DVD「美の祭典」

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 画像内に表記されている原題は「OLYMPIA(PARTⅡ)」、つまり2作目ということで、それでは1作目は何かというと、本展示アイテムに隣接展示の『民族の祭典』(OLYMPIA(PARTⅠ))なのですが、なぜか『世界クラシック名画100撰集』の通し番号では逆の順番に配置されています。何か流れに逆らうような感じになっていますので、作品ごとではなくこの両作に共通する話を2回に分けて認めていこうと思います。
 この『民族の祭典』及び『美の祭典』の両作はともに評価が高く、例えば1940年キネマ旬報外国映画ベストテンではそれぞれ第1位及び第5位に選出されています。年度ごとのベストテンは相対的なものですから一概には言えませんが、少なくとも1940年に本邦公開された他の外国の劇映画に伍しての評価ですから、単なるオリンピック記録映画の枠に収まる作品ではない、と言えるでしょう。ところで、そもそも「オリンピック記録映画」とは?
 ネット検索すれば、どのような作品があるかは容易に確認できるのでここでは簡単に述べることとします。最初は1912年のストックホルム大会の記録映画で、2019年の大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」で歌舞伎俳優の中村勘九郎が演じた金栗四三ら日本の代表団が初参加したことで有名ですかね。もっとも、初期の作品は競技のプロセスをニュース的に記録したもので、質的評価は高くありません。1930年に国際オリンピック委員会(IOC)が各大会の記録映画作りを義務づけると、以降は大会ごとに公式映画が作られ、また非公式にも優れたドキュメンタリー作品が生まれました。そして、レニ・リーフェンシュタール、市川崑、クロード・ルルーシュ、篠田正浩、バド・グリーンスパン、カルロス・サウラといった世界的な監督たちの活躍の場にもなり、映画芸術にとっても挑戦の機会となりました。
 このように、「オリンピック記録映画」は映画史的にもそれなりの意義のある存在だと思われますが、では実際にこれらの作品群の中でどの作品を知っているか、と言われるとさほど多くはない。俎上の『民族の祭典』『美の祭典』以外では1964年東京大会の『東京オリンピック』、1968年メキシコ大会の『太陽のオリンピア』、1972年ミュンヘン大会の『時よとまれ、君は美しい/ミュンヘンの17日』、冬季五輪では1968年グルノーブル大会の『白い恋人たち』、1972年札幌大会の『札幌オリンピック』くらいですかね。『太陽のオリンピア』と『札幌オリンピック』は観ていないので何とも言えませんが、他の3作、すなわち『東京オリンピック』、『時よとまれ、君は美しい…』及び『白い恋人たち』はそれぞれに個性的な作品であり、特に映画音楽は興味深いですね。担当したのは、それぞれ黛敏郎、ヘンリー・マンシーニ及びフランシス・レイですが、テーマ曲の世間的浸透度でいうと『白い恋人たち』がダントツでしょう。ただ、もちろん名曲には違いないのですが、個人的には『時よとまれ、君は美しい…』の音楽の方が好みですね。
 少し話が脱線しました。1976年以降開催のオリンピックの公式記録映画を少なくとも私は劇場で上映されている場に出会ったことはありません。もうこの頃になると、オリンピックの衛星生中継はおそらく日本以外の諸外国でも普及したでしょうから、例え記録映画を劇場上映したとしても、おそらく興行的には成り立たず、形式的に前段で述べた各大会の記録映画作りの義務を果たしている、という感じですかね。ですので、今後『民族の祭典』『美の祭典』はおろか、前段で題名を掲げた『東京オリンピック』等のクオリティの作品が製作される可能性は低いのではないかと、勝手に想像してしまいます。
https://www.youtube.com/watch?v=DoVJDE6A0_0
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