"ダヴィドフ”という名のチェロ

初版 2023/09/05 16:44

改訂 2023/09/06 15:26

              ジャクリーヌ・デュ・プレと彼女の愛したストラディヴァリウス

約300年を経た名匠初代アントニオ・ストラディヴァリウスの造ったチェロに冠せられた名前。
チェリストであり、4曲のチェロ協奏曲を作曲した19世紀のロシア出身のカール・ダヴィドフが使用していた関係で、今でも、この楽器は『ダヴィドフ』という名前で知られている。
現在この楽器は演奏者が手離す必用がない限り、ヨー・ヨー・マ(友友馬)の手元にあるのではないか。ジャッキーの死後、その遺言によってか夫のバレンボイムの意思によってかわからないけれど、古い楽器は飾っておくだけでは衰えて行く。コンチェルトは無理でも少しずつでも息をさせるように弾いてあげなくてはいけないらしい。

このストラディヴァリはジャッキーからハインリヒ・シフを経たのか直接ヨー・ヨー・マに行ったのかよくわからない。
シフは『ザ・マーラ』というストラディヴァリウスを持っていたはずで、どうやら直接ジャッキーからマに渡ったのかも知れない。
かつて

バラク・オバマの米大統領就任演説会場(積雪の残る極寒の戸外)で演奏を披露したはずが、当てレコだったという落ちが付いたヨー・ヨー・マの当日の腕にはこの楽器よりも新しい楽器が抱えられていた。マは一部のマスコミに冷淡な言葉をかけられた。しかし、このチェリストの行動は当然だとボクは思う。

300年を経て現在その価格は数千万円になろうかという楽器を、ワシントンの極寒の中に晒して演奏しろとは主宰者も言えないだろうと思ったりした。


この楽器が最も迫真にそのファインでクリアな音色を奏でたのはジャッキーの腕の中だった。
ジャクリーヌ=デュ・プレは生涯で2挺のストラディヴァリウスを寄贈されたが、このダヴィドフを愛奏していた。
ヨー・ヨー・マのボウイングでは軽快さが、時として音色の薄さを感じさせるけれど、彼女の火の出るような情熱と思い、感情の澱みを突っ切るようなボウイングの中では気品を時にかなぐり捨てて腹の底に響くチェロの本性を見せた。

このダヴィドフが使用されたフォーレのエレジー ハ短調はオーケストラをバックに弾かれることも多いけれど、もともとはチェロソナタの緩徐楽章として書かれた。


でも、結局フォーレはチェロソナタを2曲しか残さず、このエレジーは単独でそのもの悲しい呟きと慰めのない悲嘆を美しい結晶にして残している。

彼女が録音でダヴィドフを使用したのは年代から言ってこの演奏が最もそれらしい。

古生物を中心に動物(想像上のもの)を含め、現代動物までを描くイラストレーターです。
露出度が少ない世界なので、自作の展示と趣味として行っている地元中心の石ころの展示を中心に始めようかと思っています。
海と川が身近にある生活なので気分転換の散歩コースには自然が豊富です。その分地震があれば根こそぎ持っていかれそうなので自分の作品だけは残そうかとAdobe stockを利用し、実益も図りつつ、引退後の生活を送っております。
追加ですが、
古いものつながりで、音楽についてもLabを交えてCD音源の部屋をつくっています。娘の聴いてるような音楽にも惹かれるものがありますが、ここではクラッシックから近代。現代音楽に散漫なコレクションを雑多に並べていきながら整理していこうかと思っております。走り出してから考える方なので、整理するのに一苦労です。

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