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DVD「ミシシッピー・バーニング」
この紹介文を作成している時期(2020年6月下旬頃)、アメリカでは、同年5月25日にミネアポリス近郊で起きた、白人警察官の不適切な拘束方法によって一人のアフリカ系アメリカ人の黒人男性が死亡させられた事件がきっかけとなって、ブラック・ライヴズ・マター(Black Lives Matter、通称「BLM」)、すなわちアフリカ系アメリカ人のコミュニティに端を発した、黒人に対する暴力や構造的な人種差別の撤廃を訴える、国際的な積極行動主義の運動が繰り広げられています。まあ、この運動の是非はともかくとして、つまりは少なくともアメリカにおいて、黒人差別・人種差別というのは未だ今日的な課題であり続けているということで、その反映として昨今でもこの問題を題材とした映画が製作されている、というのは他フロアのDVD『アミスタッド』の展示での紹介文の中で述べたとおりです。
本展示アイテム収録作は1988年製作。公民権法制定前の1964年に米ミシシッピー州フィラデルフィアで公民権運動家3人が殺害された事件をモデルにしており、当初は行方不明ということで、その調査のためにFBI捜査官2人アラン・ウォード(ウィレム・デフォー)とルパート・アンダーソン(ジーン・ハックマン)が3人の公民権運動家の失踪した田舎町に赴くが、そこで様々な出来事が繰り広げられる、という設定。その町はあからさまな黒人差別が横行するばかりか、KKKを名乗る集団の暴行もたびたび行われ、ウォードとアンダーソンも威嚇的脅しを受けるなどの状況の中で、ウォードはFBI捜査官の増強、アンダーソンはペル夫人(フランシス・マクドーマンド)との交流を通しての情報収集などを積み重ねる中で、事件の究明を遂行する、というあらすじで、内容そのものや作品そのものの出来については割と賛否両論があったとも記憶していますが、個人的には現在でもたまに観返すことがあるほどのお気に入りの作品の一つです。その最大の要因はキャスティングで、主人公の2人はともかくとして、特にクリントン・ペル保安官補の役のブラッド・ドゥーリフ(『チャイルド・プレイ』シリーズのチャッキーの声の人)とその妻の役のフランシス・マクドーマンドが素晴らしい。もっとも、マクドーマンドは後にアカデミー主演女優賞を2度に亘り獲得する名優ですので、それもむべなるかな、というところですが…。
他にも上記以外の出演俳優のこと、トレバー・ジョーンズの音楽のことなど語りたいことはありますが、それは別の機会に譲るとして、以下は吹替のことについて。本作にはソフト版とテレビ朝日版の2種類の版の吹替が存在し、本展示アイテムには当然のことながら前者が収録されているわけですが、個人的には、というよりも、おそらく誰が観てもその出来については後者の方に軍配を上げるのではないか、と思います。マクドーマンドについては両版とも藤田淑子と共通ですが、ソフト版ではハックマン、デフォー、ドゥーリフがそれぞれ内海賢二、納谷六朗、谷口節なのに対し、テレビ朝日版ではそれぞれ石田太郎、野沢那智、富山敬ですし、それ以外についても阪脩、飯塚昭三、屋良有作、若本規夫 、島田敏、麦人、小島敏彦を起用しており、名前だけ見ても申し訳ないですがソフト版の方が見劣りしますね。ですので、ぜひテレビ朝日版の吹替を収録したブルーレイの出版を切に希望するのですが、どうも期待薄のようです。最後に、ソフト版の吹替配役についてはタグに表示しておきます(敬称略)。
https://www.youtube.com/watch?v=SUtlJwfNEtI
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オマハルゲ
2020/06/27権利関係の問題で収録出来ない場合もあるようですし、何より売り上げがある程度見込める作品でないと複数の吹き替え収録は望み薄のようですね。
ハックマンは石田版があればどの作品も収録して欲しい所なんですけどね。
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woodstein
2020/06/28omaharuge102さん、コメント有難うございます。小池朝雄氏が逝去後、『刑事コロンボ』のピーター・フォークの吹替を引き継いだのに連動する形で、ジーン・ハックマンを吹替もそれまで小池氏がフィックスだったのを、石田太郎氏が引き継いだのは正解でした。ただ、その石田氏も7年前に鬼籍に入られたのは、小池氏同様に早すぎました。石田氏のジーン・ハックマンの吹替は20作以上も存在するので、omaharuge102さんの仰るとおり、その記録を世に広く公開すべく、ソフト化の際には悉く収録して欲しいものです、特に本作はね。
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オマハルゲ
2020/06/28「刑事コロンボ」のところでも貼りましたが、小池・石田両氏の吹き替えの違いを表現してるモノマネ芸人さんもいるので、需要はあると信じてるんですけどね。
