重層するモノクローム

初版 2023/07/17 11:16

改訂 2023/07/17 11:19

                プフィッツナー/チェロ協奏曲イ短調『遺作』1888年

第1楽章 アンダンテ モルト ソステヌート
第2楽章 アレグロ
第3楽章 アダージオ モルト トランクィロ
第4楽章 アレグロ~アダージオ

もしくは

第1楽章 アンダンテ モルト ソステヌート~アレグロ

第2楽章 アダージオ モルト トランクィロ

第3楽章 アレグロ~アダージオ

『遺作』という訳は当たらないのかも知れない。

彼が残した3曲のチェロ協奏曲の中で最も若書きの作品だけれど、この作品は作品番号を持っていない。

そしてこの作品の主題の類似性。

作品52の協奏曲(第3番にあたる)同じイ短調の作品の主要主題はこの作品と同じ旋律線を持つ。

破棄できなかったこだわりか、それともこの作品自体が紛失され、第2番が書かれた後に発見されたものなのだろうか。

プフィッツナーの文献は田舎に住んでいると目にすることがあまりないので素人のボクにはその辺がよくわからない。

初演が1977年であること、献呈された形跡が後の2作品のように明確でない。

同じイ短調で同じ主題を使用しながらボクはやや晦渋になりつつある精緻な半音階的技法が施された作品52の世界よりも、このわかりやすく抒情性に富んだ作品を好む。

意欲的な作品52の世界よりもチェロは自然に歌い、眩惑するパトスに音楽は振幅が大きく、よりヒューマンである。

第1楽章は劇性に富み、灰色の渋みのあるフォーマットの上を同系色の温もりのあるチェロの太い線が縦横する。

管弦楽の巧みさ、自然さ。独奏楽器は溶け込みつつ浮かび上がる場所を知っている。

プフィッツナーの作品の大半は歌劇、リートにあり、その旋律の美しさと抒情性はこの作品でも惜しげもなく発揮されている。

第3、第4楽章も見事です。(これも同様に曲調が替わるくらいの意味しかありませんね。)
ゲルマンの血の中にある精神の沸騰。
その意識と、結果に示される音楽は、世紀の遅速を問わなければブラームスやメンデルスゾーンの域にあり、ホルンに重なって謡うチェロの見事な仕合わせは、まるで楽劇の幕引きに向けた音楽家の渾身が聴ける。
幻想的に回帰される主題がオーケストラの金管の上に降り、静謐の後にチェロのカデンツァが続くその絶妙。
変幻する主題の有機的な閃き。
これを先に聴いてしまうと、名作といっていい作品52番が先に描かれたラインを慎重に絵取って行ったのではないかという思いすら生む。(そうは言ってもやはり作品52も素晴らしいけれど)この音楽からはあまりたくさんの色彩は見えない。
しかし、単彩の濃淡が意識の中で重なり、そこに特有の肉の厚さと血の流れを感じさせる。灰色の中に流れるピジョンブラッド。

人格的にボクはこの人好きじゃない。ドイツ人は今この人をどう評価しているのだろう。人嫌いで近代音楽を堕落と切り捨てる。後期ロマン主義的な音楽は音楽史の区切りがもう少し長いスパンで見られるようになればブラームスやメンデルスゾーンに劣るとは思わない。でも、純粋ゲルマンのユダヤ人排斥論者というイメージは今もぬぐい切ってない。生み出された音楽はその人の人格からうかがい知れない豊かなものだ。古今、それは人間が想像する芸術すべてに言えると思う。シューベルトがいい例だ。

生まれた音楽は自ら光る。

古生物を中心に動物(想像上のもの)を含め、現代動物までを描くイラストレーターです。
露出度が少ない世界なので、自作の展示と趣味として行っている地元中心の石ころの展示を中心に始めようかと思っています。
海と川が身近にある生活なので気分転換の散歩コースには自然が豊富です。その分地震があれば根こそぎ持っていかれそうなので自分の作品だけは残そうかとAdobe stockを利用し、実益も図りつつ、引退後の生活を送っております。
追加ですが、
古いものつながりで、音楽についてもLabを交えてCD音源の部屋をつくっています。娘の聴いてるような音楽にも惹かれるものがありますが、ここではクラッシックから近代。現代音楽に散漫なコレクションを雑多に並べていきながら整理していこうかと思っております。走り出してから考える方なので、整理するのに一苦労です。

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