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Morocops ovatus
モロコプス・オバトゥス (Morocops ovatus) の標本です。 モロッコでもトップスリーに入る程度にコモンな種類のファコピダであり、大抵のマニアが2-3標本目までに入手する種でもあるかと思います。かつては標本の質が全体的に良好でなかった事もあり、モロッコのファコプス類の鑑別は困難でした。しかし、近年のプレップ技術の向上と研究の成果により、かつては一様に見えた同地のファコプスにも、非常に豊かなバリエーションがあることがわかっています。 本標本も、サイズや質感が中々良く、テーブルの上に置いて眺めていると目を楽しませてくれます。 以下、拙ブログのリンクですが、本種の鑑別方法などを掲載しております。 http://676bbs.blog.jp/archives/19311663.html よろしければご参考ください。
Middle Devonian - Oufaten, Morocco Morocops ovatustrilobite.person (orm)
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Ductina ductifrons
ドイツの三葉虫、ダクティナ・ダクティフロンス (Ductina ductifrons) です。 市場では、このドイツ産しか見かけたことがありませんが、イギリス、ロシアのウラル地方やポーランドのHoly cross Mts. などでも産出するようです。また有名な類似種として、中国産のダクティナ・ヴェトナミカ (Ductina vietnamica) がおりますが、こちらは二回り程サイズが大きいです。 ファコプスの仲間ですが、眼は二次性に退化して無くなっており、深海環境等に適応していた種なのではないかと考えられています。地味な趣の、コレクターには人気のない三葉虫ですが、三葉虫の進化や生態を考える上では、面白い種であります。
Devonian - Oberbergisches Land, Wuppertal, Eskesberg, Germany Ductina ductifronstrilobite.person (orm)
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Schizophoria schnuri
ポーランドの腕足類、スキゾフォリア・スキヌリ (Schizophoria schnuri) です。オルチス目に分類されるようです。 スピリファーのように横に長く伸びるでもなく、特段、これという特徴があるわけでもありません。腕足類について詳しくない私が、本標本について言えることは殆どないのですが、とりあえず、よく手に馴染みコロコロしていて可愛らしい化石であります。 一体どこで、どういう経緯で、この標本を入手したのかも定かではありませんが、気がついた時には既に手元にありました。 三葉虫関連で言えば、盲目ファコプスとして有名な、トリメロセファルス・インテルプトゥス (Trimerocephalus interruptus) も、このHoly cross mountainから出る事で知られております。ただ、私は同種を持っていないので、そのついでに買ったというわけではなさそうです。
Middle Devonian (Jibetian) - Skaly, Holy cross mountain, Poland Schizophoria schnuritrilobite.person (orm)
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Colpocoryphe sp.
モロッコのオルドビス紀の、コルポコリフェの一種 (Colpocoryphe sp.) です。比較的地味な存在であるからか、注目される機会が少ないように思います。 市場を見る限り、モロッコのコルポコリフェには複数種が居るような気がするのですが、そのどれにも学名がつく事なく現在に至ります。目立つ種でもないので、今後も当分は記載が期待出来なさそうです。特にモロッコでは、よく似たサイズの小さいFlexicalymeneとごっちゃになっている事もしばしばであります。 一般的な人気はさておき、カリメネ贔屓の私には好きな部類の種であります。5体が載る複数体標本であり、一部は裏側が観察できる頭部断片も混じっています。オルドビス紀モロッコの標本にしては、黒々艶々とした質感も気に入っております。
Middle Ordovician - Zagora, Morocco Colpocoryphe sp.trilobite.person (orm)
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Austerops salamander (?)
