音色か抒情か―ラフマニノフ

初版 2023/09/14 16:29

改訂 2024/02/16 22:32

この手の大きさは異様ですね。

ラフマニノフ/ピアノソナタ第1番ニ短調op.28

第1楽章 アレグロ モデラート
第2楽章 レント
第3楽章 アレグロ モルト

第2番ほど多くのピアニストの挑戦意欲をかき立てる魅力に欠けるのか、このソナタは巨匠といわれるピアニストが演奏するのをあまり聴いたことがない。
この作品の方にはホロヴィッツが第2番に施したようなマジックはない。

もともとリストのファウスト交響曲と同じくゲーテの戯曲『ファウスト』からの標題付きのピアノ曲として発想されたということだが、その試みは、はやばやと挫折し、ファウストやグレートフェンやメフィストフェレスのイメージが各楽章に被ることはなかったようだけれど、性格的な3楽章にその残滓が感じられる。

1907年から1908年にかけての作曲であり、20世紀に入って作曲されたピアノソナタとして第2番の陰に隠れている。

メトネルのソナタを聴いた耳には同じ超絶的技巧の作品であっても、個性の違いというものが際だっているようだ。

第1楽章
の呆気にとられるような技術の高さと音列の清新さ。

1音に熟考するピアニストの眉間の縦皺をあざ笑うかのような疾走と色彩の重なり。

シンフォニックに積み上げられたマルカートな響き。

まるで2つのソナタを同時に聴いているような右手と左手の息を止めた殴り合い。

この曲から滲出するロマンティシズムをことさらに際だたせようとすれば、無意味にただ重いだけの演奏になりそう。

近代ピアノから紡ぎ出される最高の純血。

複雑だけれど、純粋で判りやすい。


第2楽章 女性的な楽章だけれど、発想がやはり管弦楽的。ピアノのような打楽器で速度指定がレント。

短ければまだ判るけれど、この長さではやはり粒だった音が緩やかな流れを感じさせられるかどうかが肝心だろうね。

『どこがレント?めっちゃ速く指が動いてるじゃない!?』

うん。そうじゃないって、スローモーションていうのは倍速以上の録画を通常速度で流すわけだろ?ピアノが弦楽器のようなレガートな響きを出す。そのニュアンスがレントなんだね。凄く好きな楽章です。

ラフマニノフの音色にはどこかフレーズで感じる匂いの違いがある。

1音はまさに弾いているピアニストの個性だけれど、その1音がいくつか重なって流れると、それは紛れもないラフマニノフです。その個性は指定された音色から来るのか、流れから生まれる抒情から感じるのだろうか。

第3楽章は音色の氾濫。堰き止める自制はなく、全ての気持ちが鷲掴みにされて同じポケットにねじ込まれている。
聴き終えたときのカタルシスは半端ではない。
これでもカトワールや親友メトネルやリーゼマンらの忠告で短くしたんだそうだ。

とんでもない厚さの文庫本。

探しに探したワイセンベルク。

演奏はアレクシス・ワイセンベルクらしい。音色の強さと切れまくったテクニックが爽快です。ラフマニノフはまず、正確でなければならない。そこから立ち上がってくる抒情の流れが見えるように音色を整えられるそんなピアニストが弾かなければどうにもならん。

ブロンフマンが弾いたらさぞやと思うんだけど。

古生物を中心に動物(想像上のもの)を含め、現代動物までを描くイラストレーターです。
露出度が少ない世界なので、自作の展示と趣味として行っている地元中心の石ころの展示を中心に始めようかと思っています。
海と川が身近にある生活なので気分転換の散歩コースには自然が豊富です。その分地震があれば根こそぎ持っていかれそうなので自分の作品だけは残そうかとAdobe stockを利用し、実益も図りつつ、引退後の生活を送っております。
追加ですが、
古いものつながりで、音楽についてもLabを交えてCD音源の部屋をつくっています。娘の聴いてるような音楽にも惹かれるものがありますが、ここではクラッシックから近代。現代音楽に散漫なコレクションを雑多に並べていきながら整理していこうかと思っております。走り出してから考える方なので、整理するのに一苦労です。

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