞かれれば、私はこの種を推薦します。 ディンディメネ・ディディモグラプティ(Dindymene didymograpti) 。やたら『ディ』が多い種ですが、語感が良いので、発音はし易く、覚え易くもあると思います。 ディンディメネというのは、アナトリア地方の大地の神で、地母神 (the mother of the Gods) の一人の、ディンディメネから取ったものと思われます。この神は別名キベレ (Cybele) とも言います。ちなみに、三葉虫界でキベレと言えば、ロシアの奇妙なカタツムリのような三葉虫 (Cybele panderiなど) を表す属名でもあります。学名はその生物の特徴を表しているものが多いですが、人名、地名や神の名由来だったりして、思わぬところで色々な雑学が繋がるのも、古生物をやっていて面白いなと感じる点であります。 さて、この種はイチゴ頭の三葉虫、エンクリヌルスの仲間なのですが、面白い事に眼がないのです。エンクリヌルスと言えば、ぶつぶつの頭鞍以外に種によっては、ニョキッと伸びた、眼が特徴的であります。この種にはそんな眼が存在しません。多分、光の届かない大陸棚よりも深部、若しくは洞穴環境で生きていたのでしょう。他、写真ではほぼ捉えられないのですが、頭部の最後部より垂直に伸びた避雷針のような棘もあるようです。写真頭鞍後方のピンボケしている部分がそうです。 実は8mmととても小さい標本なのですが、とても見所の多い種であります。
Ordovician, Abereiddian Stage - artus Biozone, Hope Shales of Minsterley, Shropshire, UK Dindymene didymograptitrilobite.person
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Actinopeltis sp.
初めて見た方は『何だこのお茶の水博士のような鼻の三葉虫は?』と思われるかもしれません。 この頭部のでっぱりは、正確には、鼻ではなく頭鞍といいます。この頭鞍が大きく膨らんだ、奇怪な風貌の本種は、アクチノペルティスの一種 (Actinopeltis sp.) と呼ばれます。モロッコのオルドビス紀産の三葉虫です。 このような頭鞍を持つ種は、アメリカ、ロシア、英国など、世界に複数種が居て、その見た目からコレクターの間では、頭ボール/ボール頭などと称されます。奇妙ながらも、どこかコミカルで愛らしい風貌から、非常に人気の高い種でもあります。 モロッコ産の本種は、他の産地の類似種に比べると、比較的入手し易くも、入手機会はそこまで多くはありません。本標本は、風化したかのような茶色の発色ですが、産地によっては真っ黒な標本もあり、さらにサイズや特に尾部の形状もまちまちで、モロッコだけでも複数種類がいるようです。ただ、現時点では、いずれも正式な学名はついておりません。 この不思議なボールの機能については、大食説 (ボールの部分が胃)、抱卵説など様々ですが、いずれも仮説に留まります。特にカンブリア紀の何種かの三葉虫では頭鞍は、一種の消化器官 (Crop:素嚢) であることが確認されており、個人的には後者 (抱卵説) よりは、前者 (大食説) がもっともらしいかなとは感じます。
Ordovician - Zagora, Morocco Actinopeltis sp.trilobite.person
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Megistaspis hammondi
このやたら巨大な三葉虫は、メギスタスピス・ハムモンディ (Megistaspis hammondi) です。私が現在所有する標本の中では、三葉虫本体サイズ比較で、最大の標本となります。モロッコのオルドビス紀産。 パッと見は、モロッコオルドビス紀の数多のアサフスと良く似ているのですが、尾部に長い尻尾が生えており、他のアサフス系種との見分けは比較的容易です。頬棘も割合立派で、良くわからない謎の種が多いモロッコのアサフス類の中では、一目に判別できる種であります。幼体と思われる10cm前後の標本も見かけますが、一般的にこのサイズまで成長する種であり、巨大な標本も市場でしばしば見かけます。写真7枚目では、北米のファコプス (真ん中の母岩の上の黒い三葉虫。Eldredgeops rana rana 。10mm程度) と比較しております。なんとなく巨体感が掴めるのではないかと思います。 本標本は置き場所に困っており、居場所を求めて、常に私の家の中をあっちへこっちへと彷徨っております。扱いに困るので、この標本以上のサイズのものは手を出さないでおこうと心に決めております。 存在感の割には、あまりマニアの間では話題にならない種であります。しかし、軟体が保存された本種がたまに見つかる事もあり、過去には実際、消化器官や付属肢が良好に保存された標本がScientific Reportsで紹介され、ニュースになった事もあります。
Ordovician - Tantan, Morocco Megistaspis hammonditrilobite.person
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Scabriscutellum sp.