こちらは、確定的ではないですがモロッコのアウステロプス・サラマンデル (Austerops salamander) の可能性が高いのではないかと思われる標本です。 一時期、モロッコのファコプス類 (モロコプス、ボエコプス、ファコプス、アドリシオプス属など) の鑑別に凝っており、その一部の種の分類を、記載論文を参考にしつつ、私のブログなどで特集しておりました。その際、特に、アウステロプスを取り上げきれていないのが心残りでした。 この標本は実は2年ほど前に入手したのですが、何の種かよくわからずそのうち調べようと思い、どこにも公開せず死蔵しておりました。今回ふと思い立ちもう一度真面目に調べたところ、最初に抱いた印象通り、やはりアウステロプスの一種かなと思いましたので、過去の宿題の部分的な解消がてら、公開することに決めました。 一応はハミープレップとのことで、20mm足らずと小さいながらも、細部の構造がよく確認できます。写真ではよくわからないと思いますので、以下、簡単に特徴を描写しておきます。 頭鞍には細かい顆粒が無数にある一方で、頬部や胸尾部表面はツルッとしております。頭鞍の膨らみは弱め。頬部は狭く後方に角はなく丸みを帯びています。複眼の縦列の数は最大7個前後で、vertical rowで見れば、17-18列あるように見えます。全体的には際立った特徴はないのですが、ファコプス類としては全体的に平坦でかさが低い印象です。 これらの特徴を過不足なく満たすものとしては、アウステロプス・サラマンデルが第一の候補にあがります。各種モロコプス (Morocops) の類や、アドリシオプス・ウェウギ (Adrisiops weugi) 、ファコプス・アラウ (Phacops araw) などはいずれも、特徴が違い過ぎてハナから論外として、他に、パッと見でありうる種としては、 ・Boeckops stelcki (ボエコプス・ステルキ) ・Reedops pembertoni (リードプス・ペムベルトニ) ・Austerops speculator punctatus (アウステロプス・スペクラトル・プンクタトゥス) などが挙げられます。 ただボエコプス・ステルキとしては、側葉と中軸間の結節状構造がない事、頬部の細顆粒がないことから除外的で、リードプス・ペムベルトニとしては、頬部が狭い事、頬部の後部の角張りがない事から可能性は低いのでないかと思います。 アウステロプス・スペクラトル・プンクタトゥスは、流石に同属だけあり見分けづらいのです。ただ、プンクタトゥスの場合、頭鞍の顆粒が疎で、その間に無数のpitsがあるという特徴があります。本種ではそういった要素がなく、むしろ細かな顆粒が頭鞍の全体を覆っています。また複眼の構造も、プンクタゥスとは合わないように見えます。 少々長文になりましたが、そんなわけでこちらは暫定、アウステロプス・サラマンデルと考えております。最も小さいので、若年個体の可能性があり、成熟体と特徴が異なる場合、そこがやや怪しい点ではあります。
Middle devonian - Oudressa area, Morocco Austerops salamander (?)trilobite.person (orm)
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Nileus platys
ニレウスといえばロシア産の人気種、ニレウス・アルマジロ (Nileus armadillo) が有名ですが、近隣のスウェーデンやノルウェーでも似た種を産出します。 特にスウェーデンの南部に点在する産地には、オルドビス紀中期 (ダーリィニアン) の地層が広がっており、ロシア産の相当する三葉虫の類似種が少量ながら出ます。本種はそのうちの一つ、ニレウス・プラティス (Nileus platys) であります。この地域の三葉虫は、ロシア産ほどには保存が良くなく、この個体のように外殻が剥がれた標本が大多数です。 このプラティスのフォルムはアルジマジロそのままで、茶〜褐色に色付けしたような見た目をしています。ダンゴムシのように、コロコロと丸まっていて可愛らしい標本です。手持ちだった同スウェーデン産のイラエヌス・サルシはなんとなく手放してしまいましたが、本種は愛着があり、手元に残しました。
Middle Ordovician (Darriwilian (Llanvirn) ) - Ljungsbro, Oestergoetland, Sweden Nileus platystrilobite.person (orm)
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Cummingella mesops (grabella & pygidium)
新潟県の青海の美しい石灰岩から産出する、おそらくカミンゲラ・メソプス (Cummingella mesops) の頭鞍、および尾部と思われる標本です。画像1-5 (頭鞍標本) と6-8 (尾部標本) が別の母岩です。尾部標本は小さく分かりづらいのですが、ぷっくり膨らんだ頭鞍はよく目立ち、まるで、貝類か腕足類の一部のようです。 完全体はもちろんの事、頭部全体が残る標本すら極めて稀と思われ、大半が頭鞍や尾部のみの標本であるようです。全貌が掴みづらい種ですが、オンライン上の頭部全体が残る標本などを確認するに、頭鞍のサイズの大きさが目立ちます。 カミンゲラ自体、ツルッとした比較的大きな頭鞍を持つ種です。ただ、本邦で産出する本種は、中でも目立つ頭鞍を持っていたのかもしれず、興味を唆られます。 実際、記載論文 (Kobayashi and Hamada, 1980) でも、『Cephalon massive, parabolic in outline, strongly convex, most elevating in anterior of glabella‥』→『頭部は巨大で, 外形は放物線を描き、強く凸状になっていて、頭鞍前方で最隆起する‥』などという書き出しで始まっていて、大きく特徴的な頭部を持っていたようです。
Carboniferous - 新潟県西頸城郡青海町 (糸魚川市) Cummingella mesopstrilobite.person (orm)
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Coltraneia sp.
