微笑んで悼む

初版 2024/01/14 15:09

改訂 2024/01/14 15:15

ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第12番変イ長調Op.26

第1楽章 アンダンテ コン ヴァリアツィオーニ

第2楽章 スケルツォ:アレグロ モルト


第3楽章 マエストーソ アンダンテ

第4楽章 アレグロ,ロンド

初期と充実してくる中期の狭間にある何とも名状しがたい形式を持つ。
一楽章もソナタ形式を持たない。
ハイドンやモーツァルトからの飛翔か、ただの組曲か
形式の自由さはまず、ショパンを魅了し、彼の第2ピアノソナタのインスピレーションとなっている。
「ああ、これでもいいんだソナタって」てなもんだろうかね。
この曲のクライマックスはやはり『ある英雄の死を悼む葬送行進曲』という副題を持つ第3楽章だろう。
ショパンのような葬列をじっと一点から凝視する死の情念はなくて、古典的な乾きが抑制されて理性的な響きを生む。
個々の人々の感慨を形式の中に昇華させたもの。
その意味ではこれは人の死を送るためのスタンダードである。


でも、ボクがこの曲で一番魅力を感じるのは第1楽章の主題と5つの変奏曲です。
シューベルトのそぞろ歩きのような旋律がベートーヴェン最良の田園的旋律がテーマとなり、円かで優しい。
何故かボクはこの曲はギレリスの演奏が気に入っていて、彼のタッチにあわない選曲だと思った最初の印象は見事に覆って今に至っている。

騎士は鎧を脱いでピアノに向かっている。

特に第一楽章はマエストーソ・アンダンテへの予兆などは微塵も見せず、淡々と木々の間の薄い朝の光とオゾンの中を散策する。
第2楽章は軽快なスケルツオ。
スタッカートの切れがいい演奏は次の楽章の重さにつなげる幅の広さが求められるのだろうけれど、このソナタを組曲的に捉えればそれほど各楽章の関連性を意識しなくてもと考えるのだけどね。
実際にボクはこの葬送行進曲をあまり深刻な音楽として捉えたことがないのでサラリと弾かれると、とても美しく感じる。
第4楽章は明確な対位法の練習のような音楽。
でも、この早さはやはり、ショパンの第2ソナタの墓場を吹き抜ける一陣の風のような第4楽章へ繋がっているようだ。
御本人が付けた副題をどうこう言うつもりはおそれおおくて無いのだけれど、死を悼む厳粛な旋律をボクはこの曲から強く感じることはできない。
初めてこの曲を聴いたのはジョン・オグドン(アシュケナージとチャイコフスキーコンクールで1位を分け合ったイギリスのピアニスト。彼はこの後、アシュケナージのような活躍は出来なかった。自分の持つ初見でアルカンの協奏曲を練習無しで弾ききるというほどの超絶技巧が彼のキャリアを潰したといってもいいかも知れない。)のピアノだった。
弾きとばしのような演奏で第3楽章が凄く重々しかった。
プロムスか何かのコンサートだった。
それから数十年。
ギレリスも技巧派だったがこの頃は上手く枯れてきてた。
この第1楽章はすごく普通でいい。
何処にも力が偏って無くて。


第3楽章も故人の死を悲しむのではなく、楽しかった想い出と共に歩いているようだ。
演奏は全曲のものがなかったけれど、第1楽章と第3楽章を

古生物を中心に動物(想像上のもの)を含め、現代動物までを描くイラストレーターです。
露出度が少ない世界なので、自作の展示と趣味として行っている地元中心の石ころの展示を中心に始めようかと思っています。
海と川が身近にある生活なので気分転換の散歩コースには自然が豊富です。その分地震があれば根こそぎ持っていかれそうなので自分の作品だけは残そうかとAdobe stockを利用し、実益も図りつつ、引退後の生活を送っております。
追加ですが、
古いものつながりで、音楽についてもLabを交えてCD音源の部屋をつくっています。娘の聴いてるような音楽にも惹かれるものがありますが、ここではクラッシックから近代。現代音楽に散漫なコレクションを雑多に並べていきながら整理していこうかと思っております。走り出してから考える方なので、整理するのに一苦労です。

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