スカブリスクテルムの一種 (Scabriscutellum sp.) です。ティサノペルティス (Thysanopeltis) と似ておりますが、こちらは明らかに尾板周りの棘がなく、そちらとは容易に鑑別する事ができます。あくまで種にもよりますが、モロッコ三葉虫としてはコモンな種であり、状態を問わなければ入手は容易です。 しかしその鑑別は困難を極め、分類は混乱の最中にあります。まず、Thysanopeltisは別にしても、他に見た目の近い属レベルで違う(かもしれない) 種々のスクテラムが存在します。 第一に、プラティスクテルム (Platyscutellum sp.) 。Platyscutellum cf. massaiなどと表記される事が多いです。これは尾板が極端に頭部に比較して小さく分かり易い種ではあります。ただスクテラムの中でも、見た目が奇妙で大型で目立つので、モロッコの偽物三葉虫の代表としてフェイク品を頻繁に見かけます。次に、体全体が細かい顆粒に覆われたメタスクテルム (Metascutellum sp.) 、ないしはゴルディウム (Goldium sp.) と呼ばれる種もいます。Metascutellum aff. pustulatumなどと呼ばれております。それらよりは極少数ですが、複眼や中葉から目立って長い棘が生えている、ボヨスクテルム (Bojoscutellum sp.) と呼ばれる謎の種もいます。いずれも、主にチェコの類似種などを元に名付けられており、厳密な意味での記載という訳ではないように思います。 さて、ややこしい事に話はそこで終わりません。このスカブリスクテルムにも、やはりと言うか色々なタイプがいます。 中でも、2006年に記載 (Chatterton et al., 2006) された種、 ○スカブリスクテルム・ラフチェニ (Scabriscutellum lahceni) Occipital ring及び胸節軸葉の前3節と後3節にのみ、太く垂直な棘が生えるタイプ ○スカブリスクテルム・ハムマディ (Scabriscutellum hammadi) 尾部周りにルーペで観察できる程度の小さな無数の棘を認めるタイプ 私の知る限り、スカブリスクテルムのうち、厳密に正式に記載されているのは、この2種のみかと思います。 他にスカブリスクテルム・フルシフェルム (Scabriscutellum furciferum) という古くから知られた種がいて、多くの市場のスカブリスクテラムに、取り敢えず名としてつけられております。 正確には、チェコ産のスカブリスクテルム・フルシフェルム・フルシフェルム (Scabriscutellum furciferum furciferum) を元に記載された、スカブリスクテルム・フルシフェルム・ハムラグダディアヌム (Scabriscutellum furciferum hamlagdadianum) という亜種であります。これは確かに1971年にAlbertiらにより記載されています。ただ問題点として、今から半世紀前の当時、今ほどの剖出技術が整っておらず、仮に棘など細かい構造があったとしても、全部プレップ中に飛ばしてしまったものと思われます。Chattertonらは、このフルシフェルム・ハムラグダディアヌムは不完全な頭鞍と、複数の形態の異なる尾板を元に記載されており、その存在は少々怪しいと断じております。 図鑑の説明としては、不適切なほど長文になってしまいましたが、まとめると、極少数の記載種を除けば、スクテルムは正確に分類されるに至っていないという事であります。 そこでやっとこの標本についてですが、特徴としてはOccipital ring及び胸節の全てにやや小型の垂直な棘が並んでいます。入手元で、スカブリスクテルム・フルシフェルムとして手に入れたものであります。確かにその可能性はありますが、上記の通りフルシフェルムはその記載に疑問符が付く上、本種には軸葉に垂直な棘があり、当時のフルシフェルムは少なくとも棘の記載はないので、この種と断定する事はできません。ラフチェニが似ているもの、ラフチェニは胸節軸葉に関しては、前方3節と後方3節にのみ棘がある種である為、明確に違います。 つまり、本標本は、スカブリスクテルムの一種 (Scabriscutellum sp.) とするしかないかな、という結論です。今後の本種の研究を待ちたいものです。 その分類に対する疑義はともかく、見ての通り素晴らしいプレパレーションであります。プレパレーターは凄腕ハンミ氏 (Hammi Ait H'ssaine) 。お見事の一言であります。