モロッコのコルトラネイアの一種 (Coltraneia sp.) です。普通のオウファテネンシス (C. oufatenensis) でいいんじゃないかなとは思うのですが、確証がないので、差し当たり一種のままとしております。 エルベノチレほどではないものの、大きく高い複眼をもち、極めて広い視野を持っていた種だと思いわれます。棘なしエルベノチレという雰囲気の種です。 いわゆるモロッコの一般種であり、市場を見回せばほぼ常に供給されている状態です。供給量を見るに、おそらく、その広い視野を存分に活用していち早く索敵し、生存確率を上げることで、当時のデボン紀の海の中で大繁栄を遂げる事ができた種なのではないかと想像します。 この標本の特筆すべき点は、その驚異的なまでのプレパレーションにあります。こちらはモロッコ三葉虫の名プレパレーター、Hammi氏より直接購入した標本です。72時間ほどのプレップ時間を要したとのことです。彼の作品の私の手持ちの中では、最も熱量を感じる逸品です。 惜しくらむべきは、私の稚拙な撮影技術が、彼の卓越した技術の粋を全く捉えきれていないという事でしょうか。そういう意味で実に可哀想な標本であります。
Devonian - Jbel Issoumour, Morocco Coltraneia sp.trilobite.person (orm)
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Crotalocephalina secta (pygidium)
こちらは、No.23やNo.176のクロタロセファリナ・セクタ (Crotalocephalina secta) の尾部の標本です。ネガポジ揃っています。ネガが1-3、ポジが4-5です。 パッと目につくのは、その熊手のような尾部の構造で、中軸には2列の太めの突起が生えていたようです。他地域の類似種だと、モロッコのJolfのケイルルスの一種などが、近い構造をしているのではないかと思います。 また特に、ネガの標本がわかり易いですが、尾部全体の表面にポツポツと穴が空いており、尾部にまで顆粒状構造が広がっていたようです。 私は胸部の標本は所有できていませんが、頭部の標本と合わせて見ると、怪物じみた本種の全体像が浮かび上がってくる気がします。
Devonian - 岐阜県高山市奥飛騨温泉郷福地 Crotalocephalina secta (pygidium)trilobite.person (orm)
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Crotalocephalina secta (Cephalon2)
岐阜県高山市、奥飛騨温泉郷福地 (旧上宝村) のデボン紀の層より産出する、クロタロセファリナ・セクタ (Crotalocephalina secta) の頭部標本です。ネガポジ揃っております。標本No. 23と同種であります。 この標本のアピールポイントは眼、特に複眼が完全にのこっているという事です。それも本種は、比較的残り易いシゾクローアル型複眼でなく、より細かいホロクローアル型複眼であリます。日本産三葉虫で、このタイプの複眼が綺麗に残っている事には、驚きを禁じ得ません。 もちろん、頭鞍・頭鞍葉の構造やその表面を覆う顆粒も素晴らしくのこっています。観察をしていてワクワクする標本です。
Devonian - 岐阜県高山市奥飛騨温泉郷福地 Crotalocephalina secta (Cephalon)trilobite.person (orm)
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Crotalocephalina secta (Cephalon)
岐阜県高山市、奥飛騨温泉郷福地 (旧上宝村) のデボン紀の層より産出する、クロタロセファリナ・セクタ (Crotalocephalina secta) です。ネガポジ揃っております。写真1-5がポジ、6-7がネガです。個人の採取者の方より、譲っていただいた標本です。 体表面は、頭部に認めるように顆粒で覆いつくされております。また、別に標本をupしますが、熊手状の特徴的な尾部を持つ種であります。それら特徴のコンビネーションは、他の産地の類似種では、ありそうでない組み合わせであります。 世界のケイルルスの仲間の中でも、サイズは大型であり全身が揃えば、おそらく10cmを超えてくる種なのだろうと思われます。部分化石でありながらも大迫力の一品であり、その威容はモロッコで産出する立派なケイルルスにも、勝るとも劣りません。普段は標本箱に大切にしまい込んでますが、観察の為取り出す度に、日本産離れしたそのサイズ感に、いちいち驚いてしまいます。 この産地は私の好みであるので、贔屓目があるかもですが、同地産のグラビカリメネ・ヤマコシと並び、日本を代表する三葉虫の一つと言えるかと思います。他の福地産三葉虫の標本と併せて、私のお気に入りのトップ5に入る標本群であります。
Devonian - 岐阜県高山市奥飛騨温泉郷福地 Crotalocephalina secta (Cephalon)trilobite.person (orm)
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Sphaerexochus latifrons