https://youtu.be/gHGF8GcgcdY
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woodstein
2020/06/29omaharuge102さん、再びのコメント有難うございます。動画楽しく拝見しました。石田太郎氏のモノマネはカリオストロ伯爵っぽくもありましたかね。関根勤氏の言うとおり、芸達者でした。
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toy ambulance
2020/06/27 - 編集済み差別の問題は政治のみならず人間存在の本質にも関わるテーマなのでMUUSEOで軽々に語れるものではありませんね。 それに代えてと言うわけではありませんが、映画その他で見聞きした中で黒人差別に関して印象に残っているエピソードを挙げて見たいと思います。 ○映画「ビリー・ホリディ物語」(この作品、私は見ていません.)の副題にもなっている楽曲名「奇妙な果実」は私刑で縛り首にされた黒人を表しているのだと言うエピソード ○スタッズ・ターケルの第二次大戦のルポルタージュ「よい戦争」で語られる第二次大戦中のアメリカ軍内部で戦闘ではなく白人からの私刑で殺された黒人が数多くいたと言う事実 ○ボブ・フォッシーの「レニー・ブルース」の中でダスティン・ホフマン演じるタイトルロールが黒人の客に対して「ニガー」と言う蔑称を使うも、差別の本質は言葉の問題では無いとしてその客を納得させてしまうシーン ○「招かれざる客」に対する評論の中で目にした「もし、これがシドニー・ポワチエでもなく大学教授でもない黒人であればストーリーはなりたったのだろうか?」という意見 ○ジョン・ランディスの「ブルース・ブラザース」の中でレイ・チャールズがポスターを逆さまに貼るという、一つ間違えば黒人と視覚障害者の複合差別にもなりかねない場面に全く差別的印象を感じなかったこと 等々と色々出てきます。
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woodstein
2020/06/28toy ambulanceさん、コメント有難うございます。様々な事例を挙げて戴きました。『招かれざる客』や『レニー・ブルース』に関するエピソードは聞いたことがあるような気はしましたが、他は初耳で興味深かったです。特に『ビリー・ホリデイ物語/奇妙な果実』に関する話は、少し驚きました。この作品の存在を知ったのは確かチラシだか、パンフレットだかを偶然入手したのがきっかけだったはずですが、その際は「ビリー・ホリデイ物語」というタイトルだけで「奇妙な果実」という副題は無かったのか、見落としていたのか、とにかく認識はしておらず、後年になって「そんなものがあったのか」という気付きがありました。『奇妙な果実』は曲のタイトルであり、劇中歌であるところまでは知ることはできたものの私自身も本作を観ていないので、それ以上のことは知りませんでした。
ということで、今回のtoy ambulanceさんの御提示に対応する流れで下のような動画を見つけることもできましたので、『奇妙な果実』に思いを馳せることにします。
https://www.youtube.com/watch?v=dZumQmnFuTM
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toy ambulance
2020/06/28woodsteinさん
youtubeの動画、ありがとうございます。
吹き替え版の本編ですね。
実はこの作品、公開当時に確か11PMの中で故大橋巨泉氏がビリー・ホリディの事をきちんと描いていないという風に酷評していたことが記憶にあって、それが氏のジャズ評論家しての見識からなのか、社会問題にも一家言を持っていた立場によるのか、ずっと気にはなっていたのですが未見のままでした。
これを期に自分の目で観ておこうと思います。
しかしながら、PCでの2時間越え視聴はつらいかな…?
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woodstein
2020/06/29toy ambulanceさん、再びのコメント有難うございます。まず、大橋巨泉がこの作品を酷評した件ですが、映画というのは所詮エンターテイメントであり、それが伝記映画の類であってもドラマティックに見せるために虚実織り交ぜて描く、というのは往々にしてあることで、要は観客のリテラシーの問題であり、そういう意味では大橋巨泉による批判は筋違いであったと、私には思えます。もっとも、彼は自身の趣味が高じてジャズ評論家を名乗り、後年ラジオでジャズ音楽番組のパーソナリティをやるなど、それなりの専門家だったので、自分の知るビリー・ホリデイ像とは異質であることに我慢ならなかったのでしょうが、そのことはその程度に留めるべきだったのでしょう。
あと、youtubeの動画ですが、私は全画面表示にして観ました。
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