Middle Devonian - Morocco Scabriscultellum sp.trilobite.person
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Walliserops tridens & Acastoides zguilmensis
一体この謎のフォークにどんな機能があったのでしょうか? 戦いの武器?、一種のセックスアピール? いずれも想像の域を出ませんが、興味が尽きません。 こちらは、Walliserops tridens (ワリセロプス・トリデンス) & Acastoides zguilmensis (アカストイデス・ジグイメンシス) です。このうち、特にワリセロプスは見ての通り、あまりに奇妙な頭部先端のフォークが目立ち、見た目がド派手な為、モロッコ三葉虫の中でもとりわけ人気が高い種です。 さて、このワリセロプスには複数種がいて、 ✔︎フォークが長いタイプ: Walliserops trifurcatus ✔︎フォークが短いタイプ: Walliserops tridens Walliserops hammi Walliserops lindoei と大まかに分けられます。 長いタイプの唯一の種、ワリセロプス・トリフルカトゥス (Walliserops trifurcatus) は実に奇天烈な見た目の種で、『あんた一体何者なんだ?』とツッコミたくなります。フォークや棘の掘り出しには技術を要し、プレパレーターの腕が試される種でもあります。この種は、とりわけ人気がありますが、フォークが短いタイプに比べれば、比較的産出量は多いようです。 一方、短いタイプには主に上記3種類がいます。 ハンミ (Hammi) はフォークが細く両脇の角が大きく湾曲している事が特徴です。リンドエイ (Lindoei) はフォークの3つの角が潰れて、平坦になっている事が特徴であります。本種トリデンスは、特徴がない事が特徴といいますか、細くもなく潰れてもない短いフォークなら、トリデンスかなと私は判断しています。流通量的には、リンドエイ>ハンミ>=トリデンスなイメージです。リンドエイとトリデンスはやや似通っていて、混同されている標本も見かけます。 ところで、このフォーク、日本のカブトムシのようだと思われた方もいるかもしれません。しかし、実は全然構造が違います。カブトムシの角はよく見ると、先が4つに分かれ左右対称です。一方、このフォークは見ての通り3つ組構造です。3つ組の構造物は、古代〜現生種でみても、実はかなり珍しく、この種を特別なものにしています。 三葉虫の形の面白さや奇妙さを説明する際に、これほど適した種もいないと思います。
Devonian - Timrzit, Maider, Alnif, Morocco Walliserops tridens & Acastoides zguilmensistrilobite.person
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Palarejurus sp.
パラレユルスの一種 (Paralejurus sp.) です。 モロッコデヴォン紀で産出する、有名で一般的な三葉虫のうちの一つです。 特徴は、その楕円形の可愛いらしい体型も一つですが、何より全身を覆う謎の『しわ』がこの種に特異的です。『しわ』は特に頭部と尾部に目立ちます。単なる模様だったのか、それとも成長線の類なのか、色々な仮説はありますが、想像を巡らせるのが精一杯で、研究者にもマニアにも誰にも分かりません。ただこのように、ある程度自由な想像の余地があることもまた、化石の一つの魅力だろうと思います。 モロッコのデヴォン紀の三葉虫は、市場が先行しており、正式な学名が未記載の種も多いです。パラレユルスもまた、素人目に見ても色々なタイプのものがあり、おそらくこの標本もまだ学名が付いていません。安全の為、この標本もsp.表記に留めています。 この標本はモロッコ三葉虫を得意とする、一級プレパレーターである、ハンミ氏 (Hammi Ait H'ssaine) によりプレップされており、微細な構造に至るまで高レベルに保存されております。特に複眼構造の保存は見事の一言です。
Middle Devonian - Morocco Palarejurus sp.trilobite.person
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Scabrella sp.