スウェーデンのゴットランド島のスファエレクソクス・ラティフロンス (Sphaerexochus latifrons) です。 ゴットランド島の三葉虫は、カリメネ、エンクリヌルス、プロエトゥス以外の完全体の化石は極端に少なく、それ以外は部分化石での入手が基本です。本種スファエレクソクスは、日本のシルル紀の地層でも産出するなど、分布域の広い種ではありますが、どの地域であれ、頭部以外の化石が残る事は稀であるようです。 別個体と思われますが、頭部と尾部の本種を入手しておりましたので、同時に登録してみました。6番目の写真のように頭部と尾部を並べてみると、全体像が何となく浮かび上がるような気がします。
Silurian (Ludlow) - Petes, Gotland, Sweden Sphaerexochus latifronstrilobite.person (orm)
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Uripes geikiei
こちらは、ガルヴァン (Girvan) のウリペス・ゲイキエイ(Uripes geikiei)。 属名も種小名もどこか馴染みがない種でありますが、貴重なリカスに分類される仲間です。同地では、ヘミアルゲス・マキュロキ (Hemiarges maccullochi) という、似たリカスが産出し、本種と双璧を成す存在であります。 本来、本種はモロッコのロボピゲ類 (Lobopyge) のように、ちょこんと突出した複眼や、発達した頭鞍を持つ種のようです。しかし、本標本では頭部はぐちゃっとしてしまっており、残念ながら、それら特徴的な構造は失われてしまっています。 補完の為、以下論文より頭部の画像を転載しております (写真7番目。CLASSIFICATION AND PHYLOGENY OF THE TRILOBITE ORDER LICHIDA, 1988より)
Upper Ordovician (Ashgill series) - Girvan, Arishire, Scotland, UK Uripes geikieitrilobite.person (orm)
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Encrinurus tuberculatus / punctatus
類似種、あるいは同一種につき、2標本同時に紹介します。1標本目 (写真1-4枚目) は、ご提供元よりエンクリヌルス・ツバキュラトゥス (Encrinurus tuberculatus) の名で、2標本目 (写真5-8枚目) はエンクリヌルス・プンクタトゥス (Encrinurus punctatus) の名で、購入したものです。前者はマルヴァン (Malvern)、後者はダドリー (Dudley) 産です。 イギリスのシルル紀の地層からは、似通った各種エンクリヌルスが複数産出します。頭部の顆粒の数や配置などで判別するようなのですが、一部の特徴的な種 (Balizoma variolarisなど) を除き、似通いすぎていて、その鑑別は素人には困難です。特に、このツバキュラトゥスとプンクタトゥスは同一種なのでは?と思うほど類似しており、同じ項で紹介することにしました。 元々最初にスウェーデンのゴトランド島で産出し命名されたプンクタトゥスが、英国で見つかった際にツバキュラトゥスと呼ばれた (つまりシノニム ? ) 、などという記述も見つけたのですが、情報が乏しく本当のところは不明です。 1標本目は頭部のぶつぶつは非常に良好も、両眼がなく頭胸部と尾部が分離しております。2標本目は全体がほぼ欠損なく残っており、飛び出した両眼もきっちり残っているものの、両サイドから潰されペタンコになってしまっています。2つの標本が相補的に、互いの足りない部分を補完しています。 もっとも、これらの種は本来、軸葉に本来垂直な長い棘を持っているはずであり、それはどちらの標本でも欠損してしまっております。
Silurian, Wenlock series - Malvern,Worcestershire, UK / Dudley, UK Encrinurus tuberculatus / punctatustrilobite.person (orm)
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Phacops imitator (cephalon)
アイフェル (Eifel) 地域産のファコプス類、ファコプス・イミタトル (Phacops imitator) の頭部標本です。部分化石でありますが、本当にアイフェル産かなと思うほどに保存状態は良好です。 呼び慣れたファコプスという名称が、学名としては、モロッコや北米を中心にどんどんと消えていく中、残った数少ない正式なファコプス属であります。頭鞍には、まるで大仏様の螺髪のような、比較的大きくて丈が低い顆粒を認めます。複眼の縦列あたりの眼の数は、4-5個程度と標準的 (?) です。ファコプスのど真ん中のような見た目をしている種という気がします。 私は所有していませんが、他にもアイフェル地域には、ファコプス・ラティフロンス (Phacops latifrons) という、有名なファコプス属のtype species (模式種) がおります。本種はラティフロンスも含め、アイフェルファコプス属の中では、最も古い時代の層から産出する種であります。 私は、この地域の三葉虫の産出量にはあまり詳しくないのですが、この標本は、私が三葉虫の蒐集を始めてから、市場で見かけた唯一のイミタトルの標本です。そういうわけで、多分かなり希産なんじゃないかという事で、レア度は差し当たり星4つとしてみました。
Devonian - Üxheim, Eifel region, Germany Phacops imitator (cephalon)trilobite.person (orm)