唯一無二

初版 2023/12/17 22:09

改訂 2023/12/17 22:09

シューマン/幻想曲ハ長調 op.17

第1楽章 全く幻想的に、情熱的に弾くこと-昔語りの調子で-はじめのテンポで
第2楽章 中庸に 全く精力的に-ややゆっくりと-きわめて活発に
第3楽章 ゆっくりと 常に静けさを持って-やや活発に

ロベルト・シューマンの作品に漂っている癒されぬ孤独感とどこかで人種を越えた人間の持つ精神の闇。
暗い入り口からのぞき込んだ部屋に置かれた大鏡に映る自分の姿。
長調すら何処かに寂寥の影を落とす。
微笑みと優しさの中に潜む深い内省の亀裂。
ロマンティックなのは旋律だけではなく、同じ鍵盤から産み出される和音の持つ無二の陰影。
特徴的な付点リズムが産み出す異世界の抒情。
この曲はリストに捧げられているが、そこにいるリストはピアノの魔神ではなく、この曲の持つ沈黙の音を感じきる希有のピアニストの一面でこの作品に応えている。
技術的な難度から作品を評価する自己顕示欲をひとまず脇に置いておいても、この曲には弾きたいと思わせる魅力があったのだと思いたい。
リストのこの作品に寄せた評価は非常に高いものだった。
実生活でも難しい時期に入っていたシューマンはクララ・ヴィークとの恋の成就に難渋し、辛い時期に当たっているにも拘わらず、産み出される音楽は純粋でありながら複雑な人間そのもののような、光と影を宿している。
どの楽章も聴き応えがあり、素晴らしい。
例によって彼はドイツ語の速度標記に感覚的な印象を保たせている。
厳格なテンポ指定ではないので、音楽の流れと生命感を損なわないのであればピアニストの個性が非常によく出てくる作りだと思う。
いろんなピアニストを聴き比べてみたけれど、結局この楽章はあの人がよくてこの楽章はこの人がよいと、きわめて聴くものの勝手な思い込みがさらに音楽をややこしくする。
この作品の標題が顕著にでていて、ベートーヴェンに対する記念的敬意が聴かれる第1楽章がボクは一番好きです。

この彼しか書き得ない陰影に充ちた旋律と昇華した引用は、オクターブの広がりと重さと反応力が増してきた鍵盤の機能を単に技術の羅列に資するのではなく、感情表現の手段として使い切っている。
旋律は心の揺れと連動し、きわめて主観的だけれど、それは誰の心の中にも存在する音楽に感じる心と結びつく。
ロマンティックという言葉の真髄。

いつも僕はシューマンをホロヴィッツで聴く。このピアニストのデモーニッシュなフォルテとスケールの美しさに魅了される。ただこの演奏には少しライヴならではの音のブレがあり、大味になる。ただ、凄いねやっぱり。

第3楽章の清澄なリリシズムだけは館野泉さんの自然に湧出するロマンティシズムがいい。第1楽章の特異なスケール感は及ばないけれど。超絶を感じさせないコントロールがあって、好きな演奏です。ピアニシモがきれいだ。

シューマンをホロヴィッツで聴くようにシベリウスやカスキのピアノ音楽は館野さんの独壇場だと今でも思っている。第3楽章のテンポの中にはその館野泉の世界につながる景色と色が映っている。

古生物を中心に動物(想像上のもの)を含め、現代動物までを描くイラストレーターです。
露出度が少ない世界なので、自作の展示と趣味として行っている地元中心の石ころの展示を中心に始めようかと思っています。
海と川が身近にある生活なので気分転換の散歩コースには自然が豊富です。その分地震があれば根こそぎ持っていかれそうなので自分の作品だけは残そうかとAdobe stockを利用し、実益も図りつつ、引退後の生活を送っております。
追加ですが、
古いものつながりで、音楽についてもLabを交えてCD音源の部屋をつくっています。娘の聴いてるような音楽にも惹かれるものがありますが、ここではクラッシックから近代。現代音楽に散漫なコレクションを雑多に並べていきながら整理していこうかと思っております。走り出してから考える方なので、整理するのに一苦労です。

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