この愛らしい風貌の王蟲のような三葉虫は、スカブレラ (Scabrella sp.) です。体長240mmとかなり大型の種で、モロッコデボン紀の幻種とも言える巨大三葉虫です。ずんぐりむっくりした巨体に、小さな眼がちょこんとついており、尾部からは小さな尻尾が出ております。何かのマスコットキャラのような種です。全体として、母岩から浮かせたプレップをしてあり、いわゆるフライングフィニッシュ仕上げとなっています。 この種を初めて見る人であれば、『これ、本物ではなくて模型なんじゃないの!?』という感想を抱くかもしれません。実際、『こんな生き物がいたのだろうか、仮に居たとしてもこんな形で化石が残るだろうか』、と思う方も多かろうと思います。全く妥当な疑問だと思います。 実は一時期、私はこの種に入れ込んだ事があり、この三葉虫の事を随分調べ回りました。結論を言えば、この不思議な三葉虫は架空のものなどではなく、確かに存在した生物なのだという事であります。本標本は棘のないタイプですが、棘のあるタイプもいて、棘の太さなどにより、更にタイプが分かれる可能性があります。なお、この棘のないタイプは、Scabrella propradoanaと言及される事もありますが、やや疑義が残りますので、Scabrella sp.のままとしております。 目立つ三葉虫なので、モロッコではこの種の偽物が大量に出回っています。出回る99%がフェイクとすら言われています。本標本は、いくつかの理由から本物だと考えていますが、100%本物ではなく、この種の部品を組み合わせて作ったコンポジットだと考えます。真のこの種の本物は、滅多になく、まさに幻扱いであります。 6~8番目の写真はこの種の尾部のみの標本です。この部分化石の保存状態は非常に良く、表面に小さな毛穴のようなものが見えます。ここからは感覚毛が生えていたという仮説もあります。更によく見ると、表面に棘が取れた跡のような痕跡も見る事ができます。 実に興味深い三葉虫であります。
Devonian - Issoumour, Morocco Scabrella sp.trilobite.person
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Flexicalymene ouzregui
フレキシカリメネ・オウズレグイ (Flexicalymene ouzregui) です。 博物館や恐竜展のお土産物などでもおなじみの巨大カリメネで、北米のエルラシア・キンギ (Elrathia kingi) と並び、市場で最も出回る三葉虫です。安価で風化が進んでいるものや、別の個体のパーツを繋げた粗悪品も多く、蒐集家には軽視されがちの種でもあります。 しかし、カリメネの中では実はトップレベルに巨大な種で、実際、本種に大きさで勝負できるカリメネなど、カナダのディアカリメネ・シチュチェルティ (Diacalymene schucherti) という希少カリメネぐらいなのではないかと思います。サイズという一点だけでみても、けして軽視できる種ではないと思います。私が、このカリメネを初めて目にしたのは幼少期ですが、ボロボロの標本だったにも関わらず、その巨体感に感動したものです。 出来るだけ風化が進んでおらず、ノジュールを割ったままの自然な標本を選びました。灰色く表面が風化したような見た目の標本が多い本種ですが、この標本は色も黒くて安っぽくなく、比較的表面の状態は良好です。こちらは、ミネラルショーでドイツの有名ショップ『Horst Burkard』より購入しております。 2個体が縦に並んでいるのも、どこか滑稽で面白い構図です。
Ordovician - Hamar Laghdad, Morocco Flexicalymene ouzreguitrilobite.person
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Calymene sp.
