Verklärte Nacht=浄夜

初版 2024/02/29 23:48

改訂 2024/03/01 11:11

アーノルト・シェーンベルク/浄夜 リヒャルト・デーメル詩集『女と世界』の詩篇による作品4

第1曲: Grave

第2曲: Molto Rallentando

第3曲: Pesante - Grave

第4曲: Adagio

第5曲: Adagio

続けて演奏される。

この作品は弦楽六重奏から始まり合奏版、その改訂版と2度の編曲がなされている。

凛、とする寒く、乾いた星月夜。
空気はどこまでも澄み切って、息を吸い込むと体の中まで月の光が沁みてくるようだ。


すべてが月の青白い光りに包まれている。
樹も花も土壁の塀に囲まれた家々も、その光りの濃淡によって染まったモノトーンの世界。
その、雲ひとつない夜空の下を、二つの短い男女の影が音もなく進んでゆく。
沈黙の中に互いの愛を感じながら、寄り添うような影は、やがてふと立ち止まり、
少し先を歩いた夫は妻を振り返る。
夫の見つめる視線からうつむいた妻は視線を下に逸らし、数瞬………ためらった後、
妻はすべてを失いかねない怖れを感じながらも、ただ一度の過ちを夫に告げる。
私は、その人の子供を身籠もっているのだと
無言の衝撃が夫を襲う。


音楽は一瞬に泡立ち、弦楽の底鳴りをするようなトレモロの中でその惑乱と狼狽、怒りと慈しみと、愛と哀しみ、様々な心の襞を一筋余すことなく、一度に、しかも苛烈に、ほとんど物質的な力強さで聴く者に叩きつける。


夫は赦すことを選んだ。

それは愛するが故の妥協か、寛大さか、失うものの大きさへの恐れか、様々な心の綾を呑み込んで
空気が動き始める。
月の光のほの白く青い中に、白く澄んだ道が続いている。
妻は赦されたことに安堵しつつ夫の強く握る手のぬくもりを肩に感じながら、無言で歩いてゆく。
張りつめた硬く冷たい冬の空気は

少し緩んだように二人を包む。月の青白い光りも、優しさを帯びてひっそりとと二人に降り注ぐ。


カラヤンの唯美とも言える音符を舐めて磨いたような絶頂期の演奏をボクは好まない。

でも、この曲のこの演奏を聴いていると、これはもう彼と彼の振るベルリン・フィルでしかありえない演劇的な至高の芸術だと思う。

コンサートマスターはカラヤンのタクトとなる指の先端に月の光を感じ告白前と告白した後のわずかな明るさと温度の違いをリードする。

カラヤン晩年のマーラーの第9番(ベルリンフィルではなく、ウィーンフィルを振った珍しくライブ録音ではなかったか)の鏤骨の名演と共にボクはこの曲のこの演奏が忘れられない。

古生物を中心に動物(想像上のもの)を含め、現代動物までを描くイラストレーターです。
露出度が少ない世界なので、自作の展示と趣味として行っている地元中心の石ころの展示を中心に始めようかと思っています。
海と川が身近にある生活なので気分転換の散歩コースには自然が豊富です。その分地震があれば根こそぎ持っていかれそうなので自分の作品だけは残そうかとAdobe stockを利用し、実益も図りつつ、引退後の生活を送っております。
追加ですが、
古いものつながりで、音楽についてもLabを交えてCD音源の部屋をつくっています。娘の聴いてるような音楽にも惹かれるものがありますが、ここではクラッシックから近代。現代音楽に散漫なコレクションを雑多に並べていきながら整理していこうかと思っております。走り出してから考える方なので、整理するのに一苦労です。

Default
  • File

    レLEGOの日記

    2024/03/01 - 編集済み

    リヒャルト・デーメルという方を初めて知りました。

    ネットで調べましたが、日本語で「浄夜」というタイトルなんですね。

    とても重たく感じました。

    返信する
    • Picture

      Mineosaurus

      2024/03/01 - 編集済み

      レLEGOの日記様、コメmmとありがとうございます。救いはエンディングの月の光の暖かさですね。何となく石畳の緩やかな坂道を登ってゆくイメージ。デーメルのこの詩は凄く叙景的で情景の浮かびやすい詩です。私の書いた文省の数倍具体的ですね。イメージが固定されてしまいそうなので、客観的な演奏が嵌りやすい。カラヤンとかピエール・ブレーズとかジョージ・セルとか。

      返信する