浮遊したままの魂

初版 2024/02/14 14:44

改訂 2024/02/14 14:44

ディーリアス/チェロとピアノのためのソナタ

単一楽章 :アレグロ マ ノン トロッポ~レント~モルト トランクィロ~テンポ プリモ

あまり他では聴けない穏やかで良く流れるリリシズム。
ディーリアスに関しては多分に嗜好に傾いた聴き方をしているために、痘痕も靨(あばたもえくぼ)的に捉えているきらいもないではない。

この独特の落日の温厚さとはかなさはターナーの絵にある夕暮れの太陽に似ている。と感じる。色でいうと深紅から限りなく白に近くなってぼやけた海の藍色に溶けてゆく感じ。


単一楽章のチェロ・ソナタ楽想的には3楽章の幻想曲風とも捉えられる。
例によってアレグロもレントも穏やかであることはあまり変わることはなく、やや早足で歩いて着物の裾が色っぽく翻るかしずしずと歩くか程度の違いしかない。
こういう音楽は決してイメージとして明確なオブジェを描いたものではなく、脳幹に浮遊している音楽をそのまま描き出したようなものはないか。フランス音楽にもこういう部分があるように思う。
共通点が多いとは言えないけれど、ディーリアスの音楽にはその要素が散見出来ることは確かだ。
主題が形になりそうなところでほろほろと溶け崩れて行きながら次の旋律の形に変化してゆく。
ディーリアスの良き理解者であり、彼の晩年を支えたエリック・フェンビィのピアノは無窮動的なチェロの動きの最中でも、シンプルで滋味深いフォーマットでチェロが広げた物憂い情景を引き立てる。
YouTubeのロイド・ウェッバーの演奏は二つに分かれていて後半はレントから始まる。
ここから流れる歌は不可思議だけれど懐かしげな抒情性が息の長い呼吸を繰り返す。
チェロの歌はとてもいい。
とても変化に富んでいるけれど、あまりにさりげなく変わってゆくので一聴単調にも聞こえるか。
音楽は軽く浮遊したままいつまでも漂いながら冒頭の主題に回帰してゆく。
脳幹から移ろった音楽は魂の色に染まったままふうわりふうわりいつまでも同じ高さに浮かんでいる。

ロイド・ウェッバーのチェロにエリック・フェンビーのピアノ。
指揮者でもあったフェンビーのピアノには故人とその作品を理解し、共に吸ったかけがえのない歴史の空気感を感じる。

古生物を中心に動物(想像上のもの)を含め、現代動物までを描くイラストレーターです。
露出度が少ない世界なので、自作の展示と趣味として行っている地元中心の石ころの展示を中心に始めようかと思っています。
海と川が身近にある生活なので気分転換の散歩コースには自然が豊富です。その分地震があれば根こそぎ持っていかれそうなので自分の作品だけは残そうかとAdobe stockを利用し、実益も図りつつ、引退後の生活を送っております。
追加ですが、
古いものつながりで、音楽についてもLabを交えてCD音源の部屋をつくっています。娘の聴いてるような音楽にも惹かれるものがありますが、ここではクラッシックから近代。現代音楽に散漫なコレクションを雑多に並べていきながら整理していこうかと思っております。走り出してから考える方なので、整理するのに一苦労です。

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