オルドビス紀は、非常に多種多様な三葉虫が登場した時代ですが、それ故、種数が多く記載が追いついておりません。特に、モロッコのオルドビス紀三葉虫は、種数が非常に多く、風化が進んでいる傾向にもあり、未記載種に溢れています。 これも、そんな良くわからないモロッコのオルドビス紀三葉虫のうちの一つ。 入手元では、グラビカリメネ (Gravicalymene sp.) とされておりました。確かに形状はカリメネではあります。6番目の写真で標準的サイズのカリメネである、フレキシカリメネ・ミーキ (Flexicalymene meeki) と比較していますが、ご覧の通り巨大サイズのカリメネです。同国同時代の大型カリメネというと、博物館のショップやお土産レベルの化石でも有名な、多産するフレキシカリメネ・オウズレグイ (Flexicalymene ouzregui) があまりにも有名です。しかし、本種は見た目からして、明らかにオウズレグイとは異なります。 一時は、自由頬のないプラドエラ (Pradoella sp.) かな?とも考えたのですが、やはりどこか頭部や尾部の構造が違うように思うのです。第一に、産地がKaid errami (一方、プラドエラはZagoraで産出する) ので、やはり違う種だろうなと考えております。 結論は未定種、カリメネの一種 (Calymene sp.) としております。このような未知の種の多さもまた、モロッコのオルドビス紀三葉虫の魅力であります。
Ordovician - Kaid errami, Morocco Calymene sp.trilobite.person
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Gittara gitarriformis
こちらはギタラ・ギタリフォルミス (Gittara gitarriformis) 、英国のプロエトゥス目 (Proetida) に属する石炭紀の三葉虫です。写真の3個体のうち、1個体のみ (写真2番目) のみ、Ventral (三葉虫の腹側から見た化石) です。 似たような形かつシンプルなフォルムの、石炭紀の三葉虫の特徴を挙げる事は少々難しいです。ただ、どちらかというと長細い楕円形の石炭紀三葉虫が多い中で、この種は長細くはなく、幾分広い横幅を持ち丸っこい事が特徴と言えるかもしれません。他に、この種は、複数個体が固まって産出する事が多い為、集団で生活をしていた可能性があります。 石炭紀の三葉虫は市場どうこう以前に、そもそも生きていた当時の個体数が少ないので、当然化石の産出量も少なく、どの種も希少であります。この種も入手の機会は限られており、本標本のような、ほぼ完全体の標本は貴重であります。
Carboniferous - Visean, Chadian Sub-state of Slaidburn, Lancashire, UK Gittara gitarriformistrilobite.person
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Drotops armatus
一体彼は誰から身を守りたかったのでしょうか? あるいは、誰かにその派手な見た目をアピールしたかったのでしょうか? デヴォン紀を代表する有名種、ドロトプス・アルマトゥス (Drotops armatus) です。アルマトゥスとは『武装した』という意味ですが、その種小名が呈する通り、三葉虫の全身を痛そうなトゲトゲで覆っております。デヴォン紀を代表する三葉虫であるファコプスの仲間であり、同時代を特徴づける『棘』を持ち、まさにこの時代を代表する種と言えるかと思います。この種は多くのファコプス同様、防御姿勢をとる事ができますが、そうなるとぐるり一周棘だらけで、もはや捕食者は手出しできなくなります。この派手な『棘』は、この時代に巨大化・高機能化した魚類に対する防御の為という説が根強くありますが、本当のところは誰にも分かりません。 比較的繁栄した種のようで、常に市場で売りに出されている為、状態を問わなければ比較的入手はし易いです。ただ棘が偽物である事が多いのと、プレパレーションが荒い標本が多いので、状態の良い標本の入手はそれなりに困難です。 いずれにせよ、150mm近くになる巨体も手伝い、初見でのインパクトは凄まじく、多くの三葉虫コレクターが最初に憧れる種の一つであります。
Devonian - Atlas Mountain Range, Morocco Drotops armatustrilobite.person
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Pseudosphaerexochus hemicranium
シュードスファエレクソクス・ヘミクラニウム (Pseudosphaerexochus hemicranium) です。 本標本のサイズは15mm程度ですが、最大でも30mmと小型の種です。小さくはありますが、泡状頭 (Bubble head) とも評される大きな膨らんだ頭鞍、ちょこんと可愛らしい眼、フリルのような尾部など、各部位が特徴的で、全体的に奇妙さと可愛らしさを兼ね備えた種です。オルドビス紀英国で産出する、シュードスファエレクソクス・オクトロバトゥス (Pseudosphaerexochus octolobatus) という類似種がいて、サイズこそ本種の2~3倍ですが、見た目はとても良く似ています。 ロシア産三葉虫の中でも、非常に希少な種でもあり、この小ささにも関わらず高額な種でもあります。とても可愛らしいアイドル的な三葉虫であります。
Lower Ordovician - Voybokalo quary, St. Peterburg, Russia Pseudospharexochus hemicraniumtrilobite.person
