Brog Cats on Enescu

初版 2023/07/21 16:47

改訂 2023/07/21 16:47

かつてボクはYouTubeが今ほど大流行りになる以前に、いくつか簡単なビデオを作成し、アップロードしてたことがある。

空き時間に暇を見つけてはブログの中で愛猫家さんのログをめぐり、猫さんの写真を見つけては無作為に肖像画を描いていた。

本業が立て込んだ時には何か月も描かなかったこともあったが、気分を変えるには格好の趣味だった。事後承諾をいただき、ご本人さんには原画を提供したりした。100を超えるものだったと思う。

目的は、猫の絵でも見ながら。普段聴かないマニアックな音楽を流して聴いてもらおうという試みにあった。

当時YouTubeになかった音楽を文章だけで伝えるには限界を感じていて、だったら自分作ってやろうと思った。

このLogにもその当時のParryのピアノ三重奏曲の一部を使用したものを転用した。

初めて作ったのはアーンのピアノ三重奏曲を使ったものだったが、残念ながら何日も経たずにボツ。

問題は音楽の音源を持つ会社の著作権だった。国際的な消滅期間である50年前の演奏ですら、ジャズやクラシックではなお、商業的価値がある。

Brog Cats on Brahmsは 彼のクラリネット・ソナタの第2楽章を使ったが、それもダメ、さすがに今度はPiano Musicという著作権フリーの音楽で登録して閲覧可能となったが、当初の意味がなくなった。絵がメインなのではなく、普段聴きなれない音楽を猫でも見ながら聴いてほしいという目的が、絵のための音楽になってしまって、これでは本末転倒。

しかも、タイトルの画像の下辺にはクラリネット・ソナタの文字が付いたまま。(情けねー)

今では音楽の著作権を持つ会社の方向性が変化し、全曲聴けることから言うとなんとも窮屈だった。

でも、そんな会社ばかりではなく、そのビデオに何らかの意義を見出してくれ、「べつにいいよ。」という寛容な会社も当時からあった。

著作権はあるが、YouTubeでの使用に関して問題ないとの評価があればOK.または初めから著作権云々を気にしておらず、公開に全く条件を付けていない会社もあるようだ。

エネスクの作品は前者である。ちょっとでも聴いてくれる人がいれば、という思いは僕だけではないような気もする。(錯覚かな)

で、こういう作品でした。

このピアノソナタ第3番は、深くバッハを敬愛していたエネスク自身の傑作だと思う。

初演はディヌ・リパッティ。彼は体の弱かった自分を我が子のように愛してくれたエネスクのよき理解者であった。

また師弟関係もあったらしい。エネスクは作曲家としてはボクはブラームスやメンデルスゾーンクラスであると信じて疑わないが、自身ヴァイオリニストとしては歴史に名を残した名手であり、その弟子に至っては凄い名前が並ぶ。ユーディ・メニューイン、イブリィ・ギトリス、アルテュール・グリュミオー等々、凄いよ。

このビデオに使った第2楽章は一聴、響く音が単調で、聴き切ることができていると錯覚するほど音として感じられる色彩が清澄、簡潔。

ボクは素人だけど、その音と音の行間にあるのは隙間ではなく、無限の余韻の重なりと、空間のみっちり詰まった流れであるように聴こえる。

繰り返し、繰り返し聴いていると何気なく小石を拾って投げた軌跡がその周辺の時間を巻き込みながら水に飛び込んでゆくうねりが見えてくる。時間が螺旋をえがいて終曲に向かってうねりながら厚く、薄く変化しながら届いてくる。一瞬ジョン・ケージのある種の音楽で感じかけたものの結論をここで聴いたのではないかと思わせる。ピアニストという、プロの化け物(ごめんなさい)は。こういう曲にチャレンジしてやまないものなんではなかろうか。

あまりに内省的な音による時間の提示。

ちょっとボクのこの猫たちでは受けきれない音楽だけど。絵を見てくれていれば音の時間が共有できると下手な考えで作ったものです。

古生物を中心に動物(想像上のもの)を含め、現代動物までを描くイラストレーターです。
露出度が少ない世界なので、自作の展示と趣味として行っている地元中心の石ころの展示を中心に始めようかと思っています。
海と川が身近にある生活なので気分転換の散歩コースには自然が豊富です。その分地震があれば根こそぎ持っていかれそうなので自分の作品だけは残そうかとAdobe stockを利用し、実益も図りつつ、引退後の生活を送っております。
追加ですが、
古いものつながりで、音楽についてもLabを交えてCD音源の部屋をつくっています。娘の聴いてるような音楽にも惹かれるものがありますが、ここではクラッシックから近代。現代音楽に散漫なコレクションを雑多に並べていきながら整理していこうかと思っております。走り出してから考える方なので、整理するのに一苦労